イタリアの小説家。キューバ生まれ。北イタリアのサン・レモで育つ。第二次世界大戦末期にパルチザンとして戦った経験を基にした処女作の長編『蜘蛛(くも)の巣の小道』(1947)はネオレアリズモの代表的作品に数えられる。文学的にはパベーゼとビットリーニの2人を父とするといわれ、戦後社会への批判と失望とから、単なるリアリズム小説を脱却して、幻想と寓意(ぐうい)を基軸に『まっぷたつの子爵』(1952)、『木のぼり男爵』(1959)などを著し、さらに空想科学の要素も含めて『宇宙喜劇』(1965)、『見えない都市』(1972)を発表した。また、編著『イタリア民話集』(1956)は20世紀の記念碑的作品であり、読み替えの物語『宿命の交わる城』(1973)と『冬の夜に旅人が』(1979)は記号論を先取りした構成になっている。その後、文学・社会論集をまとめた『水に流して』(1980)、連作小説『パロマー』(1983)を発表。アメリカのハーバード大学における連続講義のための原稿『カルビーノの文学講義』(1988)を完成させる直前、急逝した。
[河島英昭]
『河島英昭訳『イタリア民話集』上・下(岩波文庫)』▽『河島英昭訳『まっぷたつの子爵』(1991・晶文社)』▽『米川良夫訳『木のぼり男爵』(1995・白水社)』▽『カルビーノ著、須賀敦子訳『なぜ古典を読むのか』(1997・みすず書房)』▽『米川良夫訳『カルヴィーノの文学講義』(1999・朝日新聞社)』▽『ベルポリーティ著、多木陽介訳『カルヴィーノの眠』(1999・青土社)』▽『和田忠彦訳『水に流して』(2000・朝日新聞社)』
イタリアの小説家。第2次世界大戦の末期に,パルチザンとして戦った体験をもとにした長編《蜘蛛(くも)の巣の小道》(1947)で世に出る。リアリズムの手法によったこの作品を,C.パベーゼはいちはやく〈森の寓話〉と見抜いたが,その後,カルビーノは長編《まっ二つの子爵》(1952),《木のぼり男爵》(1957),《不在の騎士》(1959)といった幻想と寓意に満ちた作品を発表し,重苦しくのしかかる社会的現実の下で,戦後の知識人が無力感と罪悪感にさいなまれる状況を描いた。その後,空想科学的な要素を盛りこんだ《宇宙喜劇(レ・コスミコミケ)》(1965),マルコ・ポーロの《東方見聞録》を素材にして特異な構成をもつ物語に仕立てた《見えない都市》(1972),タロット・カードを用いた新しい枠物語《宿命の交わる城》(1973)などの長編を発表。ほかに,イタリアの民話を現代語に再話した《イタリア民話集》(1956),評論集《頭上の石》(1980)などがある。
執筆者:川名 公平
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[イタリア]
イタリアはE.デ・アミーチスの《クオーレ》(1886)とコロディC.Collodiの《ピノキオ》(1880)によって新風をおくったが,ヌッチョE.Nuccioのするどい童話と,ロダーリG.Rodariの《チポリノの冒険》(1951)もめだっている。イタリアの民話を集大成して児童文学に接近したI.カルビーノの《マルコバルドさんの四季》(1963)も見逃せない。ゴッタS.Gottaの冒険小説は戦時中からつづき,マンツィA.Manziの動物物語は新しい収穫といわれる。…
…イタリアの文学雑誌。E.ビットリーニがI.カルビーノと連携して,1959年に,トリノのエイナウディ社から創刊した。ビットリーニは総合文化雑誌《ポリテークニコ》(1945‐47)と文学叢書《ジェットーニ》(1951‐58)の編集を通じて,ファシズムとレジスタンスを経た戦後のイタリア社会における文学や文化の責務を問いつづけてきたが,60年代を目前にして,高度産業化社会および国際化社会における新しい文学の責務を追究すべきことを痛感し,その拠点として,《メナボ》誌の発刊に踏み切った。…
※「カルビーノ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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