アフリカ南西部の乾燥盆地。先カンブリア界のいわゆるベースメントを基盤とする構造盆地で,新生界のカラハリ砂層が薄くおおっているのが特色である。その範囲は南緯12°から28°に及び,総面積は約160万km2に及ぶ。南部は年降水量150~400mmの最も乾燥した部分で,とげの多いアカシア類ブッシュの卓越する半砂漠地域である。わずかの間欠河川をみるほか,砂丘が広く大規模に発達する(その多くはすでに固定化している)。中部は盆地底に当たり,やや降水量が増し,植生も乾燥サバンナとなる。オコバンゴ,マカリカリ,エトシャなどの無口の内陸性湿地が散在する。北部は年降水量600~1100mmと北へいくほど湿潤となり,サバンナ植生は密度と高さを増す。コンゴ川水系の分水界からはじまるザンベジ川水系やオコバンゴ川水系の諸河川が並ぶ。したがってこの部分はカラハリ砂漠から除かれることがある。乾燥度の高い中部から南部にかけては,サンの生活空間となっている。この盆地は大陸性気団の発源地となり,南部アフリカの気候に大きな影響を与える。1月を中心に発達する熱帯低気圧(いわゆるカラハリ・ロー)がとくに知られる。探検史上では,1849年のD.リビングストンによる東部の縦断行と,1851-53年のK.アネルソンによるオレンジ河口からオコバンゴ湿地への横断行が有名である。
執筆者:戸谷 洋
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アフリカ南部、南回帰線付近にある大砂漠。ボツワナの東部を除いた地域が中心で、ナミビア東部、ジンバブエ西端部、ザンビア西部、南アフリカ共和国北部にまたがる。内陸の乾燥盆地で、平均標高900~1200メートル、総面積は約160万平方キロメートルにわたる。南北方向に地域差があり、北部はサバナ景観を示し、年降水量は600~1100ミリメートル、ザンベジ川水系やクバンゴ川水系の河川が流れる。中部は盆地の低部にあたり、クバンゴ低湿地をはじめ湿地帯が点在する。南部は乾燥し砂丘が発達する。この砂丘は先カンブリア系の基盤岩類に由来し、砂層の厚さは100メートル以下で全体に薄い。現在は砂丘に植生があり、固定されたものが多いが、約2万年前の最終氷期には、現在よりも乾燥域が広くなり、砂丘も分布域が拡大したことが指摘されている。年降水量は120~400ミリメートル程度で、この雨はおもに1月ごろ発達するカラハリ低気圧により2~3月に降るものである。河川は間欠河川となり、植生は刺(とげ)の多いアカシア類をはじめ、イネ科のブッシュマングラスや、スイカの変種のツァーマメロンなど、短い草本が主体をなす。
南西部は国立公園で、先住民サン人のおもな居住地であり、ほかにコイ人らが住んでいる。ただこれは歴史的には彼らが乾燥地域を好んで住んでいるというよりは、周辺民族に追われる形で逃げ込み、適応していったものである。
[堀 信行]
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…それは,アフリカ大陸は南西部を欠き,そこに南大西洋の高気圧が拡大してくるためで,その高気圧に押されて,南西部では,赤道西風が南下し得ないためである。 このようなメカニズムによって,北アフリカの中央には広大なサハラ砂漠が広がり,南アフリカの中央には,カラハリ砂漠とナミブ砂漠が出現している。サハラ砂漠の南縁の部分はサヘル地帯と呼ばれ,砂漠と森林地帯の境として活発な交易の行われている所であるが,赤道西風の北上が少ない年がときどきあり,そのときには,激しい干ばつにみまわれる。…
※「カラハリ砂漠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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