ローゼボーム(英語表記)Hendrik Willem Bakhius Roozeboom

改訂新版 世界大百科事典 「ローゼボーム」の意味・わかりやすい解説

ローゼボーム
Hendrik Willem Bakhius Roozeboom
生没年:1854-1907

オランダの物理化学者。1872年,地元の高等学校を卒業し,食品関係の研究所に勤めた。78年,ライデン大学の化学教授であったベメレンJ.M.van Bemmelenの下で助手となり,84年,亜硫酸ガスなどの水和物の研究で学位を取得。96年からアムステルダム大学一般化学の教授を務めた。1882年から,不均一平衡に関する研究に着手した。86年,J.D.ファン・デル・ワールスから,10年前にJ.W.ギブズによって発表された相律の重要性を指摘され,相律を理論的指針として,多くの不均一平衡に関する研究を行った。とくに不均一平衡を記述するために,相図状態図)を用いる方法を発展させた業績は高く評価されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ローゼボーム」の意味・わかりやすい解説

ローゼボーム
ろーぜぼーむ
Hendrik Willem Bakhuis Roozeboom
(1854―1907)

オランダの物理化学者。ライデン大学の化学の助手から講師になり、ついでアムステルダム大学の化学教授になった(1896)。彼は、1876年にギブスが発表した相律を、初めて実際に不均一系の平衡の研究に応用した化学者の一人であり、この平衡を二次元や三次元のグラフを使って表した。均一系の平衡の概念はとくに合金の研究に応用され、成果をもたらした。まだあまり知られていなかった相律を化学者の間に広めるのに貢献した。

吉田 晃]

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百科事典マイペディア 「ローゼボーム」の意味・わかりやすい解説

ローゼボーム

オランダの物理化学者。1878年ライデン大学助手,1896年からファント・ホフ後継者としてアムステルダム大学教授。ギブズの相律を一般化,特にこれを合金に応用,合金学の研究に一時期を画した。

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世界大百科事典(旧版)内のローゼボームの言及

【鋼】より

…19世紀に入るとベリマンの成果はドイツのカルステンKarl Johann Bernhard Karsten(1782‐1853),ランパディウスWilhelm August Lampadius(1772‐1842)らによって引き継がれ,高炉では吸炭が,精錬炉では脱炭が,浸炭法では吸炭が生じることなどが明らかにされた。また合金鋼に関するM.ファラデーの研究,鉄鋼の変態点に関するロシアのチェルノフDmitrii K.Chernov(1839‐1921)の研究,鉄鋼の顕微鏡組織に関するイギリスのソルビーHenry Clifton Sorby(1826‐1908)やドイツのマルテンスAdolf Martens(1850‐1914)の研究,鉄鋼の変態に関するフランスのF.オスモンの研究,鋼中の炭素の役割に関するイギリスのJ.O.アーノルドの研究,鉄鋼の状態図に関するイギリスのオーステンWilliam Roberts Austen(1843‐1902)やオランダのローゼボームHendrik Willem Bakhuis Roozeboom(1854‐1907)らの研究が相次ぎ,鋼の硬化と熱処理,組織,状態図との関係など,今日の鋼の物理冶金学の基礎が築かれた。鋼の組織の名前であるソルバイト,マルテンサイト,オーステナイト,トルースタイト,レーデブライトなどは,それらの先人の業績にちなんで命名された。…

【鉄】より

…18世紀から19世紀にかけて鉄鋼の化学が技術に衝撃を与えたとすれば,19世紀から20世紀にかけては鉄鋼の物理化学と結晶構造学が技術に衝撃を与えた。1863年のH.C.ソルビーの炭素鋼から晶出および析出する結晶(フェライト,セメンタイト,パーライト,グラファイトなど)の顕微鏡による発見,マルテンスA.Martens(1850‐1914)の1878年論文の同じ発見,ロシアのD.K.チェルノフの1868年論文の樹枝状晶および結晶粒の成長に関する理論および焼入れ焼戻しの理論,F.オスモン(1849‐1912)の80年代の鉄の変態(α鉄,β鉄,γ鉄)の発見,オーステンW.Roberts‐Austen(1843‐1902)の97年論文の,そしてH.W.B.ローゼボームの1900年論文の鉄と炭素の状態図は,炭素鋼の凝固過程の晶出析出の全貌を明らかにした。その後はあらゆる合金鋼の状態図が調べられていくのである。…

【鋼】より

…19世紀に入るとベリマンの成果はドイツのカルステンKarl Johann Bernhard Karsten(1782‐1853),ランパディウスWilhelm August Lampadius(1772‐1842)らによって引き継がれ,高炉では吸炭が,精錬炉では脱炭が,浸炭法では吸炭が生じることなどが明らかにされた。また合金鋼に関するM.ファラデーの研究,鉄鋼の変態点に関するロシアのチェルノフDmitrii K.Chernov(1839‐1921)の研究,鉄鋼の顕微鏡組織に関するイギリスのソルビーHenry Clifton Sorby(1826‐1908)やドイツのマルテンスAdolf Martens(1850‐1914)の研究,鉄鋼の変態に関するフランスのF.オスモンの研究,鋼中の炭素の役割に関するイギリスのJ.O.アーノルドの研究,鉄鋼の状態図に関するイギリスのオーステンWilliam Roberts Austen(1843‐1902)やオランダのローゼボームHendrik Willem Bakhuis Roozeboom(1854‐1907)らの研究が相次ぎ,鋼の硬化と熱処理,組織,状態図との関係など,今日の鋼の物理冶金学の基礎が築かれた。鋼の組織の名前であるソルバイト,マルテンサイト,オーステナイト,トルースタイト,レーデブライトなどは,それらの先人の業績にちなんで命名された。…

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