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ウォーラーステイン ウォーラーステイン Immanuel Wallerstein

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デジタル大辞泉の解説

ウォーラーステイン(Immanuel Wallerstein)

[1930~ ]米国の政治社会学者。近現代の世界システムを、西欧を中心とした単一のグローバル資本主義分業体制の展開過程としてとらえた。著「近代世界システム」など。

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大辞林 第三版の解説

ウォーラーステイン【Immanuel Wallerstein】

1930~ ) アメリカの歴史家。マルクスとフェルナン=ブローデルの影響下に、独創的な近代世界システム論を提唱。著「近代世界システム」など。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ウォーラーステイン
うぉーらーすていん
Immanuel Wallerstein
(1930― )

アメリカの社会学者。ニューヨーク生まれ。1947年コロンビア大学入学、1951年修士号を取得。1958年から1971年まで同校の教壇に立ち、1959年に博士号を得ている。1973年に米国アフリカ学会の会長に就任。1971年からカナダモントリオールマギル大学に所属した後、1976年よりニューヨーク州立大学ビンガムトン校フェルナン・ブローデル・センター所長。1994~1999国際社会学会会長。1999年からはエール大学シニア・リサーチサイエンティスト
 1960年代、アフリカ諸国の社会学研究を行っていたウォーラーステインは、独立を遂げたアフリカ諸国が、深刻な経済危機と政治的な混乱に直面するのを目撃した。低開発国が先進諸国と同様の軌跡をたどって発展するという「発展段階説」ではこの状況を説明できないと考え、トランスナショナルな歴史学を構想したフェルナン・ブローデルの影響のもと、諸国家を内包した資本主義システムが、世界的規模の構造格差を再生産するという世界システムの理論構築に取り組む。この理論は、15世紀以降の世界経済システムの展開を記述する『近代世界システム』The Modern World-System1~3(1974、1980、1989)に結実した。ウォーラーステインは、これまでの経済システムは、理念的にミニシステム、帝国、世界経済の3種に分類できると考える。ミニシステムとは、原始的な村落共同体などの、互酬(贈与に対して贈与で応じること)に基づいて統合された閉鎖的システムをさす。一方、帝国は政治的に統合され、租税の徴収と分配を主要な経済メカニズムとする。その典型を古代の諸帝国や中国王朝などにみることができるが、それらの帝国は官僚や軍隊など統治のためのコストが膨大となって崩壊した。それに対し、現在世界を覆っている世界経済、すなわち資本主義は、限定された領土を主権国家が統治するという政治的多元性と、経済的な一元性を特徴として、相対的に安価なコストで持続してきた。資本主義は、15世紀後半から17世紀前半までの間のいずれかの時期に西ヨーロッパで誕生したと考えられるが、その後、安価な労働力と資源・市場を求めて他の諸地域を包摂し、ついにはほぼ世界全域を組み込むに至った。世界経済では、国際的な分業体制が形成され、経済的余剰の大半を掌握する中核centerと、経済的に従属する周辺peripheryとの格差が増大する。中核での工場生産の拡大が、周辺でのプランテーションを進展させるというように、中核は他地域を構造的に周辺化することによって利益を得る。ときには、中核地域の一国が生産・商業・金融で圧倒的な優位(ヘゲモニー)を獲得することがあり、その例として17世紀のオランダ、19世紀のイギリス、第二次世界大戦から1970年代までのアメリカ合衆国をあげている。またシステムには中核への参入をねらって苛烈(かれつ)な競争を行う準周辺semi-periphery諸国が存在し、システム内部での組み替えを行う。
 『近代世界システム』より後になると、国家や文化的闘争といった経済外領域を重視するようになるが、それによると国家のおもな役割は、無限の資本蓄積という資本主義の要請を可能にする政治的・軍事的諸力の配備であるとされる。一方、フランス革命以降、システム内部における国内的・国際的不平等への抗議として、共産主義と民族解放運動という反システム運動が興隆したが、いずれもが国家権力の奪取に成功したのち、逆にシステムを強化することになった。というのも、主権国家といえども、資本主義に基づくインターステート・システムにのっとって行動せざるをえず、システムの作動を止めることはできないからである。ただし1968年の世界的規模での反体制運動を象徴的な起点とする新たな反システム運動は、旧来の運動と資本主義システムの全体に対するより根本的な異議申し立てであるとされる。
 巨視的な分析によって資本主義の歴史記述を行ってきたが、1980年代以降の著作では、史的システムとしての資本主義は臨界を迎えたと述べるようになった。理由としては、資本蓄積を可能にする外部がもう存在しないこと、自然環境保全のコストが飛躍的に増大していること、民主化の進展によって、平等を求める圧力が世界的に高まっていることなどがあげられる。次にきたる世界的システムが、資本主義より相対的によい(格差の少ない)ものになるか、より悪いものになるかは予測不可能だが、転換期にこそ人間はよいシステムを構築することができると述べ、そのための努力を訴えている。世界システム論の骨格を簡潔に説明した著作として『史的システムとしての資本主義』Historical Capitalism with Capitalist Civilization(1983)、社会科学パラダイムの刷新を提唱する『脱=社会学』Unthinking Social Science(1991)、システム移行期の見通しを語った『ユートピスティクス』Utopistics, or, Historical Choices of the Twenty-first Century(1998)などがある。[倉数 茂]
『川北稔訳『近代世界システム――農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立』(1981・岩波書店) ▽川北稔訳『近代世界システム1600~1750――重商主義と「ヨーロッパ世界経済」の凝集』(1993・名古屋大学出版会) ▽本多健吉・高橋章監訳『脱=社会科学――19世紀パラダイムの限界』(1993・藤原書店) ▽川北稔訳『近代世界システム1730~1840s――大西洋革命の時代』(1997・名古屋大学出版会) ▽川北稔訳『史的システムとしての資本主義』(1997・岩波書店) ▽松岡利道訳『ユートピスティクス――21世紀の歴史的選択』(1999・藤原書店)』

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