改訂新版 世界大百科事典 「イタビカズラ」の意味・わかりやすい解説
イタビカズラ
Ficus oxyphylla Miq.
クワ科イチジク属の常緑性つる植物。若い茎には毛があり,また付着根を出して岩壁や他の木の幹をはい登る。そこから,よく分枝する枝を出し,葉を茂らせる。葉は厚く,披針形で少し裏に巻き,葉の表はつやがあり,裏面は粉白色で細脈が顕著に突出する。果囊(かのう)は直径1cmほどで葉腋(ようえき)に1~2個つく。雌雄異株。雄株の果囊には,花柱の短い雌花(虫こぶになる)があり,5月ころ雄花ができる。雌株の果囊には花柱の長い雌花があり,秋遅く紫黒色に熟し種子ができる。本州(新潟県・福島県以南),四国,九州,琉球,中国,インドシナ,アッサム,ブータン,シッキムに分布し,石垣などにまとわりつく。近縁のオオイタビF.pumila L.はより暖かい地方にあり,4cmにもなる大型の果囊をつけ,茎葉や根が中国で薬用にされる。よく似たカンテンイタビF.awkeotsang Makinoは台湾にあり,より大型の果囊をつける。この雌株の果囊を割り,裏返して乾かして集めた小果実を愛玉子(あいぎよくし)といい,しぼり汁から寒天状の清涼食品をつくる。
→イチジク
執筆者:岡本 素治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報