化学辞典 第2版 「インゴルド」の解説
インゴルド
インゴルド
Ingold, Christopher Kerk
イギリスの化学者.Southamptonのハートリー・ユニバーシティ・カレッジで化学と物理学を学ぶ.1918年卒業後Cassel Cyanamid Co.の研究者となる.1920年科学技術インペリアル・カレッジの講師,1924年リーズ大学の教授となる.1930年からR. Robinson(ロビンソン)の後任としてロンドンのユニバーシティ・カレッジの教授になり,1961年に名誉教授として引退するまで在任した.化学上のおもな成果は,1953年刊行の古典的名著Structure and Mechanism in Organic Chemistry(有機化学の構造と反応機構)にまとめられている.第四級アンモニウム塩のホフマン分解の研究から,一分子反応と二分子反応の区別を脱離反応と置換反応において明らかにし,メソメリズム,プロトトロピーの概念を提唱して有機化学反応の電子論に貢献した.分子が二通りの電子構造をもちうるならば,通常の状態は両方のまざり合った状態になることは化学結合の長さの測定で確証された.Royal Medal(1952年),Faraday Medal(1962年)などを受賞し,1958年にはナイトの称号を受けた.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報