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アメリカの詩人。ハーバード大学の教授を父にもち,彼自身も同大学の出身だが,アメリカではめずらしく反主知的な詩人の代表である。第1次大戦に志願してフランスの傷病者運搬隊に参加したが,なにかのいきちがいで投獄され,その奇妙な体験を戦争小説《巨大な部屋》(1922)で発表した。戦後はヘミングウェーたちとともにパリの新しい文学運動に接し,《チューリップと煙突》(1923)という若々しくてモダンな抒情詩集を出した。彼の詩集はいずれも活字の配列や言葉の上での実験が多く,視覚的なおもしろさを十分に味わわせてくれる。1925年にダイアル詩賞を受け,54年には《選詩集》(1923-54)で全米図書賞とボーリンゲン賞を受けた。ハーバード大学での《私・六回の非講演》(1953)は,アメリカ詩のトリックスターともいえる彼の意外な内面を語っていて,おもしろい。
執筆者:新倉 俊一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アメリカの詩人、小説家。マサチューセッツ州生まれ。ハーバード大学卒業後、第一次世界大戦に参戦し、フランス政府の手違いから捕虜収容所に監禁された。その体験は唯一の小説『巨大な部屋』(1922)となって生かされ、詩とも小説ともつかぬ実験的手法と、戦場を描かぬ戦争小説により注目を浴び、戦争小説の一傑作とされるに至った。詩人としては、徹底したことばの実験者といってよく、『チューリップと煙突』(1923)から始まる彼の詩作のほとんどは、I(アイ)の小文字化、単語の分割、数語の唐突な並置などの印刷上の実験に満ち、ダダイズムと台頭するシュルレアリスムへの関心も明らかにうかがえる。数多くの詩集のほかに、ハーバード大学での『私・六つの非講義』(1953)や紀行文などがある。
[原川恭一]
『飯田隆治訳『巨大な部屋』(1979・思潮社)』▽『河野一郎訳『チューリップと煙突』(『世界名詩集大成11』所収・1962・平凡社)』
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