ある民族が他民族の抑圧下に置かれている場合、あるいは侵略を受けた場合、民族という名において抑圧・侵略などの苦難から解放されようとする運動。したがって、苦難の種類・程度によって、および民族意識の内容、さらに国際的環境などによって、その運動形態はさまざまであり、また、その国際的役割も異なっている。
18世紀末に現れたナショナリズムは、民族解放運動の面をもっている。民族の独立や統一を求める運動が、民族解放という呼称をもったのは、ナポレオンの侵略戦争に対する諸民族の解放戦争に始まる。しかし、この時代のナショナリズムは、民族の目標を独立あるいは統一に置き、民族を国家に編成することを課題とするものであった。その意味では、国際社会全体の抑圧・被抑圧の関係からの解放を課題とするものではなかった。19世紀の後半、いわゆる帝国主義時代が開幕すると、全世界的に従属的諸地域の範囲が広まり、反帝国主義的な民族運動もまた世界大に広まった。このような民族解放運動の展開と資本主義諸国の社会革命運動との関係が問題とされた。この点で、レーニンなどは両者の関係についてだれよりも整合的な理論をたてたが、しかし、その理論と、ロシア革命後の社会主義国とアジア諸地域の民族運動との関係の実態との間には、大きい矛盾があり、それぞれの歩みは調和的ではなかった。
第二次世界大戦以後、アジア・アフリカなどで民族運動が高まり、ほとんどすべての植民地が独立した。この経過において運動主体の側では民族の解放を名のったものも多い。民族解放戦線という呼称は、第二次大戦中の枢軸諸国の侵略を受けた諸国の抵抗組織に多くみられたが、アルジェリアの民族解放戦線など第二次大戦以後の独立闘争組織にも民族解放戦線の名を冠するものが多数ある。これらのなかでもっとも組織性と戦闘性を発揮したのはベトナムにおける民族解放戦線である。ベトナム戦争以後も第三世界には、形式的には国家として独立しているが、なお大国からの圧迫や侵略に苦しむ民族が少なくなく、民族解放運動が依然課題となっている。しかし、最近では民族解放の問題は、南北問題とよばれる国際的な経済格差の問題と絡んで、複雑な様相をみせている。
[斉藤 孝]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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