ウラジロ(英語表記)Gleichenia japonica Spr.

改訂新版 世界大百科事典 「ウラジロ」の意味・わかりやすい解説

ウラジロ (裏白)
Gleichenia japonica Spr.

日当りのよい,山地の乾燥した斜面に群落をつくることの多いシダ植物。ウラジロ科の常緑性草本。根茎は地中をはい,鱗片をつける。暖地のものでは,葉は数対の羽片を出し,2mを超すこともあるが,本州中部では,羽片がせいぜい2~3対の個体からなる群落も多い。羽片の形は長楕円状披針形,2回羽状に深裂する。葉の裏面には脱落性の星状毛があり,蠟がたまって白くなるのでウラジロ(裏白)の名がついた。胞子囊群には2~4個の大きな胞子囊があり,包膜はないが側糸がある。福島,新潟以西の本州の暖帯と四国,九州,琉球に分布し,暖地に多く,さらに朝鮮南部,中国中南部から,インドシナ,インドに分布している。正月のしめ縄に,ユズリハミカンなどといっしょに飾る習慣は,ウラジロの分布域から起こった。硬質の葉柄は,かごなどの細工に利用される。

シダ類のうちで最も原始的な科の一つで,化石は石炭紀上部から知られている。3属約130種が全世界の熱帯亜熱帯に分布している。日本には3種あり,マツタケに添えるコシダDicranopteris linearis(Burm.f.)Underw.に対してウラジロのことをオオシダ(大羊歯)と呼ぶ地方もある。熱帯には羽片が何十対もあり,樹上に十数mもはいあがる種があるが,その場合でも茎は地中にはう根茎だけで,地上部が1枚の葉に相当し,最も大きな葉の例である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウラジロ」の意味・わかりやすい解説

ウラジロ
うらじろ / 裏白
里白
Umbrella ferns
[学] Gleichenia japonica Spr.

ウラジロ科の常緑性の大形のシダ。日本の東北地方南部を北限とし、南はフィリピンまで分布する。地中を長くほふくする地下茎をもち、そこから直立する葉の中軸は、1対の羽片を出すたびにいったん成長を止めるという独特の伸び方をする。羽片は長楕円(ちょうだえん)形で、表面はつやのある緑色。小羽片はさらに羽状に深裂する。胞子嚢(ほうしのう)群は中脈と縁の中間につき、包膜はない。暖地に生えるウラジロは4、5対の羽片をつけ、高さ2メートルを超える。葉の裏面が白色を帯びるため、この名がある。また一般に「シダ」という場合は、ウラジロをさすことが多い。九州ではヘゴとよぶ地方が多く、オオシダ、モロムキ、ホナガなどの名もある。常緑性の草木には呪力(じゅりょく)、霊力があると、古代から信じられていたものが多いが、ウラジロもこうした植物の一つで、羽片がしだれることを「歯垂(しだ)る」にあて、さらに「齢垂る」にかけて長寿の意味をももたせ、正月を祝う注連(しめ)飾りに使われてきた。また西日本では、美しい光沢のある褐色の葉柄を編んでシダ細工をする。マレーシアでもこの類の葉柄や地下茎を使って部屋の内壁や椅子(いす)をつくる。民間薬としては、冬季に全草をとって乾燥させ、これを煎(せん)じて服用する。腹膜炎や浮腫(ふしゅ)に効くという。

 近縁種のコシダは海辺の明るい丘陵地に群生する。ウラジロより小形だが、中軸から分枝した羽片はさらに二またになる。中国では全草を解熱、利尿、止血などの薬用として利用し、オーストラリア先住民は地下茎から採ったデンプンを食用とする。九州以南にまれに産するカネコシダも近縁種の一つであるが、葉の裏は白くない。佐賀県武雄(たけお)市黒髪山のカネコシダは国指定の天然記念物。かつて山里の子供たちはこのたぐいの葉をグライダーに見立て、谷を渡る風に放って遊んだという。

[栗田子郎]


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百科事典マイペディア 「ウラジロ」の意味・わかりやすい解説

ウラジロ

ヤマクサなどとも。ウラジロ科の常緑のシダ。本州南部〜沖縄に分布。崖や明るい林下などに多く,よく茂って林の害になる。太い地下茎が長くはう。葉はふつう2m以下,茶色の長い葉柄をもち,休止芽を囲んで左右に開く。葉裏は脱落性の星状毛があり,蝋がたまり白くなる。葉は正月の飾りに,葉柄は箸(はし),編んで盆にされる。
→関連項目シダ(羊歯)植物

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