日本大百科全書(ニッポニカ) 「アフマドゥーリナ」の意味・わかりやすい解説
アフマドゥーリナ
あふまどぅーりな
Белла Ахатовна Ахмадулина/Bella Ahatovna Ahmadulina
(1937―2010)
ロシアの詩人。米ソの冷戦緩和「雪どけ」後、文芸誌『青春(ユーノスチ)』を基盤に文壇に登場した、A・アフマートワ、M・ツベターエワの伝統を継ぐ世代の代表的詩人として活躍を続けた。繊細で豊かな叙情性と、激しい情熱を秘めた典雅な詩風に秀でる。処女詩集『琴線』(1961)以後、『音楽のレッスン』(1970)、『ジョージアの夢』(1977)などの詩集や、自己の家系と出生の歴史をつづった長編詩『わたしの系譜』(1964)、メルヘン風の長詩『雨についてのお伽(とぎ)話』(1965)などで人気を不動のものとし、以後40年に及ぶ年月、つねに第一線の詩人として他の追随を許さぬ詩の飛翔(ひしょう)をみせ、いずれも5万部、10万部という驚異的部数で出版される数多くの詩集がある。『吹雪』『秘めごと』(ともに1977)、『庭』(1987)、『岸辺』『連丘』『導きの音』(いずれも1995)、『12月のあるとき…』(1996)、『クリスマス・ツリーのかたわらで』(1999)が、読者を魅了してやまない。詩作のみならず、タビッゼГалактион Табидзе/Galaktion Tabidze(1892―1959)、チコバーニСимон Чиковани/Simon Chikovani(1902―1966)、カランダッゼАнна Каландадзе/Anna Kalandze(1924―2008)など、彼女の愛するジョージア詩人たちやヨーロッパ詩人(ネルバルなど)の詩の翻訳や、子供のための詩、詩人論、エッセイ、また独特の文体でつづられた散文小説『シベリアの路上で』(1963)、『老婆』(1967)がある。そしてアクショーノフら23人の作家、詩人たちが検閲に抗議して地下自主出版した文集『メトロポリ』(1980)に発表したシュールリアリスティックな物語「たくさんの犬たちと一頭のイヌ」など、ジャンルも幅広い。これらの多彩な作品群が、1997年には『アフマドゥーリナ作品集』全3巻に収められた。
[安井侑子]
『安井侑子著『青春――モスクワと詩人たち』(1987・晶文社)』▽『草鹿外吉編訳『現代ロシア詩集――自由を求めたロシアの詩人たち』(1991・土曜美術社)』▽『土屋紀子著『ロシアの女性詩人たち』(2002・東洋書店)』