日本大百科全書(ニッポニカ) 「オニバス」の意味・わかりやすい解説
オニバス
おにばす / 鬼蓮
[学] Euryale ferox Salisb.
スイレン科(APG分類:スイレン科)の一年生の水草で、池や沼に生育する。和名は、形がハスに似ており、刺(とげ)が多いことによる。またミズブキともよばれる。地中に円筒形の短い根茎をもち、多数の葉を出す。葉は刺の多い長い葉柄に盾状につき、水面に浮かぶ。葉身は円形で径20センチメートルから3メートルにも達し、しわが多く、葉脈上には刺が生える。下面は紫色を帯びる。花期は8~10月、正常花と閉鎖花の2種の花がある。花は刺の多い長い花柄上に1個頂生し、径約4センチメートル。萼(がく)片は4枚で緑色、花弁は多数、紫色で螺旋(らせん)状につく。雄しべは多数ある。子房は下位で8室に分かれ、各室の内壁に多数の胚珠(はいしゅ)をつける。種子は球形で、仮種皮をかぶる。種子の胚乳はデンプンに富み、食用とされる。また、中国では種子を芡実(けんじつ)と称し、強壮剤としても利用する。1属1種で、本州、九州、ロシア連邦の沿海州、朝鮮半島、中国、インドに分布する。日本では最近、池の汚染などで急速に減っている。
[伊藤元巳 2018年6月19日]