アミラーゼ

デジタル大辞泉 「アミラーゼ」の意味・読み・例文・類語

アミラーゼ(〈ドイツ〉Amylase)

でんぷんアミロースグリコーゲンなどを加水分解し、麦芽糖グルコースを生成する酵素の総称。生物界に広く分布し、動物では消化酵素の一。あめビールの製造などに利用。ジアスターゼ
[類語]酵素ジアスターゼペプシン

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精選版 日本国語大辞典 「アミラーゼ」の意味・読み・例文・類語

アミラーゼ

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Amylase ) 動植物、微生物界に広く分布するでんぷん分解酵素の総称。動物の消化液に多量に含まれる。工業的に、麦芽、カビ、細菌などから培養、分離してつくられ、消化剤、飴、ビールの製造などに用いる。→ジアスターゼ

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四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「アミラーゼ」の解説

アミラーゼ

基準値

40~130U/ℓ

(JSCC勧告法)

アミラーゼとは

 膵臓から十二指腸に分泌され、栄養素のひとつである澱粉でんぷん(糖質)を分解する消化酵素。


とくに膵臓の異常を調べるための検査です。アルコールの飲み過ぎや脂肪のとりすぎなどで、膵細胞が破壊されると血液中に増加します。

膵炎で高値に

 アミラーゼは、おもにすい臓の細胞に存在し、膵細胞が破壊されると血液中に出てくる(逸脱)ため、これが高値を示していれば、膵臓の障害が疑われます。

 急性膵炎は激しい腹痛を伴い、血液中のアミラーゼをはじめとする膵酵素が基準値の10数倍の高値になります。

 アルコールが原因の60~80%を占める慢性膵炎では、持続した腹痛(軽度の鈍痛)と、アミラーゼが2~3倍の高値になります。

 膵臓がんでは、2~3倍の軽度の上昇が一般的ですが、がんに急性膵炎を合併すると、10数倍の高値になります。

 アミラーゼは、血液中から尿中へ排泄されるため、血液中と同時に尿中アミラーゼを測定することも重要で、上昇の程度は血液中アミラーゼに比例し、急性膵炎では10数倍に、慢性膵炎や膵臓がんでは数倍になります。

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)でも上昇

 アミラーゼは、唾液腺にも多く含まれているため、唾液腺の病気の疑いがあるときも調べます。

 このアミラーゼ(S型)は、膵臓のアミラーゼ(P型)とは区別できます。ウイルス耳下腺に感染して発症するおたふくかぜは、耳下腺のはれと痛みに加えてアミラーゼ(S型)が2~3倍の高値になります。

重症急性膵炎では2~3週間、繰り返し測定

 血清を用いて、自動分析器で測定します。測定法により基準値が異なります。検査当日の飲食は普通にとってかまいません。

 急性膵炎では、発病1~2日でアミラーゼの値が最高になり(10数倍の値)、その後、急激に低下して約1週間でほぼ基準値に戻ります。激しい腹痛があるので判別することができますが、ほかの血液中膵酵素の判定や腹部超音波(→参照)、腹部CT(→参照)で確定診断します。

 重症急性膵炎や膵のう胞を合併しているときは改善が遅れるため、2~3週間は繰り返し測定して、改善の確認が重要です。

 持続する軽度の高値のときは、慢性膵炎や膵臓がんなどを考え、上記の検査のほかに逆行性膵胆管造影(→参照)、MR(MRCP参照)、腫瘍マーカー(→参照)、PET-CT(→参照)の検査が行われます。

疑われるおもな病気などは

◆高値→膵疾患:急性膵炎、慢性膵炎、膵臓がん、膵嚢胞など

    その他流行性耳下腺炎イレウス腸閉塞)、卵巣腫瘍、肝炎、腎不全など

◆低値→慢性膵炎(膵機能荒廃期)など

医師が使う一般用語
「アミラーゼ」

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改訂新版 世界大百科事典 「アミラーゼ」の意味・わかりやすい解説

アミラーゼ
amylase

可溶性デンプンやグリコーゲンなどを加水分解する酵素であり,その作用様式によってα-アミラーゼとβ-アミラーゼとに区別される。α-アミラーゼは動物の唾液(だえき)や膵液に含まれ,デンプンの消化に関与するほか,植物(麦芽,ワサビなど),微生物に広く分布する。α-1,4グルコシド結合を無差別に切断する。最終産物としてグルコースやマルトースが生成するか,あるいはアミロペクチンなどの枝分れ構造を含む部分,あるいはまたα-限界デキストリンとして未消化のままかなり残る。β-アミラーゼは主として高等植物(大麦,小麦など)に見いだされ,α-1,4グルカン鎖の末端から逐次マルトース単位を遊離する。ちなみにβ-アミラーゼは最適条件下では酵素1分子あたり1分間に約100万個のマルトースを遊離する。アミロースのように枝分れのないものは完全に消化するが,アミロペクチンやグリコーゲンのように枝分れのあるものではその直前で反応が停止する。なお,ジアスターゼという名前が以前デンプンの消化酵素として使用されていたが,現在ではこの名前は麦芽やコウジカビから調製された粗酵素標品すなわち各種の消化酵素の混合物に対して使われる。アミラーゼはジアスターゼの主成分である。

