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アベラール Abailard(Abélard), Pierre

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

アベラール
Abailard(Abélard), Pierre

[生]1079. ナント,ル・パレ
[没]1142. クリュニー
フランスの神学者,哲学者。ラテン名 Petrus Abaelardus。唯名論のロスケリヌス,実在論のシャンポーのギヨーム,神学のランのアンセルムスに師事したが,いずれの師とも対立し,論戦によってその名を高めた。パリでのエロイーズとの恋とその悲劇的結末 (1118) は,彼の創作とされる往復書簡と,自伝『わが不幸の物語』 Historia calamitatumによって有名。哲学上は概念論の立場に近く,道徳では意図と良心を重視する。その神学的著作『肯定と否定』 Sic et nonは独特の弁証法的方法ゆえに重要 (→シック・エト・ノン ) 。それを適用した三位一体論が異端とされたほか,晩年にはクレルボーのベルナルドゥスの激しい攻撃を受けた。

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デジタル大辞泉の解説

アベラール(Pierre Abélard)

[1079~1142]フランスのスコラ哲学者・神学者。教会の権威や伝統を大胆に批判。女弟子エロイーズとの恋愛は有名。

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百科事典マイペディアの解説

アベラール

フランスの初期スコラ学者,神学者。ラテン名ペトルス・アベラルドゥスPetrus Abaelardus。普遍論争における唯名論派の祖。ロスケリヌス,シャンポーのギヨーム,ランのアンセルムスに学ぶ。
→関連項目スコラ学

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世界大百科事典 第2版の解説

アベラール【Pierre Abélard】

1079ころ‐1142
フランスの初期スコラ神学者,哲学者。ラテン名はペトルス・アベラルドゥスPetrus Abaelardus。ナントに近いパレに生まれた。ロスケリヌスとシャンポーのギヨームに学んだのち,1108年ころパリに出て弟子を集め,神学と哲学(弁証術)を教える。ここで起こったエロイーズHéloïseとの相愛事件は有名である。アベラールは1子をもうけたのち彼女を修道院にやり,みずからも去勢されてサン・ドニ修道院に入り,そこで没した。

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大辞林 第三版の解説

アベラール【Pierre Abélard】

1079~1142) フランスのスコラ哲学者・神学者。普遍論争では師ロスケリヌスの考えを発展させて唯名論を確立し、倫理学では意図や決断に価値をおく心情倫理を説いた。その神学説は異端とされる。女弟子エロイーズとの往復書簡は有名。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

アベラール
あべらーる
Pierre Ablard
(1079―1142)

フランス中世の哲学者、神学者。ラテン名ペトルス・アベラルドゥスPetrus Abaelardus。ナント近傍ル・パレに生まれる。音声言語論者と目されるロスケリヌス等に学んだ後、パリでシャンポーのギヨームGuillaume de Champeaux(1070ころ―1121)に師事するが、その普遍に関する実在論的考えを批判し、自ら学校を開いて弁証学(論理学)を教えた。ついで神学を学ぶが、師ランのアンセルムスAnselme de Laon(1050ころ―1117)を批判し、神学をも教え始めた。だが、生徒の一人エロイーズHlose(1101―1164)との恋愛と結婚は悲劇的な結末を迎え、またその才能の発露は多くの敵対者を生むことになり、三位一体論(さんみいったいろん)を含む神学的著作が公会議において焼かれるなど、幾多の迫害を受け、その後半生は流浪の修道生活であった。
 中世の論理学における彼の業績は大きい。普遍論争において、彼は元来の意味における唯名論派の祖である。彼は「音声としての言語voxが普遍だ」との先行する立場を継いで、「人間」は多くの個物につけられた共通の音声である名称(普通名詞)であり、それは複数のものについて「人間である」と述べられることにおいて普遍であるとした。いいかえれば、実在の内には「人間」に対応する普遍はなく、ただ多くの個物が「人間であること」において一致しているのである。しかし、彼はこの立場の欠点に気づき、これを克服すべく音声言語が聞き手の内に個物にかかわる理解の働き(概念作用)を構成することに注目し、やがて普遍という性格を単なる音声voxにではなく、意味作用significatioを行うものとしてのことばsermoないし名称nomenに帰するに至った。ことばこそが普遍にほかならない。
 倫理学に関して彼は、結果としての行為にではなく、意図intentioないし主体の選択・決断としての同意consensusに善悪の基準を求めることを提唱した。
 神学としては、聖書と教父たちの外見上両立しない諸命題を肯定と否定の意見とに分けて編集した『然(しか)りと否』Sic et nonがある。人を知的探究へ誘うこの方法は、以後スコラ神学に影響を与えた。[清水哲郎]

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世界大百科事典内のアベラールの言及

【キリスト教】より

…彼の神学が自由の確立と意志の救いに向かっていたことは,教会と信仰の精神基盤がどこにあるかをよく示している。アベラールは理性の自由を強調して異端視されたが,行きつく所はこれと同じであった。13世紀に入ってペトルス・ロンバルドゥスやトマス・アクイナスの構築するスコラ学の壮大な体系(《命題集》や《神学大全》)は,教皇至上主義と重なっていても,これとて霊魂の救いをめざす神秘主義的敬虔によって支えられていたのである。…

【キリスト教文学】より

…ザンクト・ガレンは11世紀初めに寺伝の有能な編者エッケハルト4世Ekkehart IV(980ころ‐1060ころ)をもった。つづいて冷厳な雄弁僧ペトルス・ダミアニ(《歌の中の歌》その他の作者)や,カンタベリー大司教であったランフランクLanfranc(1005ころ‐89),アンセルムスの両権威,なかんずくパリ大学に多くの聴講者を集めたアベラールとその論敵で当時教界の重鎮であったクレルボーのベルナールらが次代を代表する。ことにアベラールとその愛人エロイーズの悲痛な恋愛の物語は人々にあまねく知られ,2人が交換した多くの書簡,とりわけ第1の《わが不幸の物語》は,中世宗教文学に異彩を放っている。…

【スコラ学】より

…しかし独自の特徴を示すスコラ学が開花するのは,いわゆる〈12世紀ルネサンス〉においてであり,〈スコラ学の父〉と称せられるアンセルムスにおいては,洗練された論理学・弁証論を駆使してキリスト教の教義を解明しようとする試みが見いだされる。それをさらに徹底させたのがアベラールであり,その著《然りと否》は,中世大学の基本的授業形式の一つである〈討論disputatio〉および主要な著述形式〈スンマsumma〉の原型である。この時期,普遍(類と種)をめぐる論争(普遍論争)が盛んに行われた。…

【唯名論】より

…普遍は等しい個物に対する単なる〈声vox〉ないし〈名nomen〉であるか,個物に面して精神が懐胎し総括する〈概念conceptus〉または概念の概念として精神により〈総括された記号terminus conceptus〉とされる。ロスケリヌス,アベラール,オッカムが代表者。アベラールは普遍は名(概念)または〈言表sermo〉であるとし,普遍の〈概念説conceptualism〉と〈言表説sermonism〉の発端となり,オッカムは普遍の〈記号説terminism〉の先駆となる。…

※「アベラール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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