オウム病

内科学 第10版 「オウム病」の解説

オウム病(クラミジア感染症)

概念・病因
 オウムクラミジアC. psittaciによる感染症である.一見健康な飼育鳥やドバトなどの数%が保菌しており,繁殖期のストレスや病鳥では分泌物や排泄物中に大量に菌が排泄される.ヒトは菌体を含んだ乾燥塵埃を吸入することや口移しの給餌などにより感染する.感染症法の四類感染症で全数報告の義務があり,年間30例程度の報告がある.散発例が主であるが家族発症もしばしばあり,鳥展示施設などでの集団発生も報告されている.治療の遅れから重症化し死亡することもあり,注意すべき動物由来感染症である.
臨床症状
 感染後1~2週間の潜伏期間を経て,悪寒を伴う突然の高熱(38℃以上)で発症し,乾性咳や頭痛,比較的徐脈,筋肉痛を示すことが多くインフルエンザに似る.胸部X線像はすりガラス様陰影など間質性の淡い陰影がみられることが多い(非定型肺炎).重症肺炎例で,初期治療が不適切な場合には髄膜炎や多臓器障害,DIC(播種性血管内凝固症),さらにショック症状を呈し,致死的な経過をとることもある.成人例に比べ小児例は症状が軽いことが多い.基本的にヒト-ヒト感染はない.
検査成績
 CRP高値や赤沈亢進などの炎症所見は強いが,通常,白血球増加はみられないことが多い.中等度のAST,ALTの上昇など肝障害を伴う例もあるが,特徴的所見はない.
診断
 まずは鳥との接触歴を詳細に問診することが早期診断のポイントである.一般的には補体結合反応(CF法),蛍光抗体法(micro-IF法)などの血清診断が用いられる.ただしCF法はほかのクラミジア感染でも陽性となり得るため,種特異的なmicro-IF法を用いることが望ましい.特異的検査として咽頭や気道からの菌分離や抗原検出,PCR法による遺伝子検出などがあるが,限られた施設でのみ可能である.分離は要する時間や検出後にさらに解析を要することなどから迅速性に欠ける.
合併症
 肺炎から急性呼吸促迫症候群ARDS)をきたすことがある.肺外病変として髄膜炎や,心外膜炎,心筋炎,膵炎,関節炎などを合併することもある
治療
 クラミジアに対しては,テトラサイクリン系抗菌薬のほかマクロライド系抗菌薬,ニューキノロン系抗菌薬が有効である.β-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬は無効である.肺炎が進行する例や劇症例では全身管理,呼吸管理,ステロイド投与などを必要に応じて行う.幼児や妊婦では原則マクロライド系抗菌薬を第一選択とする.投与期間は,2週間程度とすることが望ましい. 予防は飼育鳥の健康管理と,口移しの給餌をしないこと,世話をする際に埃を吸わないようにし,手洗いを励行することが重要である.[安藤秀二]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オウム病」の意味・わかりやすい解説

オウム病
おうむびょう

もともと鳥類伝染病であるが、病原体をもつ飼い鳥(インコ、オウム、カナリアジュウシマツブンチョウなどの輸入鳥)や野鳥のドバトなどとの接触によってヒトにも感染する。感染症予防・医療法(感染症法)では、4類感染症に分類される。

 病原体はオウム病クラミジアChlamydia psittaciで、汚染された羽毛や分泌物、排泄物(はいせつぶつ)などの吸入や咬傷(こうしょう)によって感染するが、鳥の糞(ふん)が乾燥飛散したときに吸入する場合が多い。潜伏期は7~14日で、発病は急なこともあれば緩慢な場合もある。1~3週間にわたる高熱、食欲不振、頭痛、筋肉痛、咳(せき)、喀痰(かくたん)などが定型的症状であるが、なかには熱と咳が出て感冒程度の軽症ですむ場合も多い。診断はX線検査で肺門部から病変が広がる肺炎像が認められ、鳥類との接触歴があれば、ほぼ決められる。治療にはテトラサイクリン系の抗生物質が著効を示す。重症の場合は循環不全や脳神経症状、肝不全などを伴い死亡することもあるが、化学療法の導入以後の予後は良好で、致命率は1%以下になった。ヒトからヒトへの感染もあるので、有熱期間中は患者を他者から離し、衣類や器具の消毒、とくに痰や糞便の取扱いに注意する。また、愛玩(あいがん)鳥の管理をよくし、餌(えさ)の中に抗生物質を混入することも行われる。

[柳下徳雄]

オウム病クラミジア

クラミジア目クラミジア科クラミジア属に属するオウム病の病原体。現在はリケッチア群に含まれている。直径0.2~1.5マイクロメートル、球菌状で、ギムザ染色により染色される。細胞壁があり、RNAとDNAをともに有する。ヨードで染色されない封入体をつくり、サルファ剤に感受性がないのが特徴である。

[曽根田正己]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「オウム病」の意味・わかりやすい解説

オウム病【オウムびょう】

元来オウム,カナリアなどの鳥類の伝染病であるが,人体にも感染する。病原体はかつては大型のウイルスといわれたが,今日では細菌のクラミジアに属するとされる。症状は,発熱,頭痛,筋肉痛,咳,全身倦怠(けんたい)などで,肺炎を併発することもある。重症ではまれに死亡例もある。治療にはテトラサイクリンなどを用いる。
→関連項目クラミジア感染症細菌兵器人獣共通伝染病

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オウム病」の意味・わかりやすい解説

オウム病
オウムびょう
parrot fever

元来,オウムなど愛玩用鳥類の伝染病だが,ヒトにも感染する。病原体はオウム病クラミジアで,潜伏期は4~10日。高熱,神経障害を起し,肺炎を起しやすい。テトラサイクリンなどの抗生物質を投与する。

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