エニ(読み)えに(英語表記)Eni S.p.A.

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エニ」の意味・わかりやすい解説

エニ
えに
Eni S.p.A.

1953年に成立したイタリア政府全額出資の国営炭化水素公社Ente Nazionale Idrocarburi略称。1926年に設立された半官半民の石油会社Azienda Generale Italiana Petroli(略称はAgip(アジップ))等を母体としている。第二次世界大戦後、イタリアの実業家エンリコ・マッテイはイタリア政府から同社の清算を命じられたが、北イタリアでの大ガス田の発見を契機に、これを国際石油資本と対抗するイタリア独自の総合エネルギー機関として改組することに方針を変更し、1953年初代総裁として就任した。1971年にはオランダソ連から初めて天然ガスを輸入。1973年、アルジェリアチュニジアとの間にガスパイプラインを建設するなど探査・生産にも力を入れた。1992年にエニ株式会社に組織変更。1995年、民営化のため政府が持株の一部を売り出し、ニューヨークミラノの証券取引所に上場。1996年(2回目)、1997年(3回目)の売却で政府の持株比率は51.3%に低下し、1998年には38%になった。さらに2001年には残りの持株の5%を売却し、イタリア政府は将来的には全持株を売却する考えであると発表している。

 傘下には、天然ガスの輸送・供給を行うズナム社Snam Rete Gas、石油化学のシンディアル社Syndial(旧エニケム社EniChem)、商事海運を担うエニ・トレイディング・シッピング社Eni Trading and Shipping、石油プラント・パイプライン建設、炭化水素掘削などを行うサイペム社Saipem、石油精製・化学プラント建設のズナムプロゲッティ社Snamprogettiがあったが、2006年には、サイペム社がズナムプロゲッティ社を吸収統合し、世界有数の総合プラントエンジニアリング会社となる。2009年の石油生産量は日産約101万バレル、世界40か国に油の利権を有している。天然ガスの供給量は日産43億7400万立方フィート。イタリアのほか、アルジェリア、ロシア、オランダなどとも供給契約を結んでいる。

 2009年の売上高は約832億ユーロ。内訳は、探査・生産28.6%、天然ガス36.6%、精製・販売38.2%、石油化学5.1%、エンジニアリング11.6%など(調整前)。総資産は約1175億ユーロ、従業員数は約7万8000人、純利益は約43億ユーロ。保有する石油・天然ガスの確認可採埋蔵量は約65億7100万バレル(石油換算)である。

[湯沢 威・田村隆司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エニ」の意味・わかりやすい解説

エニ
Eni SpA

イタリアのエネルギー企業。石油天然ガス,石油化学製品を扱う。売り上げでヨーロッパにおける最大級の石油会社の一つであり,70ヵ国以上で事業展開する。本社はローマ。Eniは Ente Nazionale Idrocarburi(炭化水素公社)の略。設立の母体となったのは 1920年代にファシスト政権が設立した石油・ガス会社アジップ Agip。北イタリアのポー川流域での油田の発見が契機となり,第2次世界大戦後アジップの清算を命じられていたエンリコ・マッテイが政府を説得,1953年マッテイを総裁としてエニが設立された。イタリアやヨーロッパ諸国で展開するガソリンスタンドは,1953年にデザインされた炎を吐く 6本脚のイヌの商標で知られる。また海洋における採掘技術でも先鞭をつけた。アフリカ,ラテンアメリカカザフスタン北海などで採掘権をもち,北アフリカやロシアから輸入した天然ガスを販売する。イタリア産業復興公社 IRIとともに 1956年に設置された国家株式省の管轄下に置かれたが,1995年株式の売却により民営化が進められた。

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