ウルシオール

精選版 日本国語大辞典 「ウルシオール」の意味・読み・例文・類語

ウルシオール

〘名〙 (urushiol) 漆の主成分。フェノール誘導体の一つで、液状有機溶剤に溶ける。明治四〇年(一九〇七真島利行が漆から分離して発見。皮膚につくとかぶれを起こす。

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デジタル大辞泉 「ウルシオール」の意味・読み・例文・類語

ウルシオール(urushiol)

日本産および中国産の漆の主成分。フェノール誘導体の一。皮膚にかぶれを起こさせる。明治39年(1906)三山喜三郎命名、真島利行が構造決定。

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化学辞典 第2版 「ウルシオール」の解説

ウルシオール
ウルシオール
urushiol

ウルシ科ウルシRhus vernicifera樹皮から渗出する生漆の成分で,ペンタデシルカテコール骨格をもつ数種類の物質混合物.皮膚に触れると漆性皮膚炎を起こす黄色の液体沸点210~220 ℃(5.3×10 Pa).[CAS 53237-59-5].以下の4種類が単離確認されている.(1)3-ペンタデシル体:針状晶.融点59~60 ℃.(2)8′,9′-ジデヒドロ(Z)体:淡黄色油.1.5115.(3)8′,9′,11′,12′-テトラデヒドロ(Z,Z)体:主成分でトキシコデンドリンともいう.(4)8′,9′,11′,12′,14′,15′(Z,Z,Z)ヘキサデヒドロ体:油状1.5250.

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改訂新版 世界大百科事典 「ウルシオール」の意味・わかりやすい解説

ウルシオール
urushiol

ウルシの外皮に切傷をつけ,流出する液,すなわち生漆(きうるし)を精製したもので,日本産ウルシの主成分である。生漆にはそのほかに水,ゴム質,含窒素化合物などが含まれている。粘度の高い淡黄色の液体で,沸点200~210℃(0.4~0.6mmHg)。空気中で黒変し,さらに高粘度になり,やがて凝固する。構造は,側鎖に炭素数15前後の不飽和アルキル基をもつカテコール誘導体で,1922年真島利行によって確認された。ウルシの乾燥はこの側鎖の不飽和結合の自動酸化による重合や,カテコール部分の分子間縮合による反応で,乾燥塗膜が分子的に軟構造と硬構造の組み合わさった構造をとることが,他成分との高次構造の形成と相まって,強靱な塗膜となる因となっている。中国産ウルシの主成分もウルシオールであるが,アンナンウルシの主成分はラッコールlaccol,ビルマウルシはチチオールthitsiolである。

生漆ほどではないが皮膚に炎症を起こさせる。命名は三上喜三郎
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウルシオール」の意味・わかりやすい解説

ウルシオール
うるしおーる
urushiol

ウルシの木の樹皮から滲出(しんしゅつ)する生漆(きうるし)の主成分。フェノール誘導体の一つで、アルキル基Rが4種類のものの混合物であり、真島利行(まじまりこう)が構造決定と合成による確認をした(1912)。無色の粘稠(ねんちゅう)な液体で、沸点は200~210℃(0.4トル)、比重0.9687。漆が皮膚にかぶれをおこすのはウルシオールがアレルゲンとして作用するもので、接触皮膚炎である。

[垣内 弘 2020年9月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウルシオール」の意味・わかりやすい解説

ウルシオール
urushiol

化学式 C21H34O2 。漆の主成分。炭素原子数 15 個の不飽和の側鎖のついた二価フェノールで,側鎖の構造により5種のものが知られている。酸化重合によって堅ろうな被膜をつくる。皮膚に触れるとかぶれを起す。

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世界大百科事典(旧版)内のウルシオールの言及

【漆工芸】より

…古代の日本には灰墨を入れた黒漆と天然染料を入れたと思われる透漆があった。漆の化学的分析は1880年ころ,石松決,吉田彦六郎らによって先鞭がつけられたが,三上喜三郎は日本産漆の主成分をウルシオールと命名,真島利行はその化学式C21H32O2を決定し,1924年《漆の研究》にまとめた。戦後の漆の研究は通産省工芸指導所東北支所での研究を経て,電子顕微鏡等による漆特有の耐久性の解明や,赤外線分光器等による古代漆状物質の同定などの研究が進んでいる。…

【有毒植物】より

…コンニャク,キーウィフルーツでも同じ現象がみられるが,原因をシュウ酸カルシウムだけとする説には疑問がある。ウルシ,ハゼノキ,ヌルデ,マンゴーなどウルシ科植物による強いアレルギー性皮膚炎の原因は含有成分のウルシオールにある。イチョウの果肉(種皮)や葉に含まれるギンゴール酸も皮膚炎をおこす。…

※「ウルシオール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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