翻訳|actuary
保険数理の専門家のことをいい,数理統計学を基礎に死亡率,事故発生率等の計算,保険料の算出,積立金の評価,契約者配当金の計算等を担当する。その職務は保険数理の分野にとどまらず,近時長期経営計画の立案,営業活動の調査分析等経営全般にかかわる諸問題と密接な関係をもつようになってきている。
保険数理の専門家としてアクチュアリー(元来の意味は(法廷の)記録係,書記)の地位が築かれたのは19世紀に入ってからである。1824年イギリスでロスチャイルドがロイズに対抗して保険会社を創設したのは,彼の従兄弟がアクチュアリー試験に人種差別により不採用になったことに憤慨したためだという逸話が残っているほどで,当時すでに保険会社でアクチュアリーが重要な地位を占めていたことをうかがい知ることができる。また,49年にはロンドンにアクチュアリー会Institute of Actuariesも設立されている。当時のアクチュアリーの活動範囲は,生命保険事業分野が中心であったが,その後,損害保険,信託銀行業界等にも拡大してきている。なお,19世紀末から20世紀初めにかけて,世界各国でアクチュアリー会ができ,さらには国際アクチュアリー会が定期的に開かれるようになっている。多くの国の保険監督法規においては,通常生命保険会社に対しアクチュアリーを配置し保険数理に関する事項を担当することを命じている。日本の場合も,保険業法89条および90条により生命保険会社は,〈保険計理人〉と称する一定の学識と生命保険数理に関する実務の経験を有するアクチュアリーを選任しなければならない。保険計理人は保険数理に関する事項等を担当するばかりでなく,会社の経営全般に関与するとともに,一定の事項について大蔵大臣の諮問に答申することを義務づけられている。日本のアクチュアリーは,大半が1899年に設立された社団法人日本アクチュアリー会に所属している。
執筆者:朝原 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
確率論や統計論などの数理的手法により、将来のリスクや不確実性の分析を行う保険数理業務の専門職。保険数理人と訳されるが、日本でもアクチュアリーとよばれている。日本では一般的に社団法人日本アクチュアリー会の正会員の資格をもつ者をさす。資格取得には、日本アクチュアリー会が毎年実施する資格試験(基本科目5科目と専門科目2科目)の全科目合格とプロフェッショナリズム研修の受講が必要である。基本科目1科目以上合格でアクチュアリー会研究会員、基本科目5科目合格で準会員、専門科目に合格し、プロフェッショナリズム研修を終えて正会員となる。全科目合格するまでには最低でも2年を要するが、実際に準会員になるまでには平均5年、正会員になるまでには平均9年程度かかるとされ、実務につきながら資格を取得するのが一般的である。正会員数は2013年(平成25)3月末時点で1373人。有資格者の多くが生命保険会社、損害保険会社、信託銀行、コンサルティング会社などに所属し、保険・年金の料率設定や商品開発などを行っている。
アクチュアリーの専門職としての地位は19世紀には確立されていたとされ、世界でもっとも古いアクチュアリー会は1848年にイギリスで設立された。日本におけるアクチュアリーの歴史も古く、1899年(明治32)に日本アクチュアリー会が設立されている。
[編集部]
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