アジェンダ21(読み)アジェンダニジュウイチ(英語表記)Agenda 21

デジタル大辞泉 「アジェンダ21」の意味・読み・例文・類語

アジェンダ‐にじゅういち〔‐ニジフイチ〕【アジェンダ21】

Agenda 21》21世紀に向けての環境保全行動計画開発と環境保護を両立させるため、各国がなすべきことをまとめた行動計画(アジェンダ)。1992年6月の「地球サミット」で採択され、人口問題砂漠化の防止措置、大気汚染防止など幅広いテーマが40章115項目にわたって盛り込まれている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アジェンダ21」の意味・わかりやすい解説

アジェンダ21
あじぇんだにじゅういち
Agenda 21

1992年に開かれた「環境と開発に関する国連会議」(UNCED、地球サミット)において採択された21世紀に向けての行動計画。同時に採択された「環境と開発に関するリオ宣言」を実行に移すためのものである。社会的・経済的側面、開発のための資源の保全と管理、主たるグループの役割強化、実施手段の4部、全40章からなる長大な文書である。しかし、それを実施するための資金の確保や運用方法、関連条約との連携などは課題として残された。

 アジェンダ21以前にも、1972年の国連人間環境会議で採択されたストックホルム人間環境宣言をはじめとして多くの類似の宣言や行動計画が採択されてきたが、いずれも十分には実施されなかった。そのためアジェンダ21については、
(1)実際の国内施策に反映させるために各国の一般国民を含むすべての関係者の理解と認識を高めること
(2)その実施状況を国際的に検討し改善していくこと
が重視されている。

 (1)のためには、国民参加の下に各国版のアジェンダ21を策定し提出することが義務づけられ、これを受け各国はナショナルアジェンダ21を策定し公表した。日本においても、その草案段階で公表して国民から広く意見を求め、それらを参考に修正が行われ、最終的に1993年(平成5)に地球環境保全に関する関係閣僚会議で決定された「アジェンダ21行動計画」が提出された。他方、地方自治体版の策定も奨励されており、先進諸国を中心に多くの地方自治体がローカルアジェンダ21を策定している。日本においても、環境省(旧環境庁)の呼びかけにより、おもな地方自治体は「ローカルアジェンダ21」、またはそれぞれの環境基本条例の下で環境基本計画のなかに組み入れる形のローカルアジェンダを策定している。

 (2)については、1993年に国連経済社会理事会の下部組織として「持続可能な開発委員会(CSD=Commission on Sustainable Development)」が設置され、検討作業が進められている。とくに、UNCEDから5年後の1997年に開かれた国連環境開発特別総会(UNGASS(アンガス)=United Nations General Assembly Special Session)では、アジェンダ21の実施状況が総合的に検討され、今後の優先課題を示す「アジェンダ21の補足実施計画」が採択された。しかし、持続可能でない開発の存在とそれによる環境への脅威の増大が指摘され、持続可能な開発の確保が困難であることが改めて示された。また10年後にあたる2002年には「持続可能な開発に関する世界サミット」(WSSD=World Summit on Sustainable Development、ヨハネスバーグ会議)が南アフリカ共和国のヨハネスバーグで開かれたが、状況はあまり変わっていない。経済、金融、政治各側面での世界的な不安定さが目だつなかで、20年後にあたる2012年6月にはリオプラス20がリオ・デ・ジャネイロで開かれた。

[磯崎博司]

『環境庁著『アジェンダ21』(1993・海外環境協力センター)』『環境庁地球環境部企画課編・外務省国際連合局経済課地球環境室監修『国連環境開発会議資料集』(1993・大蔵省印刷局)』『イグナチ・サックス著、都留重人監訳『健全な地球のために――21世紀へ向けての移行の戦略』(1994・サイマル出版会)』『「エネルギーと環境」編集部編、環境庁・外務省監訳『アジェンダ21実施計画('97)――アジェンダ21の一層の実施のための計画』(1997・エネルギージャーナル社)』『内藤正明ほか編『岩波講座 地球環境学10 持続可能な社会システム』(1998・岩波書店)』『OECD(経済協力開発機構)著、井上昭正・松嶋美由紀訳『グローバル時代の環境戦略――持続可能な世界の発展をめざして』(1999・三修社)』『高橋秀行著『市民主体の環境政策』上下(2000・公人社)』

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百科事典マイペディア 「アジェンダ21」の意味・わかりやすい解説

アジェンダ21【アジェンダにじゅういち】

1992年6月,ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議で〈環境と開発に関するリオ宣言〉を実現するために〈リオ宣言〉とともに採択された,21世紀に向けた行動計画。〈アジェンダ21〉は各国の環境政策や開発計画などに反映されることを期待して採択されたもので,条約のような法的拘束力はない。その内容は,1.社会経済的側面では開発途上国の持続可能な開発を促進するための貿易の自由化,貿易と環境の相互支援化,開発途上国への適切な資金供与と国際債務の処理など,2.開発資源の保護と管理ではモントリオール議定書で採択されたオゾン層破壊物質の排出規制の遵守による成層圏オゾン層の破壊防止など,3.主たるグループの役割の強化では行動計画の効果的な実施に果たす女性の積極的な経済的政治的意思決定の重要性など,4.実施手段ではアジェンダ21の実施のための資金メカニズムの活用と継続的な質的改善など,総計40の項目を盛り込んで四章から成り,計画分野ごとに行動の基礎,目的,行動実施手段について詳述している。
→関連項目エネルギー資源

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アジェンダ21」の意味・わかりやすい解説

アジェンダ21
アジェンダにじゅういち
Agenda 21

1992年ブラジルのリオデジャネイロで開催された環境と開発に関する国連会議 UNCEDにおいて宣言された環境と開発に関するリオ宣言を受けて採択された,21世紀へ向けての行動計画。その内容は 40章約 500ページからなる文書にまとめられており,(1) 国際経済と環境,貧困の撲滅,人口問題などの社会的・経済的側面,(2) 大気保全をはじめ森林,農業などの開発資源の保護と管理,(3) 主要グループの役割の強化,(4) 実施手段,などにわたる。検証機関として国連直属の持続可能な開発に関する委員会を設置するなど具体性,実行性に重点がおかれているのが特徴である。

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世界大百科事典(旧版)内のアジェンダ21の言及

【国連環境開発会議】より

…これは環境問題が他の諸問題と深くリンクしていることを示すものだが,とりわけ,従来相反するものとして考えられ,先進国と開発途上国の対立のもとともなっていた環境と開発とについて,それはむしろ互いに依存するものであり,環境を保全してこそ将来にわたる開発が可能となるという主張(持続可能な開発)を説得的に打ち出すものであった。 地球サミットは,この考え方をキー概念として,〈環境と開発に関するリオ・デ・ジャネイロ宣言(リオ宣言)〉,その具体的な行動計画たる〈アジェンダ21〉,また〈森林原則声明〉を採択したほか,地球温暖化防止条約(気候変動枠組条約),生物多様性条約の調印がこの会議でなされた。 リオ宣言は持続可能な開発を実現する諸原則を規定しているが,特徴的なのは,その実現に向けてすべての主体の参加と情報公開がうたわれ(第10原則),女性,青年,先住民,抑圧下の人間等,各主体の関与,役割を明らかにしている点(第20~23原則),また,〈共通だが差異のある原則〉(第7原則)という考え方を打ち出している点である。…

※「アジェンダ21」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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