オープンスクール(英語表記)open school

デジタル大辞泉 「オープンスクール」の意味・読み・例文・類語

オープン‐スクール(open school)

従来の画一的・固定的な教育内容学級編制の枠をなくし、子供の能力・関心に応じた自由な教育を行う学校。

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精選版 日本国語大辞典 「オープンスクール」の意味・読み・例文・類語

オープン‐スクール

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] open school ) 従来の画一的・固定的な教育内容・学級編成の枠をなくし、子供の能力・関心に応じた自由な教育を行なう学校。

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最新 心理学事典 「オープンスクール」の解説

オープンスクール
オープンスクール
open school

1960年代後半から1970年代にかけて,公立学校を中心にアメリカ各地で展開された草の根の学校改革運動。オープンスペースopen spaceとよばれる開放的な空間,柔軟な時間割,個別や小集団など多様な学習集団,チーム・ティーチングの常態化,教科の枠を突破した総合学習などが比較的共通に見られる特徴である。なお,実践の内実とは無関係に開放的な空間の所有のみを指す語にオープンプランスクールopen plan schoolがある。1960年代のアメリカでは,教育の現代化に伴う教育内容の高度化などにより,落ちこぼれや学校嫌いが大きな問題となっていた。そんな折,1967年にイギリス政府が公表したプラウデン報告書により,子どもが環境との相互作用の中で学びを深めていくコーナー学習や,子どもの興味に即した主題のもとに教科を総合するトピック学習などのインフォーマル教育が,アメリカでも広く知られるところとなった。これが当時,そもそもは建築コストの削減要求から生まれた壁のない学校建築と結びつき,オープンスクールは活況を呈する。伝統的な学校との比較研究も行なわれ,学業成績では際立った差は認められなかったものの,学習の主体性自尊心において優越性のあることが確認されている。

 1970年代後半に入ると保守派を中心に基礎へ帰れback to basics運動が展開されたためオープンスクールはしだいに衰退していくが,今日でもその系譜を引く実践は全米各地に多数存在する。1970年代後半には日本にも紹介され,愛知県東浦町立緒川小学校の試みなどを生み出すとともに,チーム・ティーチングのための教員加配制度や多目的スペースに関する国庫補助制度,学習指導要領における個に応じた指導や授業時間の弾力化の明記など,今日の日本の文教政策にも影響を与えている。

 オープンスクールとは,教育方法や学校経営から施設・設備に至るすべての側面において,従来のあり方にとらわれることなく開放的な態度で問い直し,必要があれば大胆な改革をも実行していこうとする教育実践上の立場を指す。したがって,固定的な定義自己矛盾を生み,定義されたものはオープンスクールではなくなる。オープンスクールという特定の制度や方法があるのではなく,あらゆる可能性に対しつねに門戸を開いておく態度,自己批判と絶えざる改革への意思こそがオープンスクール最大の特徴である。もっとも,これは表面的な姿や形にとらわれないという意味であって,従来のあり方を問い直す思想的なよりどころ,子ども観や学習観はむしろきわめて明確である。オープンスクールの思想的立場は,デューイDewey,J.に代表される児童中心主義の中でも知性主義的で比較的穏健な系譜に求めることができる。また,子ども観,発達観にはピアジェPiajet,J.の影響が強い。そこでは,子どもは生まれながらにして能動的な学習者であり,自らを取り巻く環境との自発的で個性的な相互作用によって学習を展開する存在と考えられた。したがって教師や学校の役割は,もっぱら教育的に価値ある相互作用をより望ましく誘発し促進しうる環境の創造と整備にある。このような立場から見れば,従来の学校は学年,学級,時間割,教室,教科などのさまざまな壁(形式)によって著しく閉ざされている。オープンスクールは子どもの発達と学習の事実をよりどころにこれらの壁を開き,新しい学校教育の豊かな創出をめざした草の根の体制内改革運動であったといえよう。 →カリキュラム →フリースクール
〔奈須 正裕〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オープンスクール」の意味・わかりやすい解説

オープン・スクール
おーぷんすくーる
open school
open-plan school

伝統的な教室よりも2~3倍広い教室を使って教育活動を行う幼稚園などの就学前学校や小学校をさす。伝統的なくぎり(壁)を廃止したオープンな教室は、子供たちが自らの興味・要求・動機に基づき、自らの意思でアクセス(接近)できる多様な教授区域に分けられる。

 イギリスの幼児学校から始まったオープン・スクール、あるいはオープン・クラスルームは、児童・生徒を同一の年齢や能力に基づいて一つの大きなスペースに収容する。それは子供たちが個人または集団で自分たちの学習課題を独立して、ないしは教師の援助の下に遂行することを認めるものであり、このようにして一つの教室内で多くの数の学習経験が同時に生まれることになる。力点は、
(1)暖かく、開放的な教師・生徒の関係
(2)非競争的・非抑圧的環境の下での自分のペースにあった自己決定学習
に置かれ、生徒を上から編成することを放棄し、統合された学習時間を保障する。すなわち、決められた時間割に基づく学習よりも、子供の要求・興味・動機が中心となる学習活動を行うのである。

 1940年代にイギリスの私立の就学前学校などで導入されたこの方式は、60年代にアメリカの就学前学校でも一般化するようになった。70年以降日本でも導入され、84年(昭和59)からは文部省(現文部科学省)が「多目的スペース」に補助金を出すようになり、新しいタイプの授業や施設が生み出された。

[神山正弘]

『ジョナサン・コゾル著、石井清子訳『自分の学校をつくろう』(1987・晶文社)』『成田幸夫著『オープンスクールの挑戦 学校をかえる力――緒川小学校・学校改革の軌跡』(1987・ぎょうせい)』『中井良興他編著『オープンスクールをつくる――合橋小学校の改革とその歩み』(1996・川島書店)』

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百科事典マイペディア 「オープンスクール」の意味・わかりやすい解説

オープン・スクール

児童生徒の個別的な学習を推進するために学級や学年(学年制)を解体して,柔軟に教育活動を展開できるように間仕切りのないオープン・スペースを持った学校。この学校では,児童の自主性や主体性が尊重されるが,教師の指導性も十分に発揮される。そのため,チーム・ティーチングなど教師相互間の協力的教授組織をとる。

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世界大百科事典(旧版)内のオープンスクールの言及

【オルタナティブ・スクール】より

…しかし,alternativeという語には〈思想や行動における重要な変化〉というニュアンスがあり,従来の学校教育とは異なった学校を意味する。この種の試みは,近代には〈新教育〉運動などの形で不断にあったが,オルタナティブ・スクールは,1960年代後半にアメリカに起こったフリー・スクールfree school,オープン・スクールopen school,〈壁のない学校〉などとさまざまな名称で呼ばれる学校教育改善の営為を指している。1957年のソ連の大陸間弾道弾,人工衛星打上げの成功に衝撃(スプートニク・ショック)をうけたアメリカは,科学教育を中心に教育・研究の急速かつ全面的な向上をはかった。…

※「オープンスクール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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