森林破壊(読み)しんりんはかい(その他表記)deforestation

翻訳|deforestation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「森林破壊」の意味・わかりやすい解説

森林破壊
しんりんはかい
deforestation

人間の手によって森林皆伐または間伐が行なわれた結果,森林が減少・劣化すること。乾燥地域では水不足と林地の砂漠化を引き起こし,降水量の多い地域では山崩れ洪水を頻発させる。森林破壊は地球の土地利用における最大の問題の一つである。森林破壊の規模は従来,木材用の伐採や,耕作地や放牧地として人間が利用するために森林を伐採した面積などをもとに推計されてきた。だがそれ以外にも,部分的な木材の切り出しや山火事によって,森林構造を大幅に変えてしまうほど木の数が減少することがある。また工業活動による酸性雨も森林破壊の原因の一部とされる。国連食糧農業機関 FAOの推計によると,世界の森林面積は年間約 130万km2の割合で減少している。地域によっては,森林管理を強化したり,自然保護区を創設したりした結果,21世紀初頭には減少速度がゆるやかになったところもある。最も破壊が進行しているのは,多様な森林が存在する熱帯地方である。熱帯林減少のおもな原因は焼畑農耕である。小規模農家は森林の一部を焼き払って開拓し,灰を肥料として作物を育てる。通常,その土地で耕作できるのは 2,3年にすぎず,その後はその土地を放棄してまた新たな森林の一部を焼き払う。また東南アジアや熱帯アフリカ,南北アメリカの森林では,アブラヤシ・プランテーション開発(→プランテーション農業)を目的とした焼畑も広く行なわれている。そのほかの森林破壊の要因としては商業的伐採や,牧畜場やゴム(→パラゴムノキ)など経済価値の高い樹木のプランテーションの開発などがある。
一部の地域では森林を伐採したあとに再植林が行なわれている。将来利用するために伐採地を補充する目的で行なわれることもあれば,生態系回復の手段として行なわれることもあり,後者の場合には再生地域は保護林となる。また,材木や紙の生産のために単一樹種のみを植林するプランテーションも多い。その多くはユーカリや成長の早いマツで,その土地原産ではない場合がほとんどである。FAOの推計によれば,そうした人工林の面積は地球全体で約 130万km2に上る。再植林の取り組みの多くは,国際連合非政府組織 NGOの指導や資金援助を受けて行なわれている。たとえば,ニュージーランド政府は 2017年,国内に年間 1億本以上の木を植えるプロジェクトをスタートさせた。ほかにも,インドでは同年,市民がわずか 1日で 6600万本の木を植えるという植林プロジェクトが実施された。
木は成長するときに大気中の二酸化炭素 CO2を吸収する。つまり森林は,樹木やその他のバイオマスのなかに炭素を隔離するが,森林が燃やされると,炭素は地球の気候を変動させる可能性をもつ温室効果ガスとなって大気中に放出される。加えて,地球上の貴重な生物多様性のほとんどは森林,特に熱帯林に存在する。アマゾン川流域のような湿性熱帯林には,陸上生態系動植物の種が最も集中しており,おそらく地球上の全生物種の 3分の2はこれらの熱帯林にだけ生息すると考えられる。森林が減少するにしたがい,ますます多くの種が絶滅に追い込まれるおそれがある。もっと狭い地域的なレベルでも,森林の皆伐や選択的伐採,森林火災は相互に影響しあう。選択的伐採によって,密集した多湿の森林はまばらで乾燥したものとなり,火がつきやすくなる。結果としてその森林は,開拓された隣接農地で行なわれる焼畑からの類焼や,干魃による致命的な影響を受けやすくなる。さらに,森林伐採後に商業的価値の高い樹木を植林した森は生物多様性に乏しく,その土地固有の絶滅危惧種を含む動植物の生息地としての役割を果たすことができない。(→環境破壊

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知恵蔵 「森林破壊」の解説

森林破壊

FAOによると、世界の森林面積は約39億haで、陸地の3割を占める。1990年から2000年までに、約9400万haの森林が消失した。地球上の生物の半分が生息し、生物種の宝庫といわれる熱帯林はその10年間に年平均1420万ha失われた。熱帯林減少の原因は、焼き畑農業による開墾や薪炭材としての伐採、輸出向けの伐採、プランテーションの造成など。地球サミットで森林原則声明が採択。97年には国連持続可能な開発委員会(CSD)の下に森林に関する政府間フォーラム(IFF:Intergovernmental Forum on Forests)が設置されて森林保護の行動提案がまとまったが、規制策で合意できなかった。IFFの提案で00年10月、森林の持続可能な経営を進めるため国連に国連森林フォーラム(UNFF:United Nations Forum on Forests)が設置、法的枠組みの検討が進められている。

(杉本裕明 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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