レム(読み)れむ(英語表記)Stanisław Lem

デジタル大辞泉 「レム」の意味・読み・例文・類語

レム(rem)

放射線線量当量の単位。現在はシーベルトを標準単位とする。1レムは、1シーベルトの100分の1で、1ラドX線が吸収されたときに生体に及ぼす効果と等しい効果を示す放射線量。記号rem

レム(Stanisław Lem)

[1921~2006]ポーランドのSF作家。科学的な知識と想像力を結び合わせた作風で、世界的な人気作家として活躍した。作「ソラリスの陽のもとで」「虚数」など。

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精選版 日本国語大辞典 「レム」の意味・読み・例文・類語

レム

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] rem [英語] roentgen equivalent in man の略 ) 放射線の被曝線量の単位。放射線人体当量。現在は「シーベルト」を標準単位とする。〔放射能問題(1957)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「レム」の意味・わかりやすい解説

レム(Stanisław Lem)
れむ
Stanisław Lem
(1921―2006)

ポーランドの小説家。世界的なSF作家の一人。ウクライナルブフ(ロシア語名リボフ)生まれ。ルブフ医科大学に学ぶが、第二次世界大戦で中断、戦後クラクフに移ってヤギェウォ大学医学部を卒業した。空想小説『火星からきた男』(戦中に執筆、1946年発表)でデビュー、『宇宙航行者たち』(1951)、『マゼラン星雲』(1955)で一躍人気作家となる。三部作『失われざる時間』(1955)は解放直後に執筆され、占領下の病院でのナチス犯罪を告発したものである。ほかに代表作『航星日記』(1957)、『エデン』(1959)、『ソラリス』(1961。邦訳『ソラリスの陽(ひ)のもとに』。『惑星ソラリス』の題名で、1972年タルコフスキー監督により映画化されている)、『星からの帰還』(1961)、『浴槽で発見された記録』(1961)、『無敵』(1964。邦訳『砂漠の惑星』)など。短編にも優れ、連作短編に『泰平ヨンの航星日記』(1957)や『ツィベリアダ』(1965。邦訳『宇宙創世記ロボットの旅』)、さらに『枯草熱』(1974)、架空の作家の作品に対する書評集『完全な真空』(1971)、実在しない書物の序文集『虚数』(1973)や評論集『空想と未来学』(1970)、自伝小説高い城』(1966)などがある。きわめて科学的な事実と作者自身の豊かな空想を結合させた哲学的作風であった。

[吉上昭三・長谷見一雄]

『深見弾訳『浴槽で発見された日記』(1980・集英社)』『深見弾訳『宇宙飛行士ピルクス物語』(1980・早川書房)』『深見弾訳『泰平ヨンの未来学会議』(1984・集英社)』『深見弾訳『捜査』『泰平ヨンの回想記』『泰平ヨンの航星日記』『ロボット物語』『泰平ヨンの現場検証』(ハヤカワ文庫SF)』『深見弾訳『天の声』(サンリオSF文庫)』『深見弾訳『すばらしきレムの世界』1、2(講談社文庫)』『吉上昭三他訳『レムの宇宙カタログ』(1981・大和書房)』『吉上昭三訳『星からの帰還』(ハヤカワ文庫SF)』『吉上昭三他訳『宇宙創世記ロボットの旅』(ハヤカワ文庫SF)』『吉上昭三他訳『枯草熱』(サンリオSF文庫)』『沼野充義・工藤幸雄・長谷見一雄訳『完全な真空』(1989・国書刊行会)』『長谷見一雄・沼野充義・西成彦訳『虚数』(1998・国書刊行会)』『飯田規和訳『砂漠の惑星』『ソラリスの陽のもとに』(ハヤカワ文庫SF)』『沼野充義訳『金星応答なし』(ハヤカワ文庫SF)』『小原雅俊訳『エデン』(ハヤカワ文庫SF)』『笠井潔著『秘儀としての文学――テクストの現象学へ』(1987・作品社)』『川又千秋著『夢意識(むいしき)の時代――SF論集』(1987・中央公論社)』『沼野充義著『夢に見られて――ロシア・ポーランドの幻想文学』(1990・作品社)』『巽孝之著『現代SFレトリック』(1992・岩波書店)』


レム(線量当量の単位)
れむ
rem

線量当量の単位。放射線の生物学的効果を考慮した単位で、生体に吸収された放射線が、1ラドのX線が生ずる生物学的効果と等しい効果を示すときの線量当量。記号はrem。名称の由来はroentgen equivalent man(mammal)の略称から、1950年ごろに命名された。その後、1979年の国際度量衡総会で、線量当量の単位としてシーベルト(Sv)が採用され、1989年(平成1)からは、日本の法令においてもシーベルトが用いられているようになった。1シーベルトは100レムである。

[小泉袈裟勝・今井秀孝]

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改訂新版 世界大百科事典 「レム」の意味・わかりやすい解説

レム
Stanisław Lem
生没年:1921-2006

ポーランドの小説家。リボフに生まれ,医科大学に進み,第2次大戦後クラクフで学業を終えた。早くからSF小説の分野に才能を示し,《金星応答なしAstronauci》(1951)で本格的に文壇に登場したが,占領下の病院で起きたナチスの犯罪をグロテスクな筆致で描いた《変容の病院》(1955)は彼としては異色の現代小説である。SF小説の代表作には《泰平ヨンの航星日誌Dzienniki gwiazdowe》(1957),《星からの帰還Powrót z gwiazdy》《ソラリスの陽のもとにSolaris》(ともに1961),《宇宙創世記ロボットの旅Cyberiada》(1965)などがあり,いずれも綿密な科学的推理と豊かな想像力とがみごとに結びあった高水準の宇宙物あるいは未来小説として洋の東西を問わず絶大な人気がある。彼は科学と文学が現代文明の中で果たすべき倫理的役割についてきわめて自覚的な作家である。理論的な著作にも《科学技術大全》(1964),《偶然の哲学》(1968),《SFと未来学》(1970)ほか数点がある。
執筆者:


