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オパーリン Oparin, Aleksandr Ivanovich

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

オパーリン
Oparin, Aleksandr Ivanovich

[生]1894.3.2. ヤロスラブリ州
[没]1980.4.21. モスクワ
ソ連の生化学者。生命の起原に関する学説の提唱で有名。モスクワ大学で植物生理学を学ぶ。その際に師事した K.チミリャーゼフは C.ダーウィンと親交があった。モスクワ大学教授 (1929) 。 1935年,ソ連科学アカデミー・バッハ記念生化学研究所設立に尽力,46年から 80年に没するまで同研究所所長をつとめた。太古の地球で,化学反応により次第に複雑な構造をもつ有機物がつくられるようになり,やがてそれらが細胞構造をとるようになって最初の生命が誕生したとする彼の仮説は,ダーウィンの進化論を生命の起原の仕組みへ拡張したものともみられている。この説は 22年に発表されたが,その頃の科学の常識と相いれなかったため,発表当時は評価されなかった。しかし,その後生物の存在しない条件下でも,有機物の生成,有機物質の複雑化,細胞構造の出現などが起りうることを,S.ミラー,S.フォックスらが実証するに及び,オパーリンの仮説は説得力を増し,今日では生命の起原についての定説になっている。オパーリンは有機物の溶液から細胞が形成される機構を研究するためアラビアゴムやゼラチンから成る小滴をつくってコアセルベートと名づけ,コアセルベートに酵素を封じ込めたときに酵素の働きがより盛んになることを発見。これは酵素がその存在状態に応じて作用の仕方を変えることを示し,酵素学にとって重要な発見となった。 57年,第1回生命の起原国際会議を主催,70年会長に選出された。 77年4月に4度目の来日をした。

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デジタル大辞泉の解説

オパーリン(Aleksandr Ivanovich Oparin)

[1894~1980]ソ連の生化学者。生命の起源に関する研究に貢献。また世界平和擁護委員など社会活動でも貢献。著「生命の起源」。

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百科事典マイペディアの解説

オパーリン

ソ連の生化学者。モスクワ大学卒。1929年より同大学教授。後にバッハ生化学研究所長。自然科学各分野の知見をもとにして,初めて生命の起源に関する科学的学説提唱,また細胞中の酸化酵素系の作用などの研究もある。

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世界大百科事典 第2版の解説

オパーリン【Aleksandr Ivanovich Oparin】

1894‐1980
ソ連邦の生化学者。生命の起源の研究者。モスクワ大学教授(1929),A.N.バッハ生化学研究所長(1946),ソ連科学アカデミー会員(1946)。生命は他天体から飛来したとか,永遠に存在したとか言っても解答にはならず,まず原始地球上で化学進化により有機物が生成,蓄積し,しだいに複雑なシステムとして発展してきたとの考えを,初めて体系的に説いた一人である。1926年に要旨をすでに述べているが,《地球上における生命の起源Vozniknovenie zhizni na zemle》(1936)は,世界的に大きな影響力をもち,大幅に改訂されつつ版を重ねた(3版,1957)。

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大辞林 第三版の解説

オパーリン【Aleksandr Ivanovich Oparin】

1894~1980) ソ連の生化学者。地球上における生命の起源について論じ、コアセルベート説をたてた。世界平和運動にも活躍。著「生命の起源」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

オパーリン
おぱーりん
Александр Иванович Опарин Aleksandr Ivanovich Oparin
(1894―1980)

ソ連の生化学者。生命の起源の研究家。ロシアのウグリッチに商人の子として生まれる。モスクワ大学で植物生化学を専攻し、1917年に卒業。在学中、植物学者であり進化論学者であるティミリャーゼフKliment Arkadievich Timiryazev(1843―1920)の影響を受けた。第一次世界大戦中は製菓工業の化学技師として働き、1917年のロシア革命においては化学工業労働者の組合運動に参加、革命後の化学工業建設にも参加した。同年、ナロードニキ運動でスイスのジュネーブに亡命していた生化学者バッハAleksey Nikolaevich Bah(1857―1946)が帰国すると、彼に師事し、植物の呼吸や酵素を研究。また、生命の起源に関心を抱き、初めて科学的な生命発生の説をたて、1922年に学会で発表。その説について1924年に小冊子を、さらに1936年に単行本として『生命の起源』を著した。[石本 眞]

