ウェゲナー肉芽腫症(読み)ウェゲナーにくげしゅしょう(英語表記)Wegener's granulomatosis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ウェゲナー肉芽腫症
ウェゲナーにくげしゅしょう
Wegener's granulomatosis

ドイツの病理学者 F.ウェゲナーによって 1936年に指摘された,20~30歳代に好発する多発性結節動脈炎に似た疾患上気道 (副鼻腔,咽頭,喉頭,気管,気管支など) に壊死性肉芽腫瘍が発生するほか,全身性ことに肺の多発性血管炎,あるいは肉芽腫瘍の糸球体腎炎などを特徴としているが,病因はまだよくわかっていない。膠原病に属する疾患ではないかという見解もある。上気道が侵されないタイプのものも発見されていて病態は複雑。まれな病気であるが,経過はよくない。

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デジタル大辞泉の解説

ウェゲナー‐にくがしゅしょう〔‐ニクガシユシヤウ〕【ウェゲナー肉芽腫症】

Wegener's granulomatosis》副鼻腔炎(蓄膿(ちくのう)症)のような症状に引き続き、肺炎・腎炎・血管炎など多彩な異常をきたす進行性の腫瘍(しゅよう)性疾患。予後不良の疾患とされていたが、早期に免疫抑制剤・副腎皮質ステロイド剤などによる免疫抑制療法を行うことで予後が改善し、寛解する場合もある。
[補説]医学では肉芽腫は「にくげしゅ」という。

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家庭医学館の解説

うぇげなーにくげしゅしょう【ウェゲナー肉芽腫症 Wegener Granulomatosis】

[どんな病気か]
 ウェジナー肉芽腫症ともいい、血管炎(けっかんえん)の1つです。鼻腔(びくう)などの上気道(じょうきどう)、肺などの下気道(かきどう)に、血管の炎症により血管が腫(は)れたり閉塞(へいそく)し、また、炎症をおこした細胞やその破片によって肉芽腫(にくげしゅ)ができる病気です。
 血管炎が腎臓(じんぞう)をおかすと腎炎(じんえん)をおこし、末梢神経(まっしょうしんけい)では血の巡りが悪くなり末梢神経障害がおこったりします。
 比較的まれな病気で、40~50歳代の人にみられ、患者数に男女差はありません。
 この病気は、厚労省の特定疾患(とくていしっかん)(難病(なんびょう))に指定されており、医療費の大部分は公費から補助されます。
[症状]
 発熱や関節痛(かんせつつう)のほか、初めは膿(うみ)のような鼻汁(びじゅう)、鼻づまり、目の充血、耳だれ、難聴、せき、血のまじったたんなどがみられます。
 腎臓がおかされると、尿にたんぱくが出たり、さらに進行すると、腎臓の機能が低下して、尿毒症(にょうどくしょう)(「尿毒症」)になることもあります。
[原因]
 なぜ血管炎がおこるのか、原因は不明です。しかし、炎症にかかわる血中の好中球(こうちゅうきゅう)という細胞の細胞質を抗原(こうげん)とする抗体(こうたい)(抗好中球細胞質抗体(こうこうちゅうきゅうさいぼうしつこうたい))が、この病気の患者さんの血中にだけみられるので、その抗体が発病に関係あると考えられます。
 また、なんらかの感染症が発病の引き金になっている可能性も推測されています。
[検査と診断]
 上気道と下気道の炎症による症状と腎炎(じんえん)があり、血中に抗好中球細胞質抗体がみられると、この病気が強く疑われます。
 診断を確定するには、肺、鼻、腎臓などの組織の一部をとって顕微鏡で調べ(生検(せいけん))、この病気に特有の組織の変化を見つけなければなりません。
[治療]
 ふつうは、炎症を抑えるステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)薬と免疫抑制薬であるシクロホスファミドを用いて治療します。軽症の場合、抗菌薬のST合剤が有効な場合もあります。
[日常生活の注意]
 急性期には安静が必要ですが、軽快すれば、ふつうに日常生活を送ることができます。

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六訂版 家庭医学大全科の解説

ウェゲナー肉芽腫症
ウェゲナーにくげしゅしょう
Wegener's granulomatosis
(膠原病と原因不明の全身疾患)

どんな病気か

 鼻と肺の肉芽腫、壊死性(えしせい)半月体糸球体腎炎が認められる全身の血管炎です。1939年にドイツのウェゲナーによって報告されました。略称でWGと呼ばれています。

原因は何か

 免疫の異常および上気道感染やブドウ球菌の関与などが考えられていますが、原因はわかりません。

症状の現れ方

 発熱、全身倦怠感(けんたいかん)、食欲不振などの炎症症状と、①鼻、眼、耳、咽喉頭などの上気道、②肺、③腎の3つの臓器の炎症による症状が順次、または同時に起こります。

検査と診断

 血清中のC(PR­3)­ANCA(抗好中球(こうちゅうきゅう)細胞質抗体)が陽性であること、組織の生検で肉芽腫性血管炎が証明されること、および臨床症状で診断されます。ANCAが陰性であること、典型的な組織所見が得られないことも多く報告されています。

治療の方法

 早期発見・早期治療が重要です。初期に、免疫抑制薬(シクロホスファミド:エンドキサン、アザチオプリン:イムラン)、副腎皮質ステロイドを主体とする免疫抑制療法を行うことにより、病気を落ち着いた状態(寛解(かんかい))へ導くことが可能です。その際、「全身型WG」と「限局型WG」で、使用する免疫抑制薬の量を調整して治療します。日本では「限局型WG」が多いので注意する必要があります。

 厚生労働省研究班の報告では、10年間での死亡率は21%です。治療法の向上から死亡率の低下が認められています。

病気に気づいたらどうする

 専門医(耳鼻科、膠原病内科、腎臓内科)の指示に従い、治療を行うことをすすめます。上気道の細菌感染症に対する対策が重要です。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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