イタリアの彫刻家。フィレンツェに生まれ,おそらくギベルティの工房で金銀細工の修業をしたと思われる。最初の著名な作品はフィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の大理石〈カントリア(聖歌隊席)〉(1431-38)で,ここで彼は古代彫刻をモデルに,古代風の衣装をまとい,均衡のとれたプロポーションをもった完璧にルネサンス的な人間像を完成した。これはドナテロの〈カントリア〉と対作品である。後者の主要モティーフである踊る童子たちが身体の部分においては古代的形態をもちながら,顔面には測り知れぬ魔的な表情を浮かべ,全体の構成もきわめてダイナミックなものであるのに対し,ロッビアの作品では清朗な表情の人物たちが静的な動作で立ち並ぶ様が浮彫されている。このような特質が最大限に発揮されたのは,彼が青年時代に開発した,テラコッタの浮彫に釉薬を施し美しい色彩に仕上げる技法による作品においてである。彼はこの技法を用いて青地に白の〈聖母像〉浮彫を数多く制作し,それらはその視覚的美しさと聖母子の親しみやすい人間的な表情のゆえに人気を博した。さらに,この技法を建物の装飾やさまざまな室内用装飾品に用い,甥アンドレアAndrea della R.(1435-1525)にそれを伝授した。アンドレアはブルネレスキ設計のフィレンツェのオスペダーレ・デリ・インノチェンティ(捨子保育院)の正面部に,産着にくるまれた幼児の像を浮彫したメダイヨンの装飾をこの技法によって行い,フィレンツェ初期ルネサンス芸術の人間性肯定の側面を代表する作品をつくり上げた。アンドレアの5人の子どもたち(その中ではジョバンニGiovanni della R.(1469-1529)が重要である)もこの彩色彫刻の技法を継承し,16世紀に至るまでロッビア家は装飾芸術の分野に大きな役割を果たした。
執筆者:鈴木 杜幾子
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イタリアの彫刻家、陶芸家。フィレンツェの人。1432年同地の彫刻家組合に加盟。彼は釉薬(ゆうやく)を施したテラコッタの創案者としてあまりにも有名で、紺地に白を主調とした人物像を配する独特の構図法で人々を魅了する。そのため、彼が若くして初期ルネサンスのフィレンツェにおける大理石彫刻の主導者の一人であったことが、ややもすれば等閑視されがちである。大理石彫刻でもっとも重要な作品はフィレンツェ大聖堂に設置すべく制作されたカントリア(聖歌壇、1431~38。現同聖堂付属美術館蔵)である。これは、ドナテッロがやはり同聖堂のために制作したカントリア(1433~39)よりも前に完成されたが、両者にみられる障壁に浮彫りで表現したプットー(幼児)のモチーフは、古代ローマの石棺から着想されたとみなされている。
陶芸家としてのロッビアの代表作は、フィレンツェ大聖堂の新旧両聖器室の入口上部に取り付けられているキリストの「復活」「昇天」を主題とした半円形浮彫り、およびパッツィ家礼拝堂の内部を装う聖者や福音(ふくいん)書記者たちを表す円形浮彫りである(近年、礼拝堂の浮彫りを設計担当者ブルネレスキに帰する主張も現れている)。またフィレンツェのサンタ・トリニタ聖堂にある司教ベノッツォ・フェデリギの墓碑彫刻は大理石の横臥(おうが)像で、カントリアの浮彫りと並ぶ彼の傑作である。
なお、彼の甥(おい)アンドレア(1435―1525)、アンドレアの2人の子ジョバンニ(1469―1529)、ジローラモ(1488―1566)らのロッビア一族も、ルカの創案になる施釉テラコッタで多くの装飾浮彫りを手がけている。
[濱谷勝也]
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…これらの多くはメキシコ市周辺の往時の村落の遺跡から出土したもので,極端にデフォルメされた像や比較的写実的な像などさまざまであるが,臀部が誇張されているところからおそらく豊穣や安産を祈願した地母神像と考えられる。 中世以降テラコッタはほとんど見るべきものもなかったが,ルネサンス期に再び浮彫や胸像の制作に用いられ,フィレンツェのルカ・デラ・ロッビアが釉薬で彩色したテラコッタのレリーフを制作するに及んで,以後テラコッタは建築装飾に新たな方向性を見いだした。また近代彫刻においてもマイヨールやJ.エプスタインをはじめ多くの彫刻家が大小のテラコッタの作品を手がけている。…
※「ロッビア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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