インシュリン

百科事典マイペディアの解説

インシュリン

医学ではインスリンという。脊椎動物の膵臓(すいぞう)内にあるランゲルハンス島より分泌されるペプチドホルモン。1921年,カナダのバンティングマクラウドベストの協力を得て犬の膵臓からはじめてインシュリンの抽出に成功した。全アミノ酸の結合順序はF.サンガーにより決定されたが,種により鎖中の特定個所の結合残基が異なる。インシュリンの分泌は血液中のグルコース濃度に支配され,血糖値が上昇すると分泌量が増え,血糖値は下がる。様々な物質代謝の調節にかかわり,組織におけるグルコースの酸化やそのグリコーゲン,脂肪への転換やタンパク質生合成を促進する。インシュリンの作用は標的となる細胞の細胞膜にあるインシュリン受容体との特異的な結合を通じて起きる。糖尿病の治療に用いられており,また統合失調症(精神分裂病)のショック療法剤として使用される。
→関連項目アドレナリンインシュリノーマサンガー人工膵島膵臓低血糖症バンティングホルモン療法マクラウド

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世界大百科事典 第2版の解説

インシュリン【insulin】

インスリンともいう。膵臓に散在する内分泌組織,ランゲルハンス島β細胞で生合成され,分泌されるホルモン。名は島insulaにちなむ。肝臓,筋肉,脂肪組織などに作用し,主として補給栄養系の体内蓄積同化を促進し,グルカゴン,成長ホルモン,コルチゾールエピネフリンなどの異化作用と拮抗して代謝の調節をつかさどり,結果として血糖を低下させる。 インシュリンは1921年,バンティングF.G.BantingとベストC.H.Bestによって,膵臓の抽出物中から,血糖降下物質として見いだされた。

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大辞林 第三版の解説

インシュリン【insulin】

脊椎動物の膵臓すいぞうのランゲルハンス島から分泌されるホルモン。組織におけるブドウ糖の取り込み・消費を高め、肝臓でのブドウ糖からグリコーゲンへの転換を促進することによって血糖値を低下させるはたらきがあるので、糖尿病の治療に用いられる。インスリン。

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世界大百科事典内のインシュリンの言及

【遺伝子工学】より

…とくに新製品開発に意欲をもつ先進国の医薬品工業,化学工業,発酵工業において研究開発が盛んに行われている。 たとえば糖尿病の治療に用いられるインシュリンは膵臓(すいぞう)でつくられるホルモンであるが,医薬として大量に生産するのは容易ではない。そこで大腸菌の中で増えるプラスミドという環状DNAにインシュリンの遺伝子を人工的に組み込み(組換え体DNA),大腸菌にインシュリンを作る能力を与えるということが考えられ,実際に成功した。…

【血糖】より

… 60~160mg/100mlという血糖の変動幅の下限は,グルコースを主たるエネルギー源とする脳が機能しなくなる濃度であり,上限は後述の腎臓のグルコース再吸収能の及ばなくなる濃度である。このような生体機能の正常化を期待できる範囲につねに血糖濃度を保持する仕事は主として肝臓で行われ,血糖濃度に呼応して膵臓のランゲルハンス島から分泌されるインシュリンの働きによる。
[血糖の需給関係]
 血中グルコースの最大需要者である脳は,1日に144g,1分間100mgの割合でグルコースをたえず消費し,赤血球も1日に36g,1分間25mgをたえず消費する。…

【食欲】より

…十分に食べたら満腹感が発生し,摂食行動は停止する。食欲発生に関与する身体内部環境情報としては血糖値(血中ブドウ糖濃度で,生体にとって最も重要なエネルギー源),インシュリンなどの濃度減少や遊離脂肪酸,アドレナリン,ノルアドレナリン,グルカゴン,ACTH(副腎皮質刺激ホルモン),成長ホルモンなどの濃度上昇,胃の空腹収縮などがある。満腹感の発生に関与する内部環境情報としては,血中各物質の濃度が空腹時とは逆方向に変化することや食物消化時の特殊力源作用による体温上昇,胃壁の伸展による幽門部付近の動き受容器の刺激などがある。…

【糖尿病】より

…膵臓ホルモン,なかでもインシュリンの作用不全の結果生じる代謝異常状態をいう。代謝異常とは,栄養物の分解により生体の活動を支えるエネルギーを産生し供給する過程が円滑に運行されないことである。…

【バンティング】より

…オンタリオ州ロンドンで開業,地元のウェスタン大学で解剖学と生理学を講じた。糖尿病に注目し,21年トロント大学生理学教授マクラウドJohn Macleod(1876‐1935)の協力で実験室と共同研究者ベストCharles H.Best(1899‐1978)を得て,膵臓のランゲルハンス島から分泌されるインシュリンを発見,これを糖尿病治療に用いて卓効を示した。23年マクラウドとともにカナダで初めてノーベル生理・医学賞を受賞した。…

【ホルモン】より

…しかし,魚類から鳥類までの動物では独立の組織塊として存在する。(6)膵臓ホルモン インシュリン,グルカゴンの二つがある。前者はB細胞でプロインシュリンとして生産される。…

※「インシュリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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