エネルギー消費の構成が急激に大きく変化することをいう。産業革命期における人力・水力から蒸気力(石炭を利用)への転換も一例であるが,一般には,第2次世界大戦後,世界的に起こった石炭から石油への急激なエネルギー源の転換をさす。固体エネルギーから流体エネルギーへの転換であることから,〈エネルギーの流体化〉ともいわれる。第2次大戦後,石油利用が急激に伸びた理由は,石油の在来エネルギー,とくに石炭に対する経済的優位性であった。もともと石油は石炭に比べれば,単位当りの発熱量,燃焼効率が高く,燃焼操作の容易さ,貯蔵の容易さなどメリットが大きい。そのうえ,第2次大戦後,中東で続々と大油田が発見されたことにより,世界的に石油が供給過剰となり値下りした。そして,輸送面ではタンカーが急速に大型化したことや大口径長距離パイプラインが発達したことにより,輸送費も低下した。こうして,1950年ごろから60年代末までの20年間に,世界の石油需要は4倍にも増加したのであり,石油は67年には石炭の地位を奪って第1位のエネルギー源となった。
石炭から石油へのエネルギー革命が,世界的にみて最も著しく進展したのは日本である。戦後,日本の経済が自立的に発展するために安価なエネルギー源の供給が不可欠であったが,国産エネルギー源の中心であった石炭は品質や生産性の点で問題があるうえ,石炭産業は1955年ごろから不況に落ち込んでいた。こうした背景のなかで,安価な石油が大量に供給されることになり,石油化学工業をはじめとする産業界の技術革新に刺激されながら石油消費は飛躍的に拡大した。61年にはエネルギー供給において石炭と石油がそれぞれ40%程度を占めたが,翌62年から石油が石炭を上回った(今日では石油が70%程度を占めるに至っている)。日本の長期間にわたる高度経済成長を支えたのは,低廉かつ豊富な石油を活用したことによる。しかし,70年代に入ると,産油国の資源ナショナリズムが高揚し,産油国が生産量や価格をコントロールしはじめた。そして73年10月,第4次中東戦争をきっかけとした第1次石油危機および78年のイラン革命に端を発する第2次石油危機により,原油価格が高騰した。これは,エネルギー需給に大きな転換をもたらすことになった。すなわち,石油危機後,世界的に石油への依存度が減少傾向を示すようになり,〈脱石油〉〈エネルギー源の多様化〉が推進されつつある。この過程で,原子力やLNG(液化天然ガス)など石油代替エネルギーのシェアが高まっているが,同時に,最も利用可能性の高いエネルギー資源として,石炭の見直し,再利用の動きもでてきた。長期的にみると,高速増殖炉や核融合,さらに太陽エネルギーなど再生可能エネルギーの利用が期待され,新しいエネルギー革命の時代に入ると予想されるが,21世紀にはそれらがエネルギー供給の主役となるとみられる。したがって,当分の間,石油,石炭を含めた複合エネルギー時代,多様化時代が続いていくであろう。
→エネルギー資源
執筆者:熊坂 敏彦
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…また粉炭需要の増加に対応して選炭設備の拡充がなされた。このような合理化努力にもかかわらず,固体エネルギー(石炭)から液体エネルギー(石油)へというエネルギー革命がドラスティックに展開した。石油は石炭に比して,取扱いの容易さなど技術面で勝り,さらに開発の進展,タンカーの大型化などによる価格引下げによって経済的に有利になり,鉄鋼,電力,化学産業などで石炭から重油・石油への転換が進み,石炭危機が顕在化した。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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