エレウシス(その他表記)Eleusis

デジタル大辞泉 「エレウシス」の意味・読み・例文・類語

エレウシス(Eleusis)

《「エレフシス」とも》現在のアテネ北西にあった古代都市豊作の女神デメテルとその娘ペルセフォネ(別名コレー)の密儀が行われた神殿遺跡が残る。

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精選版 日本国語大辞典 「エレウシス」の意味・読み・例文・類語

エレウシス

  1. ( Eleusis ) ギリシア、アテネ北西方の都市古代にはデメテルとその娘ペルセフォネの聖地で、その遺跡がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「エレウシス」の意味・わかりやすい解説

エレウシス
Eleusis

ギリシアの首都アテネの西方約20kmに位置し,現在はセメント石油精製鉄鋼業中心とする工業の町。人口2万(1981)。エレフシスElevsísともいう。古代にはここで毎年行われていた秘儀で有名であった。デメテルとコレ(ペルセフォネ)を主神とする神域は,ミュケナイ時代にすでに祭祀の場であったらしいが,これとデメテル信仰との直接の関係は不明である。ミュケナイ時代のデメテル信仰の存在は現在までのところ確証されていない。デメテルとエレウシスとの結びつきおよび秘儀の由来を語る最古史料は,前600年ころに成立した〈ホメロス風デメテル賛歌〉であるが,秘儀はこれよりかなり以前からこの地で行われていたらしい。初期にはおそらくエレウシスの名門氏族の祭祀であった秘儀が,単なる地方的祭祀ではなく,アテナイの重要な祭儀となったのは,前6世紀になってからであろう。この世紀末に入信式の行われた神殿テレステリオンが大規模に改築されている。ペルシア戦争時に破壊された同神殿は,その後数回再建され,そのつど拡張され,神域そのものの規模も拡大化していった。古典期には広く全ギリシアから入信者が多数参加し,その隆盛はヘレニズム時代,ローマ時代まで続く。エレウシスが農業発祥の地であるという伝説と,秘儀入信者には幸福な来世が約束されるという信仰との2要素が,奴隷を含む男女多数の信者を集めたのであろう。秘儀はキリスト教のローマ国教化後衰退し,アラリックの神域破壊で終局を迎えた。19世紀以来の作業で神域の大部分が発掘されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エレウシス」の意味・わかりやすい解説

エレウシス
Eleusis

古代ギリシア,アッチカの都市。現エレフシス。アテネの西にあり,おそらく前7世紀までは独立していたが,その後アテネに併合され,395年には西ゴート首長アラリック2世に破壊され,荒廃。デメーテル神殿とそこで毎年9月に行われたデメーテルとその娘の冥府の女王ペルセフォネを祀る密儀によって名高い。この密儀は,ペルセフォネをハデスにさらわれたのを怒ったデメーテルが,神界を去り人間界を放浪したおりに,最後に滞在したエレウシスで王の一家から受けたあたたかいもてなしを感謝するために,女神自身によって創設されたといわれる。女神によって最初の麦の穂が生み出されて,エレウシスの王子トリプトレモスがその栽培を世界に広める役に任じられたことを記念する農業の祭りとしての意味をもつと同時に,これに入信した者には死後の世界における幸福が保証されると信じられた。古代を通じて全ギリシア人の熱心な崇敬の対象となった。ただし入信者は儀式の内容を口外することを禁止されていたため,具体的な細目はほとんど不明である。

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百科事典マイペディア 「エレウシス」の意味・わかりやすい解説

エレウシス

ギリシア,アテネ西郊の工業都市で,現代名エレフシス。人口約2万人。デメテルとその娘ペルセフォネ(コレ)を主神とする神域,またそこで行われ,ローマ時代まで続いた秘儀(密儀)で有名。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「エレウシス」の解説

エレウシス
Eleusis

アテネ西方の聖地。前7世紀頃までは独立した都市だったが,アテネに統合され,デメテルの信仰の中心として,大地の生産力の復活を象徴する密儀が行われた。巨大な遺跡が現存。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エレウシス」の意味・わかりやすい解説

エレウシス
えれうしす

エレフシス

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世界大百科事典(旧版)内のエレウシスの言及

【アッティカ】より

…伝説ではアテナイのテセウス王がこれら共同体を統合(シュノイキスモス)し,アテナイを政治および祭祀の中心と定めたことになっているが,実際にはおそくとも前700年ころまでにアッティカの統一は完了していたらしい。その後,中心市アテナイへの集権化が進む一方,エレウシス,ブラウロン,マラトンなどの地方は,おもに伝統的宗教祭祀のうえで地方色あるいは独自性を保ち続けた。しかし,ペロポネソス戦争の際,ペリクレスの提案によりアッティカの住民はアテナイ市内に疎開することとなり,これは国土の一時的荒廃を招いたばかりでなく,住民の生活に大きな変化をもたらした。…

【雨】より

…素戔嗚尊と雨の結び付きは,《日本書紀》に,彼が高天原から追放され地上に降ったときに,〈風雨甚だふきふる〉と記されていることによっても,確かめられる。 古代ギリシアのエレウシスのデメテル神殿でおこなわれた〈密儀〉の中では,受式者たちは,まず天を仰いで〈雨を降らせ〉と叫び,それから地面の方に目を向け,〈受胎せよ〉と叫んだ。この儀礼に見られる,雨を大地を妊娠させて作物の実りを子として生み出させるために,天が降らせる精液のように見なす観念も,天父地母の信仰と結び付いて世界の各地に見いだされる。…

【デメテル】より

…クロノスとレアの娘で,冥府の女王ペルセフォネの母。彼女についての有名な神話を語る《ホメロス風賛歌》中の〈デメテル賛歌〉(前7世紀末ころ)によれば,彼女がゼウスとの間にもうけた娘のペルセフォネが冥府の王ハデスに誘拐されたとき,娘を求めて世界中をさまよった母神は,アテナイ近郊のエレウシスに来て王ケレオスKeleosの子の乳母となった。しかし,王子を不死にしてやろうと赤子を火中に投じたところを見とがめられた彼女は,怒って本身をあらわし,エレウシスの地にみずからの神殿を築き,祭儀をとり行うよう命じて館を去った。…

【密儀】より

…特に古代ギリシア・ローマにおいては多くの宗教が,このような秘密の儀礼の執行を特徴としていた。その中で最も有名なものは,ギリシアのアッティカ地方の町エレウシスで行われていた密儀で,地名にちなんで〈エレウシス密儀〉とよばれている。密儀の主神はデメテルとその娘ペルセフォネ(コレー)であった。…

※「エレウシス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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