ケンソル(英語表記)censor

翻訳|censor

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケンソル」の意味・わかりやすい解説

ケンソル
censor

古代ローマの官職監察官と訳される。前 443年頃に創始された官職で,本来市民戸口財産の登録を司り,戸口総監と呼ばれたが,のちに権限が拡大され,元老院議員の名簿監査,風紀監察,さらに財産への税の査定,道徳的違反者の公権剥奪,5年毎の人口調査の際の清浄の儀式をも司った。ケンソルは兵員会で選出され,定員は2名,任期は 18ヵ月。本来パトリキ (貴族) が独占した官職であったが,前 351年よりプレプス (平民) も被選挙資格を得た。ケンソルの裁定は2名の合意を要し,その1人の死亡または辞任は他の1人をも退任させた。前 22年アウグスツス元首としてこの職を取得したため,元首の権限のなかに包摂されてしまった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ケンソル」の意味・わかりやすい解説

ケンソル
censor

古代ローマの公職者の一つ。戸口総監,検察官などと訳す。市民および家族,財産の市民原簿登録のため4年(後に5年)ごとに2名が民会で選挙され,1年半の任期中,常に共同で執務した。市民登録のほか,財政的任務も帯びたが,特に市民資格判定権を市民や公職者の非行追及,元老院議員任免へ拡張し,前3,前2世紀に絶大な権威を持った。帝政期には権限の多くが元首に帰して有名無実化し,前84年,元首ドミティアヌスが終身ケンソルを名乗るに至った。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケンソル」の意味・わかりやすい解説

ケンソル
けんそる
censor ラテン語

古代ローマの官職名。5年ごとに選ばれる18か月任期の役人で、全市民の戸口・財産調査(ケンスス)のほか、騎兵査閲を行い、元老院議員の私的道徳まで問題にしてその適・不適審査を行ったので、もっとも権威ある官職と考えられたが、インペリウム(命令権)はもたなかった。共和政中期から末期までの時期にこの官職につく者の政治的発言力はもっとも強大であったが、帝政期に入ると1世紀の間に皇帝がしだいに自らケンソルの仕事を行うに至った。

[弓削 達]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ケンソル」の解説

ケンソル
censor

古代ローマの一官職。戸口総監と訳す。命令権(インペリウム)を持たない高級政務官。定員2名。任期18カ月。人頭・財産額の調査,元老院名簿の作成,風紀取締りの任にあたった。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のケンソルの言及

【コンスル】より

…このような候補者たり得る特定少数の平民はやがて有力貴族と結び,寡頭支配を実現する。他方,前443年からケンソルが市民登録,前367年からプラエトルが裁判を担当し,両権限は事実上コンスルの手を離れた。前2世紀にプロウォカティオ(民会裁判請求)の拡大,公職就任資格の確定等,実質的制約が加わるが,総じてコンスルは優位を保ち,前1世紀の動乱の間,実力者の国制無視のために権威を失墜した。…

【ローマ】より

…前366年にはプラエトル(法務官)という新しい政務官が設置されたが,平民は前337年これへの就任も許された。また前351年にはケンソル(戸口調査官)に就任を許されていた。 このように身分闘争において貴族が譲歩し続けたのは,この時期の近隣諸種族との戦争のゆえであった。…

※「ケンソル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android