翻訳|Isaiah
古代イスラエルの三大預言者の一人。分裂王国時代の前8世紀の最後の3分の1の時期にユダ王国で活動した。おそらくエルサレムの名門の出身であり,周囲に門人サークルがあったと思われる。召命時に神の聖性にふれて贖罪を体験し,神の厳しい審判の言葉を国家と国民に告げる預言任務を直ちに受諾,使命預言の典型を示す。社会批判においては,とくに貴族階級による自由農民からの土地家屋の経済的収奪行為を厳しく批判した。イザヤは人間の政治行為の自律性を高く評価したが,国家の外国政策について,大国への依頼を世界歴史の真の支配者である神に対する不信行為であると断じて,終始批判を行った。前734年に,パレスティナの反アッシリア同盟に参加しなかったユダが同盟軍からの攻撃にさらされたときに,イザヤは国家指導者の最も責任ある行為として神に不動の信頼を置くべきことを国王アハズに要求したが,聞き入れられなかった。また前8世紀の終りに,エジプトに頼って反アッシリア同盟に加わる国王ヒゼキヤの政策をも同じように激しく批判したが,やはり無視された。神の救済の申し出を拒否するダビデ王家に代えて,公平と正義をもって国を治め,戦いを止めて平和をもたらすメシア的王を神が下すという約束をイザヤは語った。この神王メシアの預言は,後代原始キリスト教団において,イエス・キリストの生誕を約束した預言とみなされ,福音書に引用された。
執筆者:並木 浩一
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紀元前8世紀の後半40年余りにわたって、エルサレムで活動した旧約時代最大の預言者の一人。前742年、長くユダ王国の王位にあったウジヤの死んだ年、神の啓示を受け預言活動を始めた。当時すでにアッシリア帝国によって、世界帝国建設のための侵略戦争が開始されていた。イザヤの確信は、歴史を真に支配するのは神ヤーウェであり、静かにヤーウェを信頼するならば、かならずエルサレムは守られるということであった。これはエルサレムに古くから伝わる宗教的伝統であったが、彼はこの立場を激動する時代の現実政治のなかで主張し、とくに外国との軍事同盟を批判した。しかしユダのアハズ王はイザヤに従わず、彼をはじめとするユダの王たちとの対決のなかからイザヤのメシア預言は語られた。
[木田献一]
前8~前7世紀のイスラエルの預言者。南王国(ユダ王国)のウジヤ(アザルヤ)王からマナセ王までの間活動。シリア‐エフライム戦争,北王国(イスラエル王国)の滅亡,アッシリア王センナケリブの来襲などの危機によく国民を指導した。彼の預言を収録したのが旧約聖書の「イザヤ書」である。
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…〈言葉の預言者〉において預言は神と民の間を審判の言葉,救済の言葉をもって引き裂き,また引き裂くことによって新たに結びつけようとしたものといえる。アモスに続くホセア,イザヤ,エレミヤなどの前8~前7世紀の預言者の活動の中心をわれわれはその点に見たい。王国の滅亡後に活動したエゼキエルや第2イザヤといわれる預言者(《イザヤ書》40~55)では預言の性格はかなり変わり,前者には祭司的要素が強く,後者には文筆家の面が強い。…
※「イザヤ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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