生命の起源

オパーリンは、従来の生命発生の説を科学的立場から批判し、地球の初期状態から生命の発生、現在の形態の生物への進化に至るまでの道筋の大要を示した。すなわち、地球生成初期は還元状態で、簡単な有機物が生成し、それから生物を構成する複雑な有機物、アミノ酸、糖などが生成した可能性を指摘した。さらに有機高分子の生成、結合によって、多分子系のコロイド粒子、コアセルベートができ、その個々の粒子の環境に適合する変化によって存続・成長・増殖に有利なものが残され、進化と淘汰(とうた)を経て生物に至ったという説を提案した。原始生物は嫌気性の有機物利用生物(従属栄養生物)で、地球環境の変化に適合する進化の過程で光合成生物(独立栄養生物)や好気性生物が生じたとした。『生命の起源』は世界各国語に訳され、基本的に広く受け入れられ、生命の起源および進化の科学的研究を促した。[石本 眞]

業績

オパーリンはまた、ソ連における食品加工、発酵工業などの科学的基礎の研究や大工業化に伴う問題の解決に努力し、ソ連の工業生化学の創始者となった。1931年、バッハ記念生化学研究所設立に努力し、その後1946年に同研究所所長。ソ連自然科学アカデミー(現、ロシア科学アカデミー)会員(1946)、モスクワ大学教授(1942~1960)を務める。さらにソ連生化学会会長(1959)、国際生化学連合副会長(1962~1966)を務めるとともに、世界平和評議会委員(1950)、世界科学者連盟副委員長(1952)などを務め、社会活動を行った。1955(昭和30)、1957、1967、1977年の4回にわたって日本を訪問し、日ソの学術交流に果たした役割は大きい。[石本 眞]
『オパーリン著、石本眞訳『物質▼生命▼理性』(1979・岩波現代選書) ▽オパーリン他著『生命の起原への挑戦』(講談社・ブルーバックス)』

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世界大百科事典内のオパーリンの言及

【化学進化】より

…ただし各研究者が用いている異なる反応混合物やエネルギー源(加熱,放電その他)のうち,どれが実際の経過を反映するのか,または各種の場合が並行して生じたのかは,判別が容易でない。 生命の進化の最初の段階としての化学進化という考えは,20世紀初頭に現れはじめ,A.I.オパーリン(1924,1936)やJ.B.S.ホールデン(1929)により確立された。最初のシミュレーション実験はミラーS.L.Miller(1953)によるもので,彼は始原状態における大気の組成を推定し,それに相当するメタン,水素,アンモニア,水蒸気の混合ガスを入れたフラスコ内で火花放電をさせ,簡単なアミノ酸をつくりだすことに成功した。…

【コアセルベート】より

…コロイド成分が複数のときには,特定成分がコアセルベート中に濃縮される現象も起こる。A.I.オパーリンは生命の起源を論じたさい(1936),コアセルベートの特性を重要な一つのモデルとした。生命系の反応の確立にあたっては,成分の局所的濃縮が不可欠との考えからである。…

【自然発生説】より

…生命の起源の問題についてはJ.B.deラマルクが,生物の進化系列の最初に自然発生を認めており,この問題は20世紀の初めまで議論が続いた。20世紀に入り,A.I.オパーリンらの地球上における生命の起源に関する研究が進められると,生物の基本的属性をもったものがある時点で一挙に形成されたことはなく,さまざまな段階を経て徐々に形成されたとされるようになり,自然発生の問題は消滅した。【横山 輝雄】。…

【農学】より


[ソ連]
 ソ連における現代農学創出にあたってまずあげるべきは,ダーウィンとならび称され,とくに植物生理の分野で業績をあげたK.A.チミリャーゼフ(1843‐1920)である。また日本では植物水分生理学を開拓した基礎的・理論的学者として知られるマクシーモフN.A.Maksimov(1880‐1952)や,日本では生化学者で生命の起源の研究創始者として知られるA.I.オパーリン(1894‐1980)も農学者,農芸化学者である。土壌肥沃度,単一土壌形成,牧草輪作体系などを中心として研究を展開したV.R.ウィリヤムス(1863‐1939)も土壌学者であり農学者であった。…

※「オパーリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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