外界の音響を言語音で模写する擬声語に対して,客観的には必ずしも音響のない事象の状態を,擬声語の場合と同様の形式で象徴的に描写する語形を,擬態語または擬容語という。日本語の特色として,擬態起源の動詞・形容詞(〈ねばる〉〈ねばい〉等)のほかに,擬態語形がいろいろの形式また文法機能をもち,会話にも文章にもしきりに用いられる。形式については,用いられる音素の性質に傾向が認められ,その組合せの変化に応じてニュアンスが並行的に変わる。たとえば,〈ポッと〉(突然の出現),〈ポンと〉(同,はずみのある),〈ポッポッと〉(同,繰返し),〈ポンポン(と)〉(同,勢いのよい繰返し),〈ポロッと〉(突然の脱落),〈ポロリと〉(同,始終のある),〈ポロンと〉(同,はずみのある),〈ポロポロ(と)〉(同,連続繰返し)等である(〈パ〉〈パラ〉〈バ〉〈バラ〉等,また〈ポコ〉〈ボコ〉の場合と比較せよ。子音では清・濁および有声・無声,母音ではa:o,i:u:oがそれぞれ意味上の系列をなすらしい。eはまれに現れる。なお以上のような交替をもたないものもある)。〈ポン〉〈ピョコリ〉のような単式に対して,複式として,〈ドンドン〉〈フワリフワリ〉等の単純繰返し,〈ビラシャラ〉〈チラリホラリ〉〈エッチラオッチラ〉等の変形繰返しがある。また,文法上では,次の四つに分類される。(1)単独に,また〈と〉を伴って連用修飾格に立つ。〈サッと〉〈カッと〉〈ドキンと〉〈ギクリと〉〈ウンザリ(と)〉〈モヤモヤ〉〈ガラガラ〉。(2)動詞〈する〉(ときに〈なる〉も)に結合して,非継続的作用についての各種叙述の地位に立つ。〈カッとする〉〈ドキンとする〉〈ギクリとする〉〈ウンザリする〉〈モヤモヤする〉。(3)〈だ〉〈で〉〈な〉〈の〉〈に〉等を伴って,状態についての各種叙述の地位に立つ。〈ウンザリだ〉〈モヤモヤだ〉。(4)名詞となる。〈モヤモヤ〉〈ガラガラ〉(おもちゃ)。すべての擬態語がこれらの用法を具備するわけではない。擬声語には(3)は現れないが,普通には擬声・擬態の区別ははっきり意識されていないことが多い。擬声語と同様,表現内容は,他の概念語にくらべて直接的・具体的であるが,一方,〈ちょっと〉〈もっと〉等のように,擬態語の形式をもちながら,意味内容が最も抽象的なものもある。
→擬声語
執筆者:林 大
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…その語形は,ほぼ一定の型があり,型の交替によってニュアンスが変わる。これは擬態語と同様で,文法上には多少の差が見られるが,普通は擬態語との区別が意識されない(両者をあわせて〈写生詞〉とよぶ人もある)。なお,鳴声の描写として,形式化した〈コケコッコー〉の類は,構文上では引用されるにとどまり,文法的諸機能をもたない。…
※「擬態語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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