日本大百科全書(ニッポニカ) 「オキシム」の意味・わかりやすい解説
オキシム
おきしむ
oxime
アルデヒド、ケトンがヒドロキシルアミンNH2OHと縮合して生成する化合物。アルデヒドから生成するアルドキシムと、ケトンから生成するケトキシムに分類される。
縮合反応は穏やかな条件でおこり、生成するオキシムは一般に結晶化しやすく、水に難溶であるため、カルボニル化合物の分離、確認に利用される。無機酸と温めると容易にヒドロキシルアミンと元のカルボニル化合物に加水分解される。還元によってアミンを生成する。
アルドキシムにはシン‐アンチ幾何異性が存在する。脂肪族アルデヒドのオキシムでは通常シン形だけが単離されるが、芳香族アルデヒドからは両者が別々に得られる。たとえばベンズアルドキシムC6H5CH=NOHでは融点35℃のシン形と融点131~132℃のアンチ形が得られている。アルドキシムを無水酢酸と温めると、アンチ形のほうがシン形よりも容易に脱水されてニトリルとなる。
ケトキシムでも非対称なケトンから生成するオキシムでは幾何異性が存在する。たとえばp(パラ)-メトキシベンゾフェノンからは、フェニル基とヒドロキシ基がアンチのものとシンのものとが得られる。
ケトキシムに五塩化リン、硫酸などを作用させると酸アミド誘導体に変化する(ベックマン転位)が、この場合ヒドロキシ基に対してアンチの位置にある基が炭素から窒素へ転位することが知られている。p-メトキシベンゾフェノンの例では、高融点のオキシムからはアニスアニリドp-CH3OC6H4CONHC6H5が、低融点のオキシムからはベンズp-アニシジドC6H5CONHC6H4OCH3-pが生成する。
[山本 学]