イン・メモリアム(読み)いんめもりあむ(英語表記)In Memoriam A. H. H.

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イン・メモリアム」の意味・わかりやすい解説

イン・メモリアム
いんめもりあむ
In Memoriam A. H. H.

イギリス詩人テニソン長詩。1850年刊。1833年に22歳で夭折(ようせつ)した友人A・H・ハラムArthur Henry Hallam(1811―1833)を追憶して、折に触れ書きつづった多くの短い叙情詩を、のちに一つの長詩にまとめたもの。詩人の魂が最初の悲哀絶望から徐々に抜け出して人間の永生を信じ、友の魂との交わりを経て、幸福と希望と神の愛への信仰に導かれるという「魂の経路」を描く。各節では折々の思考感情がときに彼特有の自然描写と結び付き、全体として美しい霊魂不滅の歌となっている。

戸田 基]

『入江直祐訳『イン・メモリアム』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イン・メモリアム」の意味・わかりやすい解説

イン・メモリアム
In Memoriam A. H. H.

イギリスの詩人 A.テニソンの詩。「A. H. H.を記念して」の意味。 1833年から執筆,50年完成,同年刊。 33年 22歳でウィーンに客死した親友 A. H.ハラムの死をいたみ,亡き友に対する愛惜の情の変化を,長い期間にわたって歌った追悼詩の連作である。大きな損失に直面した「魂の軌跡」の記録であり,死者に対して残された者がもつ喪失感,肉体をそなえた存在であってほしいという願いが,徐々に精神の内部で所有しているという確信となり,さらに神と人間に対する大きな愛へと変化する過程を歌っている。エピローグは妹セシリアの祝婚歌で,連作全体の明るい結びとなる。詩形は弱強4歩格4行,abbaと押韻するスタンザを連ねたもの。連続的ではあるが互いに独立した哲学的瞑想を盛る器として,この詩形のもつ可能性が十分に発揮されている。

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