アオバト(読み)あおばと(その他表記)green pigeon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アオバト」の意味・わかりやすい解説

アオバト
あおばと / 緑鳩
green pigeon

広義には鳥綱ハトハト科に属する鳥のうち約120種いる果実食のハトの総称で、狭義にはそのうちの23種のアオバト属をさし、さらに狭義にはそのうちの1種をさす。アオバト属(SphenurusまたはTreron)は、体の上部が黄色みを帯びた緑色で、黄色、オレンジ色、黒などの鮮やかな斑紋(はんもん)があり、東南アジアを中心に、少数がアフリカとインドに分布する。同じ果実食のヒメアオバト属Ptilinopus約50種はオウム類に匹敵する多彩な色に富み、東南アジアから南太平洋に広く分布している。

 種としてのアオバトSphenurus sieboldiiは、日本および、台湾、海南島を含む中国南部の山地の森林にすみカシやブナなどの堅果やイイギリヤマザクラの実などを食べる。湖や海岸へ水を飲むために規則的に往復する。北方のものは冬、暖地へ移り、大きな群れをつくることがある。全長35センチメートル、体の上面は緑色、胸は黄緑色、尾の先端にまで達する下尾筒は、白と黒のはっきりとした縦斑がある。雄の雨覆(あまおおい)は褐色。樹上に巣をかけ、2卵を産む。アーアオーとよく響く声で鳴く。和名の「アオ」は、青色ではなく緑色をさす。同属のズアカアオバトS.またはT. formosaeは、屋久島(やくしま)以南の南西諸島、台湾、フィリピンに分布、アオバトよりやや大きく緑色はより濃い。日本に分布する亜種は、頭部も黄緑色で、赤くない。

[竹下信雄]


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改訂新版 世界大百科事典 「アオバト」の意味・わかりやすい解説

アオバト (緑鳩)
Japanese green pigeon
Sphenurus sieboldii

ハト目ハト科の鳥。全長約33cm。羽色は上面はやや暗い緑色で,顔から胸は明るい緑黄色,腹は白っぽい。雄は翼の雨覆羽が赤褐色をしている。くちばしは青色で,脚は暗赤色。日本,中国南部,台湾,ベトナム北部に分布し,山地の広葉樹のよく茂った林にすむ。日本では北海道から九州までで繁殖し,北方のものは冬季には南へ渡る。四国,九州などでは冬に多く見られる。餌はほとんど植物質で,木の実,草の種子などである。塩分の補給のために,海岸に出て磯で塩水を飲む習性がある。近縁種のズアカアオバトS.formosae(英名red-capped green pigeon)は,屋久島,種子島以南の南西諸島の森林に生息し,個体数は多い。この鳥はポー,ポー,ペポーと尺八の音によく似た声を出すので,シャクハチバトという別名がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アオバト」の意味・わかりやすい解説

アオバト
Treron sieboldii; white-bellied green pigeon

ハト目ハト科。全長約 33cm。頭上から背,尾,上面は暗緑色で,額,耳羽から胸,腹前部は黄緑色。腹後部は白く,脇,下尾筒に黒斑がある。肩は雄が紫褐色,雌が緑色。日本と中国東南部,タイワン(台湾)に分布する。日本では北海道本州四国地方九州地方で繁殖する。本州中部以北では夏鳥(→渡り鳥)で,繁殖後は南部の繁殖地へ渡る。そのほかの地域では一年中生息する留鳥である。巣は本州以南では山地のよく茂る広葉樹林につくり,冬季には平地におりてくることもある。北海道では平地に生息して繁殖する。岩礁海岸に海水を飲みにくるという習性をもつ。

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百科事典マイペディア 「アオバト」の意味・わかりやすい解説

アオバト

ハト科の鳥。翼長18.5cm。全身緑色の大型のハトで,日本,台湾,中国南部,東南アジアの一部に分布する。日本では全国の低山の林にすみ,特に広葉常緑樹林を好む。冬は温暖な地方に移動。おもに植物質を食べ,巣は高い樹枝上に作られる。海岸へ海水を飲みにくる習性がある。アオーオアオーと奇妙な声で鳴く。
→関連項目ハト(鳩)

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世界大百科事典(旧版)内のアオバトの言及

【ハト(鳩)】より

…羽毛が密で抜けやすいのは,猛禽(もうきん)類に襲われたときに,羽毛だけ残して,体はつかまらずに逃れるためだといわれている。羽色はさまざまで,熱帯地方のアオバト(イラスト)やキンバトのように色鮮やかなものから,カワラバトのように灰色のくすんだものまである。雄はふつう雌よりやや色がはでだが,北半球では雌雄同色のものも少なくない。…

※「アオバト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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