 ヒトの血液,尿では一定レベルのアミラーゼ活性があるが,耳下腺炎,膵炎のときには活性値が上昇し,診断の大きな目安になる。唾液腺アミラーゼと膵アミラーゼとはアイソザイムであるので,別々に測定することも可能である。
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化学辞典 第2版 「アミラーゼ」の解説

アミラーゼ
アミラーゼ
amylase

ジアスターゼともいう.デンプンやグリコーゲンのα-1,4-グリコシド結合の加水分解反応を触媒する酵素の総称.α-アミラーゼ(EC 3.2.1.1),β-アミラーゼ(EC 3.2.1.2),γ-アミラーゼ(EC 3.2.1.3)がある.α-アミラーゼは唾液,膵液,微生物中に存在し,無差別にα-1,4-グリコシド結合を加水分解する.ヒト膵液より得られるこの酵素は分子量4.5×104.β-アミラーゼは高等植物,微生物に存在し,グルコース鎖の非還元末端より逐次マルトース単位でα-1,4グリコシド結合を切断する.サツマイモからのものは分子量1.52×105.γ-アミラーゼは,主として糸状菌より分泌され,デンプンの非還元末端よりグルコース単位で分解する.例外的に,グルコアミラーゼはα1-6結合も開裂する.[CAS 9000-92-4]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「アミラーゼ」の解説

アミラーゼ

 デンプンを加水分解する酵素の総称で,糖鎖の末端から単糖もしくはオリゴ糖を順次遊離するエキソ型のアミラーゼ,糖鎖の内部で切断するエンド型のアミラーゼ,α1→6の分枝を切断するプルラナーゼや,イソアミラーゼとよばれる脱分枝酵素などが,知られている.α-アミラーゼ[EC3.2.1.1]とよばれるのは,1,4-α-D-グルカングルコヒドロラーゼ(1,4-α-D-glucan glucohydrolase)でエンド型のアミラーゼ,β-アミラーゼ[EC3.2.1.2]とよばれるのは,1,4-α-D-グルカンマルトヒドロラーゼ(1,4-α-D-glucan maltohydrolase)で非還元末端からマルトースを遊離するエキソ型のアミラーゼ.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

百科事典マイペディア 「アミラーゼ」の意味・わかりやすい解説

アミラーゼ

デンプン,グリコーゲンをおもに麦芽糖とデキストリンに加水分解する酵素の総称。生物界に広く分布する。ジアスターゼ(麦芽),タカジアスターゼ(コウジカビ),プチアリン(唾液(だえき)),アミロプシン(腸液)などが含まれ,作用様式によりα‐型,β‐型,糖化型に分かれる。
→関連項目ジアスターゼプチアリンマルターゼ

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世界大百科事典(旧版)内のアミラーゼの言及

【酵素工業】より

酵素は古来醸造食品の製造において,一部の工程を遂行するために利用されてきた。現在でもビールの醸造でデンプンの糖化に麦芽のアミラーゼが,またチーズの製造に際し乳タンパク質の凝固に子牛の胃液から作られたレンニンが使用されているが,これらがいつごろから始まったかは定かでなく,あるものは有史以前にさかのぼることができると考えられる。しかし,酵素の利用が醸造工業の補助的役割を脱し,独立した技術として認められるようになったのは20世紀中ごろ以降のことである。…

【消化】より

…この微絨毛間の間隙(かんげき)は幅0.1μmとひじょうにせまく,細菌その他の微生物のはいり込めない空間となっている。この微絨毛表面の細胞膜には構成タンパク質の一部として多糖類分解酵素(グルコアミラーゼ),各種の二糖類加水分解酵素,アミノペプチダーゼその他の酵素が存在している。糖質やペプチドの最終的な消化はここで行われ,この特殊な空間に出た最終消化産物は同じ細胞膜に備わった,濃度こう配に逆らって行われる強力な能動輸送によって,速やかに細胞内にとり込まれる。…

【ダイコン(大根)】より

…また,切干しにしたり,葉を干して干葉(ひば)として米飯の増量材にするなど,日本人の食生活を多面的にささえてきた食品であった。成分上の特徴としては,根部に消化酵素アミラーゼ(ジアスターゼ)とビタミンCを多量に含有し,葉部にはカロチンが豊富である。このアミラーゼとビタミンCは熱に弱いので,ダイコンおろしなどにしての生食がよい。…

※「アミラーゼ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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