古代ギリシアの数学者、天文学者。太陽中心説を初めて唱えた。サモス島に生まれ、アリストテレスが創設した学園リケイオンの3代目学長ストラトンStratōnの弟子となった。残されている唯一の著書『太陽および月の大きさと距離について』で、彼は三角法を用いて、地球と月、地球と太陽の距離の比を求め、地球と太陽の距離は、地球と月の距離の18倍から20倍の間とした(実際は約400倍)。また、月と太陽のそれぞれの視直径を求め、それぞれの体積比も算出した。太陽の大きさは実際より、はるかに小さくなっているが、それでも地球の300倍とされ、太陽中心説の根拠となった。アルキメデスはその著『砂粒を数えるもの』でアリスタルコスを詳細に検討しており、地球が太陽の周りを回っているにもかかわらず、年周視差が発見されないことから、アリスタルコスは恒星球の大きさをそれまでよりずっと大きく見積もったとしている。なお、コペルニクスは古代の太陽中心説を検討したにもかかわらず、アリスタルコスには触れなかった。
[高山 進]
ギリシアの天文学者。サモスSamos島の人。太陽中心的な宇宙体系(地動説)の創案者として知られている。ギリシアにおける地動説としては,ピタゴラス派に〈中心火〉なるものの周囲を,太陽,地球を含むすべての天体が回転するという体系はあるし,ポントスPontosのヘラクレイデスHērakleidēs(前388ころ-前315ころ)は地球の自転を考えたといわれるが,地球の自転と太陽を回る公転とを考案したのはアリスタルコスが最初といってよい。この体系を記述した彼の著述は現在残っていないが,同時代および後代の人々の言及によって,これらの事柄は確認されている。
プトレマイオスはその著《アルマゲスト》の中で名指さずにこの太陽中心的体系に言及しており,コペルニクスもまた《天球の回転について》で,アリスタルコスの名をあげて地動説を説いた人々のリストに加えている。
執筆者:村上 陽一郎
古代最大の文献学者。サモトラケ島の生れで,ビュザンティオンのアリストファネスの弟子。アレクサンドリア図書館長,プトレマイオス7世の教育係を経て,8世の即位とともにキプロスに去り,その地で死ぬ。文法,語源学,正書法,文献批判の分野で功績が大。ホメロス,ヘシオドス,アルキロコス,アルカイオス,アナクレオン,ピンダロスのテキストの校訂を行い,注解,批評論文を書く。とくにホメロスの校訂に貢献し,そのための各種の記号を考案。彼がアレクサンドリアに建てローマ帝政期まで続いた学校から,アリストニコス,アンモニオス,トラキアのディオニュシオス,アポロドロスらが輩出した。
執筆者:池田 黎太郎
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前310頃~前230頃
ヘレニズム時代の天文学者。サモス人。太陽と月の大きさと距離の比を算出したほか,特に地球の公転および自転説を唱えたが,コペルニクスはこの太陽中心説を最後まで知らなかった。
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…前者はアリストテレスの主張したところで,惑星の運動に関するプトレマイオスのかなり精密な記述もそれによっていた。それはキリスト教の人間中心観とも合致し,中世を通じて権威とされていたが,すでに前3世紀のサモスのアリスタルコスは地動説をとっていた。コペルニクスはポーランドに生まれ,イタリアの大学で神学,医学,数学,天文学などを学び,そのとき地動説のことも聞いたのであろう。…
…地球中心説はギリシアの支配的な説ではあるが,しかし〈地動説〉がまったく存在しなかったわけではない。なかでも前3世紀のサモスのアリスタルコスは地球その他の天体が太陽のまわりを動くことを唱えた学者として注目される。ヒッパルコスの天動説をいっそう完全なものとしたのは,2世紀にアレクサンドリアで活躍したプトレマイオスである。…
…(1)前3世紀から前2世紀前半にかけての,エジプトのアレクサンドリアの図書館を中心とする文献学上の学統。エフェソスのゼノドトス,ロドスのアポロニオス,サモトラケのアリスタルコスらにより,主としてホメロスの作品の校訂編纂や古典諸文献の収集を行った。(2)180年ころ,パンタイノスによりアレクサンドリアに設立された一種の私塾(アレクサンドリア教校)に形成された学派。…
…こうしたいわば文献学的方向に仕事が傾いていたことは,アリストテレス流のリュケイオン学風を受け継いだ証左であろう。初代館長ゼノドトスはホメロスを校訂した文献学者,第2代館長は《アルゴナウティカ》で有名な詩人ロドスのアポロニオス,第3代は子午線測定で特に有名なエラトステネスと続き,前2世紀半ばの第6代館長サモトラケのアリスタルコスまでは各代随一の学者・文人が任命されたが,以後軍人や役人が館長に任命されることもあり,学問の機関としては次第に衰退した。のちキリスト教時代に入って異教文化破壊に遭遇,389年司教テオフィロスにより焼き払われて存在を終わった。…
…その口承伝説は前6世紀半ばにはアテナイでパンアテナイア祭での朗誦の目的で文字化されており,そのほか各地に写本が流布していた。この流布本は前2世紀ごろアレクサンドリアの学者アリスタルコスによって校訂され,標準的なテキストが作られた。《イーリアス》は神々を人間と同じ欠点を持つ不道徳なものとして描いていると,クセノファネスやプラトンは批判したが,アリストテレスやホラティウスはその文学性を高く評価し,ヘレニズム,ローマ世界での重要な教科書として用いられた。…
※「アリスタルコス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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