カルパッチョ(読み)かるぱっちょ(英語表記)Vittore Carpaccio

精選版 日本国語大辞典 「カルパッチョ」の意味・読み・例文・類語

カルパッチョ

[1] (Vittore Carpaccio ビットーレ━) イタリアの初期ルネサンスの画家。風俗画的な親近感を漂わせた宗教画で、ベネチア派のなかで特異の作風を示した。代表作「聖ウルスラの生涯」など。一五二五年頃没。
[2] 〘名〙 (carpaccio) イタリア料理の一つ。薄切り牛肉、ときに魚介類を、生のままオリーブ油、スパイスなどで食する。

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デジタル大辞泉 「カルパッチョ」の意味・読み・例文・類語

カルパッチョ(Vittore Carpaccio)

[1450ころ~1525ころ]イタリアの画家。ベネチア派細部を克明に描写した宗教画を描いた。「聖女ウルスラ伝」の連作など。カルパッチオ

カルパッチョ(〈イタリア〉carpaccio)

イタリア料理一種。牛肉または魚肉を生のまま薄切りにしてオリーブ油・スパイスなどで和えた料理。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルパッチョ」の意味・わかりやすい解説

カルパッチョ
かるぱっちょ
Vittore Carpaccio
(1465ころ―1525/26)

イタリアのルネサンス期、ベネチア派の画家。ベネチアに生まれ、同地で没したと思われる。ジェンティーレベッリーニの弟子であったらしく、師と同じくベネチア特有の大型カンバス(テレーロという)に独特の想像力をもって多くの宗教画を風俗画的に描いた。年記のある最初の作品が『ケルンへの到着』(1490)をはじめとする9面の『聖女ウルスラ伝』(ベネチア・アカデミア美術館)である。スクオーラ・ディ・サントルソラ(聖ウルスラ同信会)のために描かれたこの連作画には、ベネチアの町並みや風物が克明に生き生きと描写されている。ベネチアのスクオーラ(同信会)のために描いた同じような連作画として、スクオーラ・ディ・サン・ジョルジョ・デリ・スキアボーニの『聖ゲオルギウスの物語』など(1502~07)、スクオーラ・デリ・アルバネージのための『聖母伝』(1504~08)、スクオーラ・ディ・サント・ステーファノのための『聖ステパノ伝』(1511~20)がある。多くの作品に署名と年記を残しており、画風変遷をたどることが容易であるが、16世紀に入ってもカルパッチョはティツィアーノなどの新様式を取り入れることがなかった。

[篠塚二三男]


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改訂新版 世界大百科事典 「カルパッチョ」の意味・わかりやすい解説

カルパッチョ
Vittore Carpaccio
生没年:1465ころ-1525か26

イタリア,ベネチア派の画家。ベネチア生れ。伝記的事実に関する記録は少なく,初期の活動も不詳。おもにスクオラ(一種の信仰者団体)のために聖母や聖人伝の連作を手がけた。そのうちの主要な作品は,《ウルスラ伝》の連作9点(1490-95)で,ジェンティーレ・ベリーニの影響を受けて,横長の大画面に明るく和らいだ光と豊かな色彩を静かに交え,当時の町の景観と風俗を万華鏡のように展開させながら,聖女にまつわる説話を丹念,かつ平易に語る。全作品に通ずる素朴な画風は,陰影に富み多彩で華やかなベネチア派絵画の伝統とは趣を異にするところがある。
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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「カルパッチョ」の解説

カルパッチョ【carpaccio(イタリア)】

イタリア料理の一つ。生の牛肉や魚介類を薄切りにし、オリーブオイル・レモン汁・ソースなどをかけたり、パルミジャーノレジャーノというチーズを薄切りにしてのせたりしたもの。香味野菜を加えることが多い。前菜に用いられる。元来は牛肉を用いた料理だが、日本では一般的に白身魚・まぐろ・たこなどの魚介類を用いたものをさすことが多い。◇ベネチア派の画家ビットーレ・カルパッチョに由来する。1950年(1963年とも)、ベネチアの料理店「ハリーズ・バー」のシェフが、医者に生肉を食べることをすすめられていた伯爵夫人のために、薄く切った牛ヒレ肉にマヨネーズとマスタードを混ぜたソースをかけた料理を考案し、牛肉の赤色がカルパッチョの絵の色を思わせたため、ちょうどベネチアで開かれていた回顧展にあやかって名づけられたとされる。このほか由来には、カルパッチョ自身がこの料理を好んだ、考案したレストランの壁にカルパッチョの絵がかかっていたなど、諸説ある。

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百科事典マイペディア 「カルパッチョ」の意味・わかりやすい解説

カルパッチョ

15世紀末から16世紀初頭に活躍したイタリア,ベネチア派の画家。伝記不明。ベリーニ一族,ことにジェンティーレに学ぶ。豊かで調和のとれた色彩と,安定した空間感覚により,古典的な画面を構成した。代表作に連作〈ウルスラ伝〉(1490年―1495年,ベネチア,アカデミア美術館蔵),《二人のベネチア婦人》(1510年ころ,ベネチア,市立コレール美術館蔵)など。

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世界大百科事典(旧版)内のカルパッチョの言及

【風俗画】より

…その結果,日常的ないし生活面に関する主題を蔑視する傾向があった。その反面,ベネチア派の画家たち,たとえばカルパッチョは《高級娼婦》(1490ころ)を描き,東方の人々の往来する,異国情緒にあふれた都市ベネチアの一風俗(クジャクやオウムの輸入)を伝えている。そうした中でカンピV.Campiなどのロンバルディアの地方画家たちは,果物売りなどの世俗的主題(とはいっても,こうした絵には〈豊饒〉の寓意もある)をのびやかに描いていた。…

【ベネチア派】より

…ジャンル的には,とくにベネチア派独自のものとして街景画(ベドゥータveduta)と肖像画をあげることができよう。ヤコポ・ベリーニ以来の人物より環境空間を重視する傾向は,一方ではジョバンニ・ベリーニ,ジョルジョーネ,初期のティツィアーノという抒情的な理想郷的風景表現の系譜となり,他方でジェンティーレ・ベリーニやカルパッチョから18世紀のカナレット,ベロットに至る都市空間を明晰な遠近法で再現する街景画の系譜となって,近代的風景画の中に流れ込んでいく(この中でグアルディは街景画を非現実的な詩的幻想に転じたことで異色の存在である)。一方,肖像画は,ジョバンニ・ベリーニやアントネロ・ダ・メッシナからロット,ティツィアーノ,ティントレットに至る伝統が,濃密な生動感と鋭敏な精神性をたたえた近代的肖像画の源泉として輝かしい光彩を放っている。…

※「カルパッチョ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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