(読み)ロ

デジタル大辞泉 「ろ」の意味・読み・例文・類語

ろ[間助]

[間助]上接の語句を強調し、感動の意を添える。
文中用法連用修飾語に付く。
「児ろが上にことを―延へていまだ寝なふも」〈・三五二五〉
(文末用法)活用語の終止形命令形に付く。
「白雲の絶えにしいもをあぜせ―と心に乗りてここばかなしけ」〈・三五一七〉
[補説]12とも上代東国方言。2現代語の「見ろ」「受けろ」「しろ」などの命令形語尾「ろ」となるものといわれる。

ろ[接尾]

[接尾]上代東国方言。名詞、または形容詞連体形に付いて、親愛の意を表し、また、語調をととのえるのに用いる。
「我がいは―に行かも人もが草枕旅は苦しと告げやらまくも」〈・四四〇六〉
「常なりし笑まひ振舞ふるまひいや日異に変はらふ見れば悲しき―かも」〈・四七八〉

ろ[助動]

[助動]ろう[助動]

ろ[五十音]

五十音図ラ行の第5音。歯茎弾き音の有声子音[r]と母音[o]とから成る音節。[ro]
平仮名「ろ」は「呂」の草体から。片仮名「ロ」は「呂」の初3画から。

ろ【ロ】

洋楽の音名の一で、日本音名の第7音。

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精選版 日本国語大辞典 「ろ」の意味・読み・例文・類語

  1. 〘 間投助詞 〙 感動をもって聞き手に働きかける。上代では大半が東歌・防人歌に用いられる。
  2. (イ) 終止した文に付く。中央語の「よ」「や」にあたる。→補注
    1. [初出の実例]「あひ見ては月も経なくに恋ふといはばをそ(ロ)と吾れを思ほさむかも」(出典:万葉集(8C後)四・六五四)
    2. 「あきらめてくれ」(出典:洒落本・妓情返夢解(1802)一)
  3. (ロ) 文中の連用文節に付く。
    1. [初出の実例]「夕占(ゆふけ)にも今宵と告(の)らろ我が夫(せ)なはあぜそも今宵よし(ロ)来まさぬ」(出典:万葉集(8C後)一四・三四六九)

ろの補助注記

(イ)の用法のうち命令形に付くものは、上代において東歌および九州の志賀海人妻子の歌(山上憶良作の説が有力)だけに現われるが、「塵袋」「ロドリゲス日本大文典」の記載もこれと矛盾せず、現代語でも関東方言のほか九州に見られる。したがって、中古の例には欠けるが、地方語として使われ続けていたと考えられる。「ろ」を含めて動詞の命令形とすることが多いが、「よ」と同様、元来は助詞である。→接尾語「ろ」・「ろ」の補注


  1. 〘 接尾語 〙 名詞または形容詞の連体形に付いて親愛の情を表わし、また、語調を整えるのに用いる。
  2. (イ) 名詞に付く場合。
    1. [初出の実例]「広り坐すは 大君呂(ロ)かも」(出典:古事記(712)下・歌謡)
  3. (ロ) 形容詞の連体形に付く場合。
    1. [初出の実例]「身の盛り人 羨(とも)しき呂(ロ)かも」(出典:古事記(712)下・歌謡)

ろの補助注記

( 1 )用例は、記紀歌謡と、「万葉集」の東歌・防人歌や「常陸風土記」のような上代東国の歌にほとんど集中している。
( 2 )名詞に付くことが主であるところから、この「ろ」を形式名詞として、上接の語を含めた全体を体言相当語とする説もある。
( 3 )係助詞の終助詞的用法である「か」「も」を下に伴って「ろかも」の形をとる例には、間投助詞とする説や「ろかも」で終助詞とする説もあるが、間投助詞は係助詞・終助詞のすぐ下には付いても上には付かないところから考えると無理である。


ろ【ろ・ロ】

  1. 〘 名詞 〙 五十音図の第九行第五段(ラ行オ段)に置かれ、五十音順で第四十三位(同音のかなの重複を含めるとき、第四十五位)のかな。いろは順では第二位で、「い」のあと、「は」の前に位置する。現代標準語の発音では、上歯茎と舌先との間で調音される有声子音 r と母音 o との結合した音節 ro にあたる。「ろ」の字形は、「呂」の草体から出たもの、「ロ」の字形も、同じく「呂」から出たものである。ローマ字では、ro と書く。

  1. ( 推量の助動詞「らむ」が「らう・ろう」を経て変化したもの ) …だろう。
    1. [初出の実例]「これにつけてもいしどうが、こころのうちのさぞあるろ」(出典:説経節・説経苅萱(1631)下)

ろの補助注記

ラ行四段・ラ行変格活用の語が助動詞「う」を伴うときの語尾も「ろ」になることがある。「取ろ」「有ろ」「よかろ」「じゃろ」など。


ろ【ロ】

  1. 〘 名詞 〙 西洋音階で日本音名の第七音。ロ調の主音でドイツ音名のHに当たる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ろ」の意味・わかりやすい解説

五十音図第9行第5段の仮名で、平仮名の「ろ」は「呂」の草体からでき、片仮名の「ロ」は「呂」の初画からできたものかと考えられている。万葉仮名には甲乙2類あって、甲類に「路、漏、盧、樓、露、魯(以上音仮名のみ)」、乙類に「里、呂、侶、慮、廬、稜(以上音仮名のみ)」などが使われた。ほかに草仮名としては、「(呂)」「(路)」「(露)」「(婁)」などがある。

 音韻的には/ro/で、舌先が歯茎あるいはその付近に対して1回だけはじく有声音[r]を子音にもつが、場合によって[l]が用いられることもある。和語に関する限り、擬声・擬態語を除いて「ろ」が語頭にたつことはない。上代では甲乙2類に仮名を書き分けるが、これは当時の音韻を反映したものと考えられる。

[上野和昭]

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