イソヒヨドリ(英語表記)blue rock thrush
Monticola solitarius

改訂新版 世界大百科事典 「イソヒヨドリ」の意味・わかりやすい解説

イソヒヨドリ
blue rock thrush
Monticola solitarius

スズメ目ヒタキ科の鳥。全長約24cm,体つきツグミに似ており,雄は腹面の赤褐色を除いては全体に暗青色をしている。雌は暗灰色でじみ。ユーラシア大陸南部に細長く分布しており,日本では北海道から九州,沖縄までの各地に生息している。ヨーロッパにすむものでは,雄は全身暗青色をしている。日本では名前のとおり,海岸の磯付近にすんでいるが,大陸では,磯よりは岩地の鳥で山地岩場などにおもにすんでいる。どの地方のものも,地上をピョンピョンはねながら,昆虫やミミズなどの小動物をとって食べる。雄は3~6月の繁殖期に,岩の上にとまってツツ,ピーコー,ピーとすんだ美しい声でさえずる。巣は岩や家屋のすきまなどにつくり,そこに淡青緑色の卵を5~6個産む。イソヒヨドリMonticolaの鳥は,アジア,ヨーロッパ,アフリカに広く分布しており,全部で9種いる。〈ヒヨドリ〉という名がついているが,ヒヨドリ類に近縁ではない。日本ではほかに迷鳥としてヒメイソヒヨM.gularisが記録されている。アジア東部に分布し,イソヒヨドリよりもひとまわり小さい。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イソヒヨドリ」の意味・わかりやすい解説

イソヒヨドリ
Monticola solitarius; blue rock thrush

スズメ目ヒタキ科。全長 21~23cm。雄は頭,胸,背,,尾が明るい藍色で,腹が濃い栗色。雌は背面暗褐色でやや青みを帯び,腹部は灰黄色地に黒褐色の斑がある。ヨーロッパ南部やアフリカ北西部,中央アジア中国北部,ベトナム北部,日本などで繁殖する。繁殖地の多くでは周年にわたって生息する留鳥だが,アフリカ北東部やインド東南アジアに渡って越冬する鳥もいる。日本では各地のおもに海岸部の岩場にすんでいるため,名に「イソ」とあるが,日本以外では内陸樹木の少ない山地,あるいは標高 2000~4000mの高山の岩場にも生息している。日本でも近年では内陸部や都市部に進出している。またヒヨドリと似ていることからその名がつけられたが,類縁関係が近いわけではない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イソヒヨドリ」の意味・わかりやすい解説

イソヒヨドリ
いそひよどり / 磯鵯
blue rock thrush
[学] Monticola solitarius

鳥綱スズメ目ヒタキ科ツグミ亜科の鳥。ヒヨドリとは、ほぼ同じ大きさであること、光線によってはともに黒っぽくみえることで似ているが、類縁関係は遠い。全長約23センチメートル。雄の上面、頭部、胸は暗青色で、腹の色は、日本、朝鮮半島、中国東北部、台湾で繁殖するものは赤褐色、それより西、地中海周辺までユーラシアに細長く分布しているものは上面と同じ暗青色である。雌は全体に暗褐色。日本では、その和名のとおり、磯(いそ)にすみ、大きな岩があり背後に岩壁を控えた海岸に多く、岩の割れ目などに巣をつくり、5~6個の緑青色の卵を産む。海岸の小動物をおもに食べ、モズ型、ヒタキ型の小形猛禽(もうきん)類的な採食法も巧みである。日本以外では海岸にはすまず、山岳地帯の岩場をすみかとする。中国の黄河流域からヨーロッパにかけては、日本の本種に似て腰の白いコシジロイソヒヨドリM. saxatilisが重複して分布する。

[竹下信雄]

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百科事典マイペディア 「イソヒヨドリ」の意味・わかりやすい解説

イソヒヨドリ

ヒタキ科の鳥。翼長12.3cm。ヒヨドリの名がつくが,ヒヨドリとは別の科に属す。東アジアからヨーロッパ南部,北アフリカにかけて分布。日本では九州以北で繁殖し,北のものは冬は南下する。岩礁断崖の多い海岸に生息し,フナムシやトカゲ,種子などを食べる。雄はよい声で鳴く。

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