観賞用に栽植されるヒガンバナ科の球根植物。普通,園芸でアマリリスと呼ばれているものはヒッペアストルム属Hippeastrumのもので,ホンアマリリスAmaryllis belladonna L.(英名belladonna lily)とは別属として区別される。ホンアマリリスは南アフリカ原産の1属1種の半耐寒性の球根植物で,日本には明治末ごろ渡来した。普通9月末の葉の出る前に,30~40cmの中実の花茎を出し,ピンク色の芳香のある花を数輪次々と咲かせる。最近は北アメリカやニュージーランドで改良された巨大花の品種が輸入されている。
ヒッペアストルム属は熱帯アメリカを中心に南アメリカ地域に約75種の原種が知られる。花は鉢植えでは5~6月,温室では冬~早春に咲く。ホンアマリリスとは,花茎が中空となり,めしべの柱頭が3裂する点などで区別される。この属では多くの園芸品種が種間交配で作出され,それらはアマリリスH.hybridumと総称されている。とくに今日,人気のあるルードウィヒ系大輪種は5種ほどの種間交雑によって,オランダのルードウィヒ社で育成されたものがもとになり,巨花,丸弁,多花性に,また色彩も赤色,桃色,白色,サーモンピンク,橙色,縞などに改良されたものである。球根を分割して鱗片繁殖が行われるようになってから,不稔であっても栄養繁殖によって増殖できるようになり,名称をつけた園芸品種が普及するようになった。他方,小輪で花数の多い品種群もやはりオランダで種間交雑によって育成され,ヒッペアストルム・グラキリスH.gracilis Hort.と呼ばれている。本属の原種には黄色や藤色の花色を有するもの,芳香のあるもの,葉に白線の入るものなど,いろいろな形状の種があり,今後大きく変化した美麗花が作出されるだろう。日本で栽培される大半の品種は熱帯系の要素が強いため,普通,春植え球根として扱い,晩秋に降霜で葉が枯れると暖所に移すか,掘り上げて暖かくして貯蔵する。鉢植えは根を切らないよう浅植えし,赤斑病の予防のためベンレートなどで消毒して清潔にするとよい。
なお,アマリリスの名称はローマの詩人ウェルギリウスの《牧歌》に登場する羊飼いの乙女の名に由来する。
執筆者:川畑 寅三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ヒガンバナ科(APG分類:ヒガンバナ科)ベラドンナ属の球根草で1属1種。近時一般にアマリリスとよばれているのは南アメリカ原産のヒペアストルムHippeastrum × hybridum hort.であり、これに対して、ホンアマリリスともいう。南アフリカのケープ地方原産。ヒガンバナほどではないが葉が出る前に40~60センチメートルの強い茎を伸ばし、9月下旬、ササユリに似た桃色花を数個以上次々と開き、強い芳香がある。花期を過ぎてからスイセンに似た葉を10枚以上出す。葉は零下3℃以下になると枯れるので、ビニルハウスや温室で越冬させると、翌年の5月末まで葉が残り、のちに黄変して枯れ、夏季は休眠する。ヒペアストルムに対し、ケープベラドンナとよばれ、白色、濃桃色などの品種が導入され、品種改良も進んでいる。球根は球周り16センチメートル以上の大球で、秋植えより夏植えのほうがよく、旺盛(おうせい)に生育するので鉢植えよりは地植えのほうが適する。鉢植えは6号鉢に1球植えにし、排水はよく、肥料は多めにする。英名ネイキッド・レディ(裸の美女)は花の愛らしさに由来する。
[川畑寅三郎 2019年1月21日]
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