アロー(読み)あろー(英語表記)Kenneth Joseph Arrow

デジタル大辞泉 「アロー」の意味・読み・例文・類語

アロー(Kenneth Joseph Arrow)

[1921~2017]米国経済学者。ハーバード大・スタンフォード大教授。計量経済学会会長、米国経済学会会長。一般均衡理論などに業績を残す。1972年、不可能性定理等の研究によってノーベル経済学賞受賞。著「社会的選択と個人的評価」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アロー」の意味・わかりやすい解説

アロー
あろー
Kenneth Joseph Arrow
(1921―2017)

アメリカの経済学者。ニューヨーク州立大学、コロンビア大学大学院に学び、コールズ・コミッション研究員、スタンフォード大学教授、ハーバード大学教授などを務める。その間、計量経済学会会長やアメリカ経済学会会長に就任したこともある。理論経済学の優れた研究によって、1957年にクラーク賞を、1972年にノーベル経済学賞を受賞した。

 彼の業績は多岐にわたるが、初期の主著『社会的選択と個人的価値』Social Choice and Individual Value(1951)は、記号論理学の手法を用いて、民主主義的決定に内在する矛盾を明らかにした古典的な著作として名高い。そのほかにも、一般均衡体系における均衡解の存在やその安定性の解明、代替の弾力性一定の生産関数の研究、経済成長における「実行を通じての学習」効果の分析、価格の調整機構の考察、不確実性や危険負担に関する理論などの業績がある。

[志田 明]

『長名寛明訳『社会的選択と個人的評価』第2版(1977・日本経済新聞社)』『ケネス・J・アロー著、村上泰亮訳『組織の限界』(1999・岩波書店)』『大谷和著『「アロウの一般不可能性定理」の分析と批判』(1996・時潮社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アロー」の意味・わかりやすい解説

アロー
Arrow, Kenneth J.

[生]1921.8.23. ニューヨーク,ニューヨーク
[没]2017.2.21. カリフォルニア,パロアルト
アメリカ合衆国の経済学者。フルネーム Kenneth Joseph Arrow。ニューヨーク市立大学を経てコロンビア大学大学院で学び,博士論文『社会的選択と個人的価値』Social Choice and Individual Values(1951)で,社会構成員の個人的判断集計して得られる社会的な価値判断は,民主主義的な社会的合意とはならないことを意味する「一般不可能性定理」を証明して経済学者,政治学者,社会学者に大きな衝撃を与えた(→社会的厚生関数)。1949~68年スタンフォード大学助教授・準教授・教授,1968~79年ハーバード大学教授を経て,1979年以降再びスタンフォード大学で教え,1991年同大学名誉教授に就任。1956年計量経済学会会長。一般均衡理論の発展と厚生経済学への貢献により 1972年 J.R.ヒックスとともにノーベル経済学賞受賞。1973年アメリカ経済学会会長。主著『危険負担理論に関する論文集』Essays in the Theory of Risk Bearing(1971),『一般均衡分析』General Competitive Analysis(1971,F.H.ハーンとの共著)など著書,論文多数。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「アロー」の意味・わかりやすい解説

アロー
Kenneth Joseph Arrow
生没年:1921-

アメリカの理論経済学者。ニューヨークに生まれ,ニューヨーク市立大学,コロンビア大学卒(1951年同大Ph.D.)。シカゴ大学,スタンフォード大学,ハーバード大学を経て,1979年以降スタンフォード大学教授。一般均衡理論,資源配分機構と組織の経済学,社会的選択理論,危険・不確実性および情報の経済学,オペレーションズリサーチ,非線形計画理論,公共投資の理論など,数多くの領域において膨大かつ本質的な業績を上げている。競争的一般均衡の存在・安定・最適性,民主的な社会的選択機構の一般的存在不可能性などに関する重要な研究に対してノーベル経済学賞受賞(1972)。主著として,《社会的選択と個人的評価》(1951),《一般均衡分析》(F.H. ハーンとの共著,1971),《組織の限界》(1974)がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「アロー」の意味・わかりやすい解説

アロー

米国の経済学者。スタンフォード大学教授,ハーバード大学教授。情報の経済学など広範囲にわたる経済理論で業績をあげる。主著は《社会的選択と個人的評価》(1951年)で,個人の合理的判断を集計して社会的判断を形成する際,どんな民主的ルールによる集計でも循環的矛盾を生む可能性を避けられないという,〈一般不可能性定理〉を証明した。この本は後に社会的選択理論と呼ばれる分野の先駆的研究となった。一般均衡の存在証明の業績で1972年ノーベル経済学賞。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

デジタル大辞泉プラス 「アロー」の解説

アロー

アメリカのクライスラーがプリマスのブランドで1976年から1980年まで販売していた乗用車。3ドアハッチバック。三菱自動車のランサーセレステのOEM車。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のアローの言及

【社会的選択理論】より

…ところでこのルールは,各個人が矛盾のない判断を表明していても,それらを集計した社会的判断が循環的矛盾を生むという〈投票のパラドックス〉の可能性を含むという事実が,古くフランスの啓蒙思想家M.J.A.N.deコンドルセにより発見された。社会的選択理論における古典的成果とされるK.J.アローの一般可能性定理general possibility theoremは,このようなパラドックスは単純多数決ルールにのみ固有の欠陥ではなく,実は民主的な集計ルール一般が避けえない難点であるということを論証したものである。さらにまた,いかなる集計ルールであれ,個人による虚偽の判断表明によりその個人の利益になるように操作される可能性をつねに潜めているという事実も,一般的な論証を受けている。…

※「アロー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android