カイドウ(読み)かいどう

改訂新版 世界大百科事典 「カイドウ」の意味・わかりやすい解説

カイドウ (海棠)

カイドウ類はバラ科リンゴMalusのなかでは,とくに美しい花をつけ,観賞用に花木として栽植される。江戸時代に〈カイドウ〉と呼ばれていたものは,以下に述べるミカイドウであったが,現在ではハナカイドウに対して〈カイドウ〉の名が誤用されていることが多い。カイドウ類は,リンゴ属のなかでは芽の中で葉が巻いていることで,リンゴなどと同じ群に入り,芽の中で葉が折りたたまれるズミ類とは区別される。しかし,リンゴ類のように果実食用とされることはほとんどない。

 ミカイドウ(実海棠Malus micromalus Makino(英名Kaido crab apple)は中国原産の栽培種で,野生品は知られていない。あとで述べるホンカイドウM.spectabilis(Ait.)Borkh.とマンシュウズミM.baccata(L.)Borkh.の交雑より起源したと考えられている。落葉小高木で,新葉には脱落する綿毛があり,葉裏には細毛が残る。花は春に新葉の展開とともに現れ,つぼみは紅色,開花すると淡紅色で,直径3~4cm,3~7個が散形の花序をなす。

 ハナカイドウM.halliana Koehne(英名Hall's crab/flowering crab-apple)は前種に似ているが花梗が長く,花がやや垂れぎみに咲き,花弁の内側は桃~白色で,葉裏は無毛,果実も小さいので区別される。この種も本来の野生品は知られておらず,雑種起源の園芸植物であろう。中国で栽植されていたカイドウ類でホンカイドウ(海棠M.spectabilis(Ait.)Borkh.(英名Chinese flowering apple)と呼ばれているものは,学名のようにもっとも美しい種で,中国大陸北部で栽植されていた落葉小高木である。やはりはっきりした野生品は知られていない。葉裏は若い時期は有毛だが秋にはほぼ無毛になり,また萼片は果実時にも残ることや花が直径5cmほどと大きいことで前種とは区別される。繁殖は接木による。軽い土質を選び,肥料を必要とする。日の当たらない湿った場所では育ちにくい。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カイドウ」の意味・わかりやすい解説

カイドウ
かいどう / 海棠
[学] Malus halliana Koehne

バラ科(APG分類:バラ科)の落葉高木。ハナカイドウともいう。中国原産。高さ3~7メートルになり、小枝が刺(とげ)になることがある。葉は互生し、卵形ないし長楕円(ちょうだえん)形、長さ4~8センチメートル。4~5月、一重または半八重の紅色の花が散形状につき、下垂して開く。花径3~5センチメートル、萼(がく)は暗紅色萼筒の下部が膨らむ。果実は球形、径5~8ミリメートルで、10~11月に暗赤色に熟す。同属のミカイドウはナガサキリンゴともよび、江戸時代にはこれをカイドウといい、カイドウ(ハナカイドウ)をスイシカイドウ(垂枝海棠)といった。

 庭木、盆栽、切り花に賞用される。適湿の肥沃(ひよく)地を好み、剪定(せんてい)も可能。繁殖は接木または挿木による。

[小林義雄 2019年12月13日]


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