日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルンゲ」の意味・わかりやすい解説
ルンゲ(Friedlieb Ferdinand Runge)
るんげ
Friedlieb Ferdinand Runge
(1795―1867)
ドイツの有機化学者。ハンブルクの近郊で生まれる。ベルリン大学で医学を学んだのち、ゲッティンゲン大学で化学を学び、1819年イエナ大学で学位を得た。1823年にブレスラウ大学教授になったが、まもなく辞任して1832年からオラニエンブルクの化学工場で研究を続けた。アトロピンの研究、カフェインおよびキニンの発見、コールタールの蒸留によるフェノール、アニリン系染料の発明などがあり、コールタール染料工業の先駆者として知られる。ペーパークロマトグラフィーの発明者の一人でもある。
[廣田 穰 2016年11月18日]
ルンゲ(Georg Lunge)
るんげ
Georg Lunge
(1839―1923)
ドイツの工業化学者。ブレスラウ大学で化学を専攻し、ついでハイデルベルクでブンゼンとキルヒホッフに学ぶ。1860年から工業界に入り、1875年にチューリヒのスイス連邦工業大学の工業化学の教授に迎えられ、ついでスイスの市民権を得た。無機化学工業に科学的な研究と管理を導入し、その成果を技術の経済的な課題へと適用したため、その膨大な著作は工業界からたいへんに歓迎され、彼のハンドブックは何十年にもわたって化学工業の標準的なテキストとなった。
[加藤邦興]
ルンゲ(Philipp Otto Runge)
るんげ
Philipp Otto Runge
(1777―1810)
ドイツの画家。ポンメルンのウォルガストに生まれる。1799~1801年コペンハーゲン、01~03年ドレスデンの各美術学校で学ぶ。ドレスデンで詩人ティークを知りロマン主義に開眼、また哲学者ベーメの著作によって神秘的な自然観を啓発される。02~03年宇宙の生成発展を象徴する『朝、昼、夕、夜』四部作の構想によってアカデミックな古典主義を離れる。03年末以降ハンブルクに定住し、力強い写実と素朴な内面性を結び付けた肖像画の制作を行う。『芸術家の両親』(1806・ハンブルク美術館)はその代表作。08年『朝』(同上)を制作し四部作の完成に着手するが、第二作の制作なかばでハンブルクに夭折(ようせつ)した。彼は色彩論の研究者として独得の色球体を考案し、またロマン主義に基づく二巻の理論書を残している。作品の多くはハンブルク美術館に所蔵されている。
[野村太郎]