ウォーターフットプリント(読み)うぉーたーふっとぷりんと(英語表記)water footprint of products

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ウォーターフットプリント
うぉーたーふっとぷりんと
water footprint of products

農作物を含む商品のライフサイクル(計画段階から原材料・部品調達、栽培・生産、製造・加工、運搬・配送、消費・利用、廃棄・リサイクル段階まで)の全過程で使った水の量を表す指標。英語の頭文字をとってWFPまたは単にWFと略されることもある。和訳して「水の足跡」ともよばれる。全過程で使った水の量を、農業園芸・林業で活用する降水・土壌水(グリーン・ウォーター)、産業や家庭で利用する河川・地下水(ブルー・ウォーター)、生活排水や製品生産などに伴う汚染水を一定の環境基準未満に希釈するために必要となる水(グレー・ウォーター)の三つに分類し、季節や地域などの使用条件を加味して数値化する。リットル単位で表示し、数値が小さいほど環境負荷が小さいことを意味する。世界的に不足する水資源への負荷を商品ごとに一目でわかるように表示し、消費者に環境負荷の少ない作物や商品を選ぶ機会を設け、水資源保護につなげるねらいがある。生産者にとっても、より水使用量の少ない原料や工程を選ぶことで、省資源化や生産過程の改善のきっかけになる。類似指標に、ライフサイクル全体で排出した温室効果ガス量を示すカーボンフットプリントや、人間活動の環境への負荷を面積で示すエコロジカルフットプリントがある。

 ウォーターフットプリントはエコロジカルフットプリントの概念を発展させ、オランダにある国連教育科学文化機関(ユネスコ)水教育研究所(IHE)のフックストラArjen Y. Hoekstra(1967―2019)らが2002年に提唱した概念である。世界各国で、食品、日用品、医療・電機製品など多くの商品がウォーターフットプリントを表示しており、行政も表示促進策に取り組んでいる。投資家に対して環境に優しい企業であることをアピールするため、事業全体のウォーターフットプリントを試算・公表する企業も増えている。ヨーロッパを中心に、水資源保護、治水防災、流域管理などのため表示や活用を義務化する動きも広がっている。ただ、ISO(国際標準化機構)が国際規格を示したが、各国間で計算方法について合意できておらず、企業の自主性に任され、基準や認証が国や企業ごとにまちまちとなっている。

[矢野 武 2022年10月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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