リー族(読み)りーぞく(英語表記)Li

翻訳|Li

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リー族」の意味・わかりやすい解説

リー族
りーぞく / 黎族
Li

中国の少数民族の一つ。海南省の海南島に住む。人口は146万3064(2010)。言語はシナ・チベット語族トン・タイ語群リー語系に属する。言語的にはタイ語系に近いが、その一方で習俗は、雲南省ワ族や台湾の先住民族などのオーストロアジア語族やオーストロネシア語族に近い特色をもつ。農耕民で、水稲トウモロコシなどの栽培を行う。村はコムとよばれ、複数の血縁集団からなる。水牛芭蕉(ばしょう)といったものを同一血縁集団の称号にしているところもある。コムの境界は明確に定められ、以前はいくつかのコムが連合して世襲首長をいただくこともあった。村の若い男女は若者宿で共同生活をし、除夕(大みそか)、2月2日、3月3日、5月5日には未婚の男女による歌垣(うたがき)が催される。リー族はワ族と同様な牛を殺す祭りを行い、殺した牛の頭蓋骨(とうがいこつ)を門前にかける習慣がある。また、宗教信仰はアニミズムであって、精霊の存在を信じ、あらゆる精霊をドンとよんでいる。ドンを祭る巫師(ふし)は、悪魔払いをする男の道公(タオコン)、病気治療をする女の娘母(ニャンムー)である。女性筒形の膝(ひざ)丈のスカートをはき、頭を細長い布で縛るという服装であるが、これはワ族とよく似ている。リー族は、結婚後も女は実家に住み、妊娠してから夫の家に住む習慣がある。

清水 純]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リー族」の意味・わかりやすい解説

リー(黎)族
リーぞく
Li

中国の海南島に居住する少数民族。南部の山岳地帯に集中し,人口約 108万 (1990) 。黎語はラティ,ラクァ,ケラオの諸語とともにオーストロネシア語族のカダイ諸語に含まれる。生業は農業で,水稲と陸稲を栽培し,焼畑耕作も行う。家畜では水牛や牛が重要。村が政治・社会的単位で,村長と長老会議によって統治され,漢民族による間接支配も行われた。彼らはタウティという土地神を敬い,村の入口にはそれを祀るやしろがある。周囲の漢民族の影響を受けたほか,特にミヤオ (苗) 族の影響が強い。 1952年ハイナンリー (海南黎) 族ミヤオ (苗) 族自治州が設立され,現在は海南省に7つの自治県が設けられている。

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