アリ塚(読み)ありづか(英語表記)ant heap

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アリ塚」の意味・わかりやすい解説

アリ塚
ありづか / 蟻塚
ant heap
ant hill
ant mound

昆虫類のアリまたはシロアリの巣で、地上に円錐(えんすい)状、塔状、あるいはキノコ状に盛り上げられた部分をいう。シロアリは分類学上等翅(とうし)目に属し、膜翅目のアリとは遠縁であるが、ヨーロッパ人によって「白いアリ」white antとよばれ、熱帯サバナなどにみられる土でつくられた巨大なシロアリの塚もアリ塚またはアリの塔ant hillとよばれている。

 アリ塚には、地中営巣性のアリが巣を掘るときに運び出した土や砂が巣口付近に盛り上げられた単純なものから、落ち葉や落ち枝などを集めてつくられた複雑なものまでさまざまなタイプがある。前者の典型的なものは、乾燥地帯のアリ類、たとえばポゴノミルメックス属pogonomyrmexの収穫アリの巣にみられ、その小さなものはクレーターとよばれている。複雑なアリ塚では、一般に温帯から亜寒帯に生息するエゾアカヤマアリの仲間のものがよく知られている。これらのアリ塚は、地中から運び出された土と付近の地表から集められた針葉樹の落ち葉や落ち枝などでつくられ、その大きさは直径10メートル、高さ2メートルに達するものもある。塚の内部には多数の巣室と通路があり、地下の巣と連絡している。塚の機能は、太陽からの熱を集め、巣内を高温に保つことであり、温度の高い表層部には老齢幼虫や蛹(さなぎ)がみられる。日本のアリ塚では、中部山岳地帯から北海道にかけて分布するエゾアカヤマアリのものが有名で、高さ60センチメートルほどの塚である。ツノアカヤマアリの塚は小形のものが多いが、かなり整った円錐型をしている。

[山内克典]


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改訂新版 世界大百科事典 「アリ塚」の意味・わかりやすい解説

アリ(蟻)塚 (ありづか)
ant hill
termitarium

アリやシロアリ類が地中から地上へ小高く盛り上げてつくる巣で,内部は多数の小室と入り組んだ通路からなり,女王を中心に数万以上の構成員が社会生活をしている。アリ類で塚をつくる種は少なく,日本ではエゾアカヤマアリが北海道から本州中部山地にかけて分布し,カラマツ林や草地などに針葉樹の葉や枯枝,土などを積み上げて塚(最大,直径2m,高さ50cm)をつくる。この塚はその下にある巣の延長としての機能のほかに,巣の保温雨水の浸入を防ぐ働きがある。塚をつくるシロアリ類はキノコシロアリ亜科とツカシロアリ亜科に多く,いずれも分布は熱帯に限られている。キノコシロアリ類の巣には高さ6m,直径30mに達するものがあり,内部は多数の小室と菌室から構成され,上下の空気室と外壁の空気管によって温・湿度とガス濃度が調節されている。ツカシロアリ類の巣には菌室がなく,オーストラリアのAmitermes meridionalisの塚は1辺4mの正方形板状のものが地面につきささったような形で,正確に南北を向くことで有名。
シロアリ
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアリ塚の言及

【シロアリ(白蟻)】より

…網目状のアリ道は土壌の通気性や浸透性をよくし,これらの働きを通じてミミズ同様の働きをしている。熱帯地方にあるアリ塚には木がよく生育し,アフリカの草原ではシロアリがいなければ森林は再生しないといわれている。シロアリは食物の消費や巣への排出物などの蓄積,シロアリ自身を他の動物の食物とすることなどで物質循環に大きな役割を果たしている。…

※「アリ塚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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