イスラム世界で近代化・欧米化が進むとともに、ウンマ(イスラム共同体)の伝統が崩れていくのに反発し、聖典コーランの精神に立ち返って、シャリーア(イスラム法)に基づく本来のイスラム社会への復帰を求める思想および運動。イスラム本源主義、伝統回帰主義、イスラム復興運動ともよばれる。古くは18世紀末にワッハーブ派、19世紀後半にはアフガーニーの改革運動があった。現在の運動もその流れをくむものであるが、予言者ムハンマド(マホメット)が生きた「聖代」への回帰を目ざすところから復古主義的であり、時の政治権力に抗して目的を達成しようとするため過激な行動に走りやすい。
トルコでは原理主義の「福祉党(RP)」が教育、医療、社会福祉などの日常活動に力をいれ、1995年12月の総選挙で第一党となり、連立政権を成立させたが、98年1月に非合法化された。アルジェリアでも90年代に入って、中央・地方政界ともに躍進した同系の「イスラム救国戦線(FIS)」を1992年2月に非合法化、96年11月には全宗教政党を政治活動から排除する憲法改正を国民投票で承認した。また、アフガニスタンでは原理主義勢力「タリバン」が1996年の首都制圧から2001年の政権崩壊まで軍事力によって支配権を確立し、イスラエルやエジプトでも原理主義系の過激派が無差別的な攻撃活動を続けるなど、イスラム圏各国で多様な動きをみせている。なお、イスラム原理主義の英語表記であるIslam FundamentalismのファンダメンタリズムFundamentalismという用語は、元来キリスト教独自のもので、イスラム教、とりわけ過激な政治運動にまで広げて使うことなどは、問題があるとされている。
[奥野保男]
『山内昌之著『「イスラム原理主義」とは何か』(1996・岩波書店)』▽『小杉泰編『イスラームに何がおきているか――現代世界とイスラーム復興』(1996・平凡社)』▽『大塚和夫他編『岩波イスラーム辞典』(2002・岩波書店)』▽『大塚和夫著『イスラム主義とは何か』(岩波新書)』
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[西洋による〈脅威〉の認識]
アフガーニーは列強の侵略に抵抗するイスラム連帯を訴えたが,西洋側ではそれを自分たちに対する〈脅威〉ととらえ,パン・イスラム主義の名称で呼んだ。同様に,20世紀後半の復興現象に対しては,欧米でイスラム原理主義Islamic Fundamentalismの語が用いられるようになったが,これも〈脅威〉の認識によるものである。この語はイスラムの事例をキリスト教における聖書根本主義(ファンダメンタリズム)になぞらえているが,両者にはさほど共通要素はない。…
※「イスラム原理主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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