平面形状が上流に凸のアーチ形をしているダム。以前は石でつくられていたが、19世紀末以降はコンクリートでつくられるようになった。アーチダムは、水平なアーチと鉛直な片持ち梁(ばり)とでダムの自重、水圧、地震力などの荷重に耐える構造をしており、ダムの厚さを薄くでき、コンクリートを節約できるが、荷重の一部をアーチ作用により両岸に伝え、両岸で支えることになるので、建設地点は底部だけでなく、両岸も堅固な岩盤であることが必要である。2011年版ダム年鑑(日本ダム協会)によると、日本には53のアーチダムがあり、100メートル以上の高さのダムが19ある。日本最初のアーチダムは1953年(昭和28)に竣工した島根県斐伊(ひい)川の三成(みなり)ダム(高さ42メートル)であるが、1955年には高さ110メートルの上椎葉(かみしいば)ダム(宮崎県耳川)がつくられた。日本でもっとも高い黒部ダム(富山県黒部川、高さ186メートル、1963年竣工)はアーチダムである。また世界でもっとも高い中国の錦屏(ジンピン)第1ダム(高さ305メートル、2012年竣工)もアーチダムである。
[鮏川 登]
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…たとえば鉄骨造や鉄筋コンクリート造の橋梁や建物でも,全体をアーチ形にすれば,より強度の大きいものを比較的少ない材料でつくることができる。アーチダムは,アーチを水平方向につくって背後にある貯水池の水圧を効果的に支える方法である。また,アーチの形を放物線状あるいは双曲線状にすれば,横圧力が減って,アーチ効果をより一層高めることができるので,近代のアーチ構造物はこれらの形をとるものが多い。…
… 終戦とともに荒廃した国土の復興を目的として,50年に〈国土総合開発法〉が制定され,災害の防除,電力の開発,食糧の増産が計られることとなったが,その一環として52年〈電源開発促進法〉が生まれ,以後電力源として発電専用の大ダムが多数つくられた。ダムの形式もこのころから多様化し,日本最初の表面遮水壁型ロックフィルダムとして53年に石淵ダムが,同じく日本最初の中空重力ダムとして57年に井川ダム,アーチダムとして55年に上椎葉ダムが完成した。さらに56年に完成した佐久間ダムでは画期的な大型機械をアメリカから輸入して建設にあたり,大型機械による最新の施工技術を確立,その後多数の100m級の大ダムがつくられていった。…
※「アーチダム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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