翻訳|intern
専門職につく前に研修施設で実施修練を行う者をいう。
独立して診療できる医師になる前の課程として、医学校を卒業したのち1~2年間、病院において先輩医師の指導のもとに、診療の実地修練を行う者をいう。日本では、第二次世界大戦後の1946年(昭和21)よりアメリカ占領軍の勧告でこの修練が義務づけられ、1年間のインターン生活を送らなければ、医師国家試験の受験資格が与えられないことになった。しかし、研修体制の整備が進まず、身分上の処遇についても不安定であり、病院の医療体制ともなじまないなどの理由で、インターンたちに不満が高まり、反対運動が激化したので、結局1968年に廃止された。現在ではインターン制度にかわるものとして医師臨床研修制度がある。この制度は2004年(平成16)に導入された。内容は医師なら誰でも救命処置をはじめ、幅広い臨床能力をつけるべきだという理念のもと、2年間の研修が義務づけられた。しかし現実的には医療現場が混乱するなど多くの問題が報告されており、2010年には制度の見直しが行われることになっている。
アメリカでは、医学校卒業後に国家試験を受けて、1~2年のインターンを終えてから、より専門的な研修を行うレジデント(病棟医)生活を数年送り、専門医試験を受けて専門医になるコースが一般的である。インターンとは、内にいる者、つまり住み込みを意味する。また、インターンはフランス語読みではアンテルヌというが、かつてフランスでは、医学校に入学後2年目にインターンの選抜試験があり、合格者は給与を受けながら入院患者の診療にあたり、学習することができた。それ以外の医学生はエキステルヌとよばれ、講義だけで卒業するので、両者の間では力量に大きな差がつくこととなった。ただし、現在は医学生すべてが病院実習を受けられる。
[中川米造・中川 晶]
美容師、理容師になろうとする者にもインターンの制度が設けられていた。厚生大臣(現厚生労働大臣)の指定した養成施設において、所定の教育課程を修了した者は、インターン(実地修練)を行うことができ、インターンを行おうとする場合には、美容所(理容所)の所在地の保健所長を経由して、都道府県知事に届け出ることとなっていた。インターンには1年を必要とし、修練日数は280日以上が基準とされ、定められた期間のインターンを修了した者は、都道府県知事の行う美容師(理容師)国家試験を受けることができた。しかし、1998年(平成10)4月1日より美容師(理容師)法改正に基づき、養成施設(理容・美容学校など)が一年制から二年制へと移行した結果、国家試験は在学中に受験し、卒業後に厚生労働大臣より免許が交付されることとなり、インターン制度は、経過措置を経たのち、2002年3月31日をもって廃止されることとなった。
[横田富佐子]
ある職業について,その資格を最終的に取得するのに先だって実地訓練を課することがある。そうした制度をインターンシップinternshipといい,その研修生をインターンと呼ぶ。一般には医師の場合を指して用いられることが多いが,同様の制度は美容師,理容師の場合にも見られる。医師の場合,第2次大戦後アメリカにならって,大学医学部卒業後1年間,大学病院や認定された教育病院で,臨床の実地修練を積んだのちに,はじめて国家試験の受験資格が与えられる制度が始まった。しかし,外国の場合原則として住込みで,ある程度の給与も保証される場合が多いのに対して,日本では,この期間中は無給で身分も保証されておらず,そのうえ研修条件も不備であったため,発足当初からインターン制度に対する不満が存在していた。大学紛争が激化した1968年5月,医師法改正によってこの制度は廃止され,戦前と同様,大学医学部卒業後,ただちに国家試験を受験できるよう改正された。現在,医師免許状を得てから2年間,大学病院や厚生省指定の病院で研修を受けた者を登録する臨床研修医制度が行われているが,義務制ではない。美容師,理容師の場合には,厚生省の指定する養成施設を卒業し,さらに1年以上の実地修練を受けることが,資格試験を受験するための前提条件とされているが,この実地修練の期間がインターンに相当する。教員免許状の取得に関しても,インターン制度に相当する〈試補制度〉を設けるべきだとする意見が出されたことがあったが,実現には至らなかった。
執筆者:潮木 守一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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