レム
rem

線量当量の単位で,記号rem。remはroentgen equivalent manの略。線量当量は,放射線被ばく量を表す量であるが,一般公衆と放射線取扱作業者の放射線障害防止を目的とするような場合に限って用いられるものである。X線による照射線量が1レントゲンであるとき,この被ばくをこうむった人の線量当量は約1remである。1980年代の後半からは,線量当量の単位として,レムに代り新しい単位シーベルトが用いられることになっている。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レム」の意味・わかりやすい解説

レム
Lem, Stanisław

[生]1921.9.12. ルウフ
[没]2006.3.27. クラクフ
ポーランドの作家。医科大学に学び,第2次世界大戦後の 1946年,ルウフがウクイラナに組み込まれるとクラクフに移り創作活動を始めた。1947~50年の長編3部作『失われざる時』Czas nieutraconyは共産党政権により出版を差し止められた。1951年 SF小説『金星応答なし』(原題『宇宙飛行士たち』Astronauti)で SF作家としてデビュー。人間の能力の可能性と限界,文明の未来といった基本の主題を中心に幅広く書かれた SF小説を次々と発表,SF作家として世界的に知られた。代表作に『エデン』Eden(1959),『ソラリス』Solaris(1961),『砂漠の惑星』(原題『無敵』Neizwycięzony,1964)などの長編,『宇宙飛行士ピルクス物語』Opowieściopilocie Pirxie(1968)などの短編,メタフィクション『完全な真空』Doskonala próżnia(1971)などがある。『偶然性の哲学』Filozofia przypadku(1968)など文学論も有名。『ソラリス』はアンドレイ・タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』(1972),スティーブン・ソダーバーグ監督の『ソラリス』(2002)と 2度映画化された。(→SF

レム
rem

線量当量の単位。記号は rem。主として放射線防護関係に用いられる。1remは,どんな種類の放射線に対しても 1rad(ラド)の X線γ線と同じ生物学的効果を生じる量に相当する。一般に線量当量(レム)=線量(ラド)×線質係数で示される。現在,線量当量の公式の単位はレムではなく,国際単位系 SIシーベルト(Sv)を用いる。1Sv=100remである。

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化学辞典 第2版 「レム」の解説

レム
レム
rem, roentgen-equivalent-man

種類やエネルギーの異なった放射線の生体に及ぼす効果に着目して定義された,いわば実効的線量の単位.これには放射線生物学の場合に用いられるRBE線量と,放射線防護の立場から1962年にICRU(国際放射線単位測定委員会)によって定義された線量当量の二つがあり,いずれもレムを単位としている.これらの量はそれぞれ吸収線量と次のように関係づけられる.

  RBE線量 = RBE × 吸収線量

  線量当量 = 線質係数 × 吸収線量 × 補正因子

線質係数は,以前はRBE(生物学的効果比)とよばれたが,1962年にICRUによって線量当量とともに定義されてからは,生物学的効果比と区別して,放射線防護の場合にだけ用いられるようになった.レムによる表示の実際例として,たとえば生体がX線と10 MeV の中性子から,いずれも1 rad の線量を受けた場合を考えると,RBE線量はそれぞれ1 rem,6.5 rem となる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「レム」の意味・わかりやすい解説

レム

ポーランドの作家。医科大学卒業ののち作家の道を歩み,《星からの帰還》《ソラリスの陽のもとに》(ともに1961年)などでSF作家としての地位を確立。SF以外にも多彩な著作活動で知られ,架空の本の書評集《完全な真空》(1970年)などでポストモダンの新しい小説の可能性を追求。《SFと未来学》(1970年)など,理論的な著作も多い。
→関連項目SFタルコフスキー

レム

放射線による被曝量(線量当量)を表す単位。Roentgen equivalent manの略称。1980年後半からは国際単位系のシーベルト(Sv)が用いられレムは特殊な場合にしか用いられない。1シーベルト=100レム。
→関連項目放射線

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単位名がわかる辞典 「レム」の解説

レム【rem】

放射線の人体への影響の度合いを示す線量当量の単位。記号は「rem」。放射線の種類による相対的な生物への影響度と吸収線量の単位ラドの積に相当する。1989年にレムの代わりにSI単位系(国際単位系)でシーベルト(Sv)が採用された。

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世界大百科事典(旧版)内のレムの言及

【シーベルト】より

…名はスウェーデンの物理学者シーバートRolf Maximillian Sievert(1896‐1966)にちなんでつけられた。以前は,レム(rem)が線量当量の単位として用いられた。1Sv=100remである。…

【放射線量】より

… HDQNここで,Nは線量率(単位時間当りの吸収線量)などに関係した修正係数であるが,現在は1としている。線量当量の単位は,吸収線量と区別するためrem(レム)が用いられてきた。新しいSI単位ではSv(シーベルトSievert)が用いられる。…

【シーベルト】より

…名はスウェーデンの物理学者シーバートRolf Maximillian Sievert(1896‐1966)にちなんでつけられた。以前は,レム(rem)が線量当量の単位として用いられた。1Sv=100remである。…

【放射線量】より

… HDQNここで,Nは線量率(単位時間当りの吸収線量)などに関係した修正係数であるが,現在は1としている。線量当量の単位は,吸収線量と区別するためrem(レム)が用いられてきた。新しいSI単位ではSv(シーベルトSievert)が用いられる。…

※「レム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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