イベルメクチン(読み)いべるめくちん(英語表記)ivermectin

デジタル大辞泉 「イベルメクチン」の意味・読み・例文・類語

イベルメクチン(ivermectin)

マクロライド系抗生物質の一。放線菌一種が産生するエバーメクチン分子構造一部を変えて、効果を高めたもの。家畜犬猫に寄生する線虫駆虫薬として用いられる。疥癬かいせんにも薬効を示す。また、熱帯病オンコセルカ症リンパ系フィラリア症治療・予防薬として広く用いられている。アイバメクチン

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

共同通信ニュース用語解説 「イベルメクチン」の解説

イベルメクチン

寄生虫感染によってアフリカやアジアなどで広がる熱帯病の特効薬の一つ。年間約3億人に投与され、多くの人命を救っている。北里大の大村智おおむら・さとし特別栄誉教授が静岡県のゴルフ場で見つけた土壌細菌が作り出す物質を基に、米製薬会社メルクと共同研究で開発した。副作用がほとんどなく、耐性を持つ寄生虫が現れないのも特長とされる。世界保健機関(WHO)はイベルメクチンにより、オンコセルカ症やリンパ系フィラリア症を2020年代に撲滅できると見込んでいる。(共同)

更新日:

出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イベルメクチン」の意味・わかりやすい解説

イベルメクチン
いべるめくちん
ivermectin

感染症を媒介する線虫など寄生虫の活動の抑制に働く「エバーメクチン」を基に、アメリカの製薬会社によって開発された寄生虫駆除薬。マクロライド系抗生物質である。最初は家畜やイヌなどに対して、フィラリアなどの感染症を媒介する寄生虫を駆除するために用いられていた。その後、人体にも効果があることが確認されたため、感染症に対する特効薬として世界的に普及した。とくに、ブユやカが媒介し、線虫によって引き起こされるオンコセルカ症やリンパ系フィラリア症(象皮病)など、WHO(世界保健機関)によって「顧みられない熱帯病」に指定されている寄生虫による感染症に著効を示す。一般にはヒゼンダニが媒介し急性のかゆみを伴う疥癬(かいせん)の特効薬としても知られる。

[編集部 2016年5月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵mini 「イベルメクチン」の解説

イベルメクチン

米国の製薬会社メルク・アンド・カンパニーが製造している寄生虫駆除薬。商品名は「メクチザン」。動物の寄生虫の駆除のほか、「河川盲目症(オンコセルカ症)」など寄生虫によって引き起こされる人間の感染症にも効果が認められている。同社と日本の有機化学者・大村智が、同氏の発見した化合物「エバーメクチン」を改良して開発し、1981年、家畜やペットの寄生虫駆除薬として製品化した。その後の臨床研究で人間の感染症にも有効なことが判明し、87年よりメルク社が世界保健機関(WHO)を通じて蔓延地に無償提供を行っている。

(2015-10-7)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android