改訂新版 世界大百科事典 「イージーライダー」の意味・わかりやすい解説
イージー・ライダー
Easy Rider
アメリカ映画(1969製作)。ロック・ミュージックと麻薬とヒッピーとベトナム反戦という1960年代末期の〈カウンターカルチャー(対抗文化)〉の象徴として神格化された,いわゆる〈カルト・ムービー(偶像映画)〉。反逆する青春の証明としての〈バイク・フィルム(オートバイ映画)〉《ワイルド・エンジェル》(1966),LSD映画《白昼の幻想》(1967)に次ぐピーター・フォンダ主演の画期的な青春映画で,この映画の製作も担当したフォンダと,監督・共演のデニス・ホッパー(《理由なき反抗》やバイク・フィルム《続地獄の天使》(1967)に出演している)と,BBSという独立プロから製作に加わったバート・シュナイダーの3人がなけなしの金をはたいて自主製作した。〈自由を求めて旅立ちながら深南部のレッドネック(農夫)に虐殺されるオートバイ乗りの主人公たちの根無し草的な生き方と社会からの疎外をわが身に重ねて共感した若い観客たちの想像力をとらえ〉(R.スクラー評)大ヒット,製作費(わずか37万4000ドル)の25倍以上もの配収を上げた。この後,低額予算の同種の〈新しい〉風俗青春映画が続々つくられ,一時は〈ニュー・シネマ〉がハリウッド体制を崩壊させるかのごとき幻想を与えるまでに至ったが,これらの亜流作品の大半は商売にならなかったといわれる。〈イージー・ライダー〉とはアメリカ南部のスラングで,有名な《メンフィス・ブルース》の中に使われており,ぽん引き,〈ひも〉の意。劇画のヒーロー(キャプテン・アメリカ)や西部劇のヒーロー(ワイアット・アープとバッファロー・ビルまたはビリー・ザ・キッド)の名をいただいたこの映画の2人の主人公,キャプテン・アメリカと名乗るワイアット(P.フォンダ)とビリー(D.ホッパー)が女ならぬ麻薬に寄食しているところからつけられた皮肉な題名といわれる。脚本に〈ブラック・ユーモア〉作家テリー・サザンが加わっている。
→青春映画
執筆者:宇田川 幸洋+山田 宏一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報