レビー小体型認知症(読み)レビーショウタイガタニンチショウ(その他表記)dementia with Lewy bodies

デジタル大辞泉 「レビー小体型認知症」の意味・読み・例文・類語

レビーしょうたいがた‐にんちしょう〔‐セウタイがたニンチシヤウ〕【レビー小体型認知症】

認知症うち大脳皮質神経細胞レビー小体と呼ばれる構造物ができることで起こるもの。物忘れほか幻覚症状がある。また、手足がこわばり、運動障害が生じるパーキンソン病に似た症状を伴う。びまん性レビー小体病DLB(Dementia with Lewy Bodies)。

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共同通信ニュース用語解説 「レビー小体型認知症」の解説

レビー小体型認知症

アルツハイマー型などとともに症例が多い認知症の一つ。認知症全体の約2割を占めるとされる。レビー小体というタンパクの異常物質が脳内にたまることが原因とされ、実際にないものが見える幻視などが特徴。体の震えや歩行障害など、パーキンソン病のような症状が現れやすい。うつ病統合失調症、アルツハイマー型などと誤診されるケースも少なくない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「レビー小体型認知症」の意味・わかりやすい解説

レビー小体型認知症
れびーしょうたいがたにんちしょう
dementia with Lewy bodies

アルツハイマー病に次いで多い変性性認知症。レビー小体とよばれる構造物が脳内に蓄積し、認知機能が障害されて生じる。なお医学的に「変性」とは、細胞や組織などの変質が進行し、それらが最終的に死滅するという意味である。DLBと略称される。

[朝田 隆 2023年5月18日]

症状

レビー小体型認知症の症状を大まかにとらえると、アルツハイマー病を思わせる認知症症状に歩行姿勢の障害を示すパーキンソン病の症状もみられるもの、といえる。また幻視とレム睡眠行動障害とよばれる寝ぼけ・寝言がみられることも特徴である。さらに、頑固な便秘起立性低血圧など自律神経系の障害もみられる。本疾患に気づくポイントとして、認知機能や気分が短時間の間に変動しやすいことが知られている。なお、幻視やこれにかかわる妄想が激しい場合には、介護者にとってその対応が大きな問題になる。

[朝田 隆 2023年5月18日]

疫学

2012年(平成24)10月時点の65歳以上の人口における認知症の有病率調査(厚生労働省)では、全認知症の4.6%がレビー小体型認知症であった。欧米の調査や確定診断された成績をみると、診断基準によっては15~20%に上る可能性も考えられる。なお発症年齢は50~83歳、死亡時の年齢は68~92歳とされる。

[朝田 隆 2023年5月18日]

原因

レビー小体Lewy bodyとよばれる、α(アルファ)シヌクレインを主成分とする脳内にたまる構造物が、レビー小体型認知症の病理学的な特徴である。レビー小体が脳内に蓄積していくことが脳細胞の死滅にかかわると考えられている。

[朝田 隆 2023年5月18日]

診断

臨床では、医師の診察を基本に、世界的に確立した診断基準等にのっとって診断がなされる。基本症状は、認知の変動、幻視、レム睡眠行動障害、パーキンソニズム(パーキンソン病でみられるのと同様の運動障害)である。客観的なデータとして、記憶力など神経・心理学的な検査、またMRIや脳血流などをみるための脳画像検査が求められる。さらに大脳基底核におけるドーパミントランスポーターの取り込み低下、MIBG心筋シンチグラフィでの取り込み低下などが確認されると診断の確度が高まる。なお、確定診断は死後脳の病理学的検査を行う以外には手段がない。

[朝田 隆 2023年5月18日]

経過

レビー小体型認知症は、アルツハイマー病とはかなり異なった臨床症状、経過をたどる。初期・中期・後期と分けて考えると以下のようである。

 最初期症状として、ちょっとしたもの忘れや、意識レベルが短時間低下したり、スイッチが切れたかのように連続性を失ったりする状態がみられることが多い。そして身体異常を過剰に気にする心気傾向ややる気のなさも多くみられる。

 中期に入ると、認知機能障害はだれの目にも明らかになる。しばしば幻覚、とくに幻視や人物誤認を伴う錯乱状態を呈したり、方向感覚の悪さもみられたりする。もっとも目だつのは注意力の低下とやる気のなさであり、日中の眠気とレム睡眠関連行動異常が顕著なこともある。なお短時間の失神(ブラックアウト)と、周りには「心ここにあらず」にみえる、多くはけいれんを伴わないてんかん発作も少なくない。また高齢の患者では、歩行障害と動作緩慢があっても周りに気づかれにくい。

 行動異常の激化で後期が始まることが多い。幻覚や妄想に向精神薬が投与されると、それによる副作用が現れやすいのも特徴である。その後は、さらに月から年の単位で失語や失行症状が加わりながら、頸部(けいぶ)や体幹の屈曲・拘縮が進行して重度化する。

[朝田 隆 2023年5月18日]

治療

薬物療法
レビー小体型認知症では、アルツハイマー病以外の認知症で唯一、認知症治療薬(ドネペジル)の適応が承認されている。幻覚や妄想に対して向精神薬が使われるが、これらでは四肢の硬直、転倒、よだれに加えて錯乱などの副作用が現れやすい。またパーキンソニズムに対する薬剤によって幻覚や妄想が悪化することもある。それだけに、薬剤の服用による症状の変化には、いっそうの注意が求められる。

非薬物療法
レビー小体型認知症では、アルツハイマー病と比べて、錯乱や幻覚に対する大声、寝ぼけ状態での暴力といった行動障害が比較的長期間にわたって現れやすい。それだけに介護者の苦労は増しがちである。とくに幻視に惑わされて転落や衝突などの危険行動に至ることもある。しかも、当人には幻視なのか実物なのか区別できないのが普通である。そこで「おかしな侵入者が現れたら、来ちゃダメだよ、とか言いながら触ってごらん」というような、簡単で具体的な指導は有用である。

[朝田 隆 2023年5月18日]

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知恵蔵mini 「レビー小体型認知症」の解説

レビー小体型認知症

大脳皮質の広い範囲に特殊なたんぱく質「レビー小体」が増加し神経細胞を壊すことにより発症する認知症。三大認知症の一つで、全体の約20%を占める。略称DLB。レビー小体病ともいう。1976年に小阪憲司医学博士らにより報告され、95年に病名が正式に付けられた。75~80歳くらいの年齢に多く見られ、男性の発症率は女性の約2倍とされる。初期の段階で本格的な幻覚(特に幻視)があらわれやすいのが特徴で、うつ症状・誤認妄想・手の震え・運動障害なども引き起こす。2017年時点で完治が可能な治療法はないが、アルツハイマー型認知症治療剤であるドネペジル塩酸塩(商品名アリセプト)が効果があるとされ、14年9月に日本で、16年4月にフィリピンで同病の適応対象薬として承認された。

(2017-2-9)

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