ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「森林破壊」の意味・わかりやすい解説
森林破壊
しんりんはかい
deforestation
一部の地域では森林を伐採したあとに再植林が行なわれている。将来利用するために伐採地を補充する目的で行なわれることもあれば,生態系回復の手段として行なわれることもあり,後者の場合には再生地域は保護林となる。また,材木や紙の生産のために単一樹種のみを植林するプランテーションも多い。その多くはユーカリや成長の早いマツで,その土地原産ではない場合がほとんどである。FAOの推計によれば,そうした人工林の面積は地球全体で約 130万km2に上る。再植林の取り組みの多くは,国際連合や非政府組織 NGOの指導や資金援助を受けて行なわれている。たとえば,ニュージーランド政府は 2017年,国内に年間 1億本以上の木を植えるプロジェクトをスタートさせた。ほかにも,インドでは同年,市民がわずか 1日で 6600万本の木を植えるという植林プロジェクトが実施された。
木は成長するときに大気中の二酸化炭素 CO2を吸収する。つまり森林は,樹木やその他のバイオマスのなかに炭素を隔離するが,森林が燃やされると,炭素は地球の気候を変動させる可能性をもつ温室効果ガスとなって大気中に放出される。加えて,地球上の貴重な生物多様性のほとんどは森林,特に熱帯林に存在する。アマゾン川流域のような湿性熱帯林には,陸上生態系の動植物の種が最も集中しており,おそらく地球上の全生物種の 3分の2はこれらの熱帯林にだけ生息すると考えられる。森林が減少するにしたがい,ますます多くの種が絶滅に追い込まれるおそれがある。もっと狭い地域的なレベルでも,森林の皆伐や選択的伐採,森林火災は相互に影響しあう。選択的伐採によって,密集した多湿の森林はまばらで乾燥したものとなり,火がつきやすくなる。結果としてその森林は,開拓された隣接の農地で行なわれる焼畑からの類焼や,干魃による致命的な影響を受けやすくなる。さらに,森林伐採後に商業的価値の高い樹木を植林した森は生物多様性に乏しく,その土地固有の絶滅危惧種を含む動植物の生息地としての役割を果たすことができない。(→環境破壊